サスペンス

ドラマ『彼を信じていた一三日間』の解説(ネタバレ有)絶望した世界のなかで見出された希望とは。

akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘りドラマは『彼を信じていた十三日間』です。

2022年公開の短編ドラマ。監督・脚本黒沢清。41分。

ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されていたコラムを基にしたアマゾンオリジナルのドラマ『モダンラブ』。

このドラマを東京にうつしたものが『モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形〜』であり、本作はそのエピソード5です。映画界で活躍する監督と豪華な俳優陣で作られたオムニバス形式のドラマで、他の作品では廣木隆一や山下敦弘なども参加しています。

41分とおよそ映画の半分以下の時間ですが、それでもヒーローズ・ジャーニーが機能しているのか、三幕構成があるのか見てみましょう。

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ドラマ『彼を信じていた十三日間』が観られる配信サービス

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。

配信状況

サービス配信状況配信種別
U-NEXT×
Prime Video定額 ※1
NETFLIX×
Hulu×
Disney+×
TSUTAYA DISCAS 2×

※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。

この記事の情報は、2024年10月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

Prime Videoは、Amazonプライムの会員特典の1つです。

Amazonプライムは月額600円で配送料無料になったり、映画の他に音楽や本の読み放題、写真のストレージなどいろんな特典がついてきます。

そんな特典の中のうちの1つがPrime Videoなので、コスパがとにかく良い動画配信(VOD)サービスです。

Prime Videoはトライアル期間が30日間あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。

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他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。

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ドラマ『彼を信じていた十三日間』のヒーローズジャーニー

それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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日常世界

テレビ局に勤めている篠原。多忙な生活、独身の人生に精神はすり減らしている。

冒険への誘い/冒険の拒否/賢者との出会い

結婚相談所を通じて鈴木と出会う。もらっていた資料と鈴木の顔が違うことを指摘すると、鈴木は縁がなかったと帰ろうとするが、篠原が止める。別れ際、連絡先を教えてもらう篠原。

戸口の通過

鈴木に家の棚の修理をしてもらう篠原。鈴木は不動産関係の仕事をし、DIYが趣味だと話す。

試練、仲間、敵

部下に苛立ちを隠せず、精神的に追い詰められていく篠原。鈴木がキャンプに連れて行ってくれる。山の中で迷ってしまう二人。

最も危険な場所への接近

自らも仕事でミスをしてしまう篠原。と、街中で偶然本物の鈴木を見つける。鈴木は資料を落としたと話す。

最大の試練/報酬

鈴木と会う篠原。鈴木は自分が偽物とバレたことに気づき、本当はホームレスだと話すが、篠原は気にしないと話す。今日は二人が出会ってから13日目だ。

帰路

鈴木と連絡がつかなくなる。鈴木を探す篠原。

復活

前にキャンプで来た場所にいた鈴木を見つける篠原。鈴木は死が希望じゃないかと思えるようになったと話す。篠原も現実はしんどい時もあるが、今にも希望はあると訴える。

翌朝。鈴木が篠原の目の前で川に入っていき、消える。

宝を持っての帰還

いつもの毎日が再び始まるが、心地よい風が吹いている。

ドラマ『彼を信じていた十三日間』のテーマ

後半のキャンプ場のシーンで、篠原が話すセリフにある通り、

絶望的な世界でも、希望は今にもある

これがテーマです。

鈴木は実在する男なのか、幽霊なのか、途中から幽霊になったのかははっきりとは分かりませんが、死だけが希望と思えるような状況となってしまいました。

篠原も多忙な生活、友達もいない、恋人もいない。そんな死んでいる人生でも、希望を持ち続けて前に進もうとしています。

希望を持っているのか、何に希望を見出すのか。それで人生が変わって見える。ということを伝えたかったのです。

ドラマ『彼を信じていた十三日間』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
カフェで待っている篠原。タイトル。鈴木がやってくる。篠原の持っている資料の写真とは違うと指摘する。いいスタートではなかったので、帰ろうとする鈴木。引き止める篠原。

映画とは違い、短いドラマなのでいきなり本編から始まります。まず篠原を出すことで主人公と認識させ、その後の鈴木は資料の違いを指摘する形でプロフィールを観客に説明します。すぐに文句を言いに席をたつ、コーヒーを一気飲みするなど細かいですが普通ではない鈴木の独特なキャラクターを出していますね。

