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映画『16ブロック』の解説(ネタバレ有)ブルース・ウィリスが演じきった負け犬刑事の復活劇

16ブロック
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『16ブロック』です。

16ブロック

2006年公開のアクション・スリラー映画。
監督リチャード・ドナー、脚本リチャード・ウェンク。101分。

主演はブルース・ウィリス。
アメリカの有名評論家ロジャー・イーバートは囚人役のモス・デフの演技を絶賛し、『中年のアルコール中毒者にとって丁度良い速度で行われた追跡映画』と批評しました。

ルイス・ペグリーの同名小説を原作とした本作。
主演のジャック・ニコルソンはゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞しました。

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映画『16ブロック』のヒーローズジャーニー

それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

合わせて読みたい
『ヒーローズジャーニー』とは。物語の王道法則から読み解く映画研究
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この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。

残念ながら『16ブロック』は、U-NEXTPrime VideoなどのVODサービスでの配信がされていません。

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日常世界

中年アルコール中毒の刑事・ジャック。

冒険への誘い/冒険の拒否

上司に大陪審の証人として囚人のエディを送るように命じられる。
2時間後までに16ブロック(およそ2キロ)先の裁判所まで護送する簡単な仕事だが、夜勤明けのため嫌がるジャック。しかし渋々引き受ける。

賢者との出会い

エディを引き取るジャック。よく喋る男・エディ。

戸口の通過

エディが殺し屋に命を狙われ、エディを連れて逃げるジャック。応援を呼び、元相棒のフランクが駆けつける。エディは刑事仲間の違法な捜査方法の目撃者であり、口封じのために殺そうとするフランク。ジャックは刑事仲間を撃ち、エディを連れて再び逃げる。

試練、仲間、敵

一人で逃げようとしたエディを捕まえ、二人で協力して裁判所に向かう。エディは出所後に誕生日ケーキ屋を開く計画がある。

最も危険な場所への接近

徐々に追い詰められていくジャックとエディ。

最大の試練

フランクに追い詰められるも、運が味方し助かるジャックたち。裁判の検事補に助けを求めるが、情報はフランクにも筒抜けであった。

逃げるためにバスジャックをするジャック。刑事たちにタイヤを撃たれ動けなくなり、周囲を警察に包囲される。フランクによって警官を撃った犯罪者に仕立て上げられるジャック。

報酬

バスの乗客を利用してエディを逃すジャック。

帰路

ジャックの元に戻ってきてしまうエディ。バスを強引に走らせてなんとか脱出する二人。

ジャックの妹・ダイアンの助けを借り、エディを逃すジャック。ジャックはかつてフランクの仲間であり、自らが証人になると話す。エディと別れるジャック。

復活

自らも有罪になるとのフランクの説得も聞かず、裁判所に向かうジャック。

フランクとの会話を録音しており、決定的な証拠を裁判所に提出する。

宝を持って帰還

2年間の懲役を終えたジャック。

ダイアンと友人らによって誕生日パーティーを開かれ、エディからのケーキと店の写真を受け取り笑顔のジャック。

映画『16ブロック』のテーマ

エディが全てを台無しにしてまで伝えたかった言葉、

人は変われる

これがテーマです。

映画とは元々主人公の変化を表す物語であり、非常にシンプルでわかりやすいテーマですね。

ジャックもエディもかつて罪になるようなことをしてしまいましたが、生まれ変わることが出来ました。

映画『16ブロック』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーともう一つ大切な要素、『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
パトカーのサイレン。警察に包囲されたバスの車内で遺言を残すジャック。警察も嘘だと言っている。

続いて陽気な音楽が流れ、警察が突入。暇なヤツとしてジャックが呼ばれ、待機するように指示される。

酒を飲み、新聞を読みながら待つジャック。

オープニングに危機的な状況を見せ、観客を一気に引き込ませています。警察も嘘を言うとはどういう意味なのか?どうしてこうなったのか好奇心を掻き立てます。

続いてジャックの日常のシーン。
軽快な音楽でギャップを作って始めます。

ジャックの仕事中のシーンで職業は警察だと説明。周りからはやる気のない人と思われている、殺人現場でも何も気にしないので場数を踏んでいる、などのことが分かります。

署内を歩くジャック。若者に追い抜かれていくさまがまさに今の彼の状況を表していますね。

裁判所に送るように命じられるシーンでも自分より若い上司、階段を使って上から頼まれる、など細かいところでジャックのダメっぷりを表現しています。

上司が嫌がるジャックを説得する形で、今回の仕事内容、つまり映画の外的な目的を観客に説明します。制限時間を設けているところも緊張感を増す効果があって素晴らしいです。

続いて敵が銃を用意するシーン。敵の会話がなくてもシーンの並びだけでエディの護送を軸にジャックと敵の対決が始まると予想できますね。

エディを引き取り、送るジャック。

寡黙なジャックとは対照的におしゃべりなエディ。王道の対比を使ったバディを描きます。

予想通り命を狙われるエディ。あっさりと撃退するジャック。ジャックの有能ぶりがここで分かります。

手下が失敗したので敵の増援や黒幕が出てくると予想できますが、それが同僚の刑事たち。

今度はエディの護送を軸に刑事仲間とジャックの対決へと変化します。

シンプルながら警察が敵、という面白い設定になりました。

なぜ警察が敵になってしまうのかもジャックとフランクとの会話で全て観客に説明されているので、この後のアクションシーンに集中することができるようになっています。

仲間を撃ち、エディを連れて逃げるジャック。
これが第一ターニングポイントです。

第二幕

エディを裁判所に連れていく外的な物語だけではなく、ジャックの内面の物語・過去の自分の罪を告白し再出発することもしっかりと描かれており、その布石は様々なシーンに散りばめられています。

フランクと分署長の会話で少人数の刑事だけでなく警察全体が敵だと分かり、状況はかなり悪いことが分かります。

銃の調達、迫る刑事、エディの逃走、バスの立て篭もりなど様々な障害を機転をきかせながら乗り越えていくジャック。

地下鉄、チャイナタウン、屋上、集合住宅と色々な場所を移動するのも飽きさせない工夫ですね。屋上で突然撃たれる瞬間はかなりびっくりしました。

ジャックは観客よりも一歩先の展開が見えている有能なキャラクターになり、当初のダメな描き方とギャップを作って魅力的に描いています。

バスの立て篭もりとなり、状況はさらに悪化。

乗客を利用してエディを逃すジャック。さらに冒頭のシーンへと繋がり、疑似的なラストシーンに見せます。

しかし戻ってきてしまうエディ。

バスを走らせ再び脱走を試みるジャック。これが第二ターニングポイントです。

最初から走らせればいいと思うかもしれませんが、乗客を傷つけないようにしていたジャックなので、乗客がいなくなったからこそできる手段だと説得力があります。

第三幕

妹のダイアンに助けてもらうジャック。エディも観客も妻だと思っていましたが、実は妹というひねりを加えています。

それだけでも面白いですが、肝心の本人は出てきませんでした。

フランクとの最初のシーンでキャロラインと名前を出しているので、最後の最後で妻が登場し、人質にして迫るフランク、などのアイディアもあったら面白かったかもしれません。

まあしかし2時間の制限時間の中で見つけて人質にするというは、流石に無理があるのかなと思います。

救急車に迫るフランクのシーンでも実はジャックは違う救急車に乗っているという工夫がありますが、これは集合住宅で部屋に突入するシーンでも同じ手法を使っているので繰り返し使われているのが少し残念でした。

検事補に伝えるところをジャックはわざと別の部屋番号を伝えているということにすればジャックの計画としてそのシーンは十分面白かったのかなと思います。

自分自身もフランクの仲間だと告白するジャック。

無能かと思えば実は有能、しかし本当は悪人だったとさらにひねりを加えています。

エディの護送という外的な物語とジャックの内的な物語が交わり、クライマックスへと向かいます。自らの手も汚さないフランク。狡い男です。

ラストシーン。
オープニングとは対照的にジャックの周りには人が集まってきています。

ジャックの嬉しそうな顔で写真を何度もねだる姿、素敵ですね。

さいごに

16ブロックの狭い世界の中と限られた時間という制約が物語の面白さを凝縮した渋い良作な物語。

批評通り丁度良い緊迫感を持ち、最後はじんわりと感動する。素晴らしい映画でした!

次回はシリーズ第1作目の『マトリックス』を研究します!

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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