カフェで話すシーンはよくあるシーンですが、コーヒーを注文しといて何もしない、ただ会話して話を進めるだけ、など雰囲気だけで意味のないのシーンになってしまうドラマもたくさんあるので、カフェのシーンは実力が測れる意外と難しいシチュエーションだと思います。

その後バーで語り合う篠原と鈴木。少し関係が深まったような会話をしていますね。『死』というドラマのテーマに関わる会話もしています。

その後、突然別れようとする鈴木から連絡先を教えてもらう篠原。この階段を降って去っていく鈴木のロケーション。なんでもないようで何かあるような絶妙な高低差です。

篠原のプライベートなシーンが終わったら、続いて仕事のシーン。仕事中を見せることで篠原の職業、腕前、部下・現場に対する不満などを観客に説明しています。

家に帰ってきた篠原。前のシーンで『捨てといて』と言っていた花を持ち帰っていますね。シーンとシーンを繋げる要素で有ながら、今の生活を変えたいという願望を表しているかのように思えます。そして花をきっかけに棚が壊れ、鈴木を家に呼ぶことへと繋がっていきます。

『鈴木が篠原の家にやってくる』これが第一ターニングポイントです。

第二幕

壁を塗っている篠原と鈴木。音楽も相待って一気に話が変わっていく感覚があります。非常に重要な二人の名前の呼び方も変わっていますね。ここからの不満の溜まる仕事のシーンへの落差。面白いですね。誰も篠原には声をかけません。

絶望的なため息をつきながら料理を作っていると、鈴木が現れてキャンプに誘ってくれる。ここでも音楽が相待って篠原にプラスになるようなシーンが始まります。

鈴木に黄色いカップをあげる篠原。二人の関係を表す伏線になっています。

山の中で迷子になってしまう篠原と鈴木。解決するわけでもなく、いきなり仕事のシーンに変わる。この感覚が黒沢清のすごいところですよね。答えが出るわけでもなく彷徨う二人。中年の人生を表しているかのように思えます。

そして仕事のシーンではミスをする篠原。インタビューを反復することで分かりやすく篠原の変化を表しています。もちろん誰も篠原を気遣うこと、助けるようなことはしません。

本物の鈴木と出会うことで、ユースケ・サンタマリア演じる鈴木が偽物と知る篠原。続くシーンで鈴木がいなくなったのではないかと走る篠原。偽物と知っても、篠原にとって鈴木のことがどれだけ大事なのかを行動で表していますね。そして唐突に告白する鈴木。テンポも早くて素晴らしいです。が、鈴木と連絡が取れなくなる。

『鈴木を探す篠原』これが第二ターニングポイントです。

第三幕

以前きたキャンプ場で鈴木を見つける篠原。鈴木はちゃんともらった黄色いカップを使っていますね。二人の関係がまだ続いていることを表しています。

『死』だけが希望に思えてきたと話す鈴木。篠原も今まで仕事だけの人生で死んでいるような状態ですが、『今』に希望を持っていると話します。焚き火を囲んで本音を告白するシーンですね。しかし、鈴木の心はすでに決心しているようでした。

嵐。クライマックスを感じさせる天候です。綺麗な月と寝ている鈴木を見せて安心させるのも束の間、翌朝になるとやはり鈴木はいない。

川に消えていく鈴木。黄色いカップが篠原の元に帰ってきます。二人の関係が終わったことを決定づけていますね。

ラストシーン。再び一人になった篠原。一見するとドラマが始まった時と同じようですが、壁紙が代わり、棚も直って花が再び飾られている。心の中では鈴木と出会ったことで何かが変わっていますね。まだ鈴木がいるんじゃないかと思わせるような風が吹き、終わります。

さいごに

40分ほどの時間ながら、密度の濃く監督の個性が存分に表れた素晴らしい映画でした。中編を撮らせると一番面白いのは黒沢清監督なんじゃないかと思ってしまいました。

そして2時間映画だろうと40分のドラマだろうとヒーローズ・ジャーニーはやはり機能していましたね!

次回はU-NEXT、Amazonプライムビデオで配信中の『アリゲーター』を研究します!

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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