サスペンス

映画『鳥』の解説(ネタバレ有)鳥と人間の関係性が逆転した恐怖の世界

鳥
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『』です。

鳥

1963年公開の生物パニックサスペンス映画。
監督アルフレッド・ヒッチコック、脚本エヴァン・ハンター。119分。

原作はダフニ・デュ・モーリエによる同タイトルの短編小説。

ヒッチコックはすぐに映画化を決めたといい、特にワシやタカなどの猛禽類ではなくどこにでもいる鳥が襲ってくるところを気に入ったと『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』で語っています。

アカデミー視覚効果賞にノミネート、ティッピ・ヘドレンはゴールデングローブ賞の最優秀新人賞を受賞。
さらにアメリカン・フィルム・インスティチュートがが選ぶ『スリルを感じる映画ベスト100』の第7位にランクインしました。

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映画『鳥』が観られる配信サービス

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。

配信状況

サービス配信状況配信種別
U-NEXT定額 ※1
Prime Video定額 ※1
NETFLIX×
Hulu×
Disney+×
TSUTAYA DISCAS ※3定額 ※1

※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。

この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT

U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。

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映画『鳥』のヒーローズジャーニー

それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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日常世界

サンフランシスコ。鳥専門のペットショップを経営しているメラニーに、弁護士のミッチが妹・キャシーの誕生日プレゼントにとラブバードを買いにやってくる。
新聞会社の父を持つ金持ちのメラニーは世間を騒がせがちな女性で、ミッチも嫌味なことを言う。

冒険への誘い/冒険の拒否

ラブバードを急いで入荷し、ミッチの家に届けるメラニー。しかしミッチは週末ボデガ湾に行っていると教えてもらう。

戸口の通過/賢者との出会い

ボデガ湾に向かい、ミッチの実家にラブバードを置いておくメラニー。ミッチがラブバードに気づき、メラニーを見つける。一羽の鴎に襲われるメラニー。

試練、仲間、敵

食堂で手当てしてもらうメラニー。
ミッチの母とも出会い、ミッチの計らいで夕食をともにすることになる。町で知り合ったアニーの家に泊まることにするメラニー。今度はアニーの家の玄関に鳥がぶつかってくる。翌日のキャシーの誕生日パーティーにも参加すると約束するメラニー。

最も危険な場所への接近

キャシーの誕生日パーティー中、鳥の大群が子どもたちに襲い掛かる。
家に戻ったメラニーたちだが、煙突を通じて雀の大群も襲ってくる。異常な事態だと考え保安官に説明するミッチたちだが、保安官は偶然だと信じようとしない。

最大の試練

ミッチの母が、鳥に襲われ殺された知り合いの農家の死体を見つける。

報酬

ショックを受けて弱ってしまったミッチの母を労わるメラニー。
キャシーを心配する母のために学校へ向かうメラニー。避難する子どもたちを襲うカラスの大群。

帰路

父に電話するメラニーだが、父も信じてくれない。
鴎の大群が街を襲い、パニックとなる。
はぐれたキャシーを探すメラニーとミッチ。アニーの家で見つけるが、キャシーを庇ったアニーが殺されてしまっていた。

窓を補強し、助けが来るまで家に籠城しようとするミッチたち。

復活

鳥たちが襲ってくるが、なんとか耐えるミッチたち。しかしメラニーは鳥に襲われ、精神が崩壊してしまう。

宝を持っての帰還

車に乗り込み、脱出するミッチたち。周囲を埋め尽くす鳥の大群が静かに見つめている。

映画『鳥』のテーマ

ミッチがメラニーと初めて会うきっかけとなる小道具がラブバード。モチーフとなる『鳥』とともに、『愛』というテーマを融合させたこの映画のアイコンとなっています。

大量の鳥に襲われる恐怖に立ち向かうミッチはメラニーを救うという愛のために動きます。

愛はどんな困難にも立ち向かう

非常にシンプルなテーマですね。

映画『鳥』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
羽ばたく無数の鳥の影。

この映画は前半にメラニーとミッチの恋愛パートを重点的におくため、鳥が襲うホラーのシーンはとても少ないです。そのため、オープニングに鳥の怖さを印象付けるシーンを持ってきています。さらに要所要所のシーンの終わりでも鳥が登場します。

予告や宣伝では鳥が襲ってくると銘打っているために、鳥の怖さを求めて観客は集まってきます。でもヒッチコックはメラニーとミッチのドラマを丁寧に描きたい。そのために恋愛を描きつつ少し怖いシーンを加えてもう少しで怖いシーンがくるからね、と観客を宥めているんですね。

自分の店を訪れるメラニー。店から出てくる犬を連れた男はヒッチコックです。

メラニーの店では当然ながら鳥はかごや檻の中に囚われています。これは現時点での人間と鳥の関係を表しており、後半に描かれる関係が逆転していることへの伏線になっています。

自分の店なのに鳥について詳しくない経営者で、世間を騒がせている新聞会社の社長の娘・メラニーというキャラクターをミッチとのやりとりを通じて説明しています。

ラブバードはメラニーとミッチの関係を作るきっかけであり、同時に愛と鳥と言うこの映画のテーマとモチーフを表すとても優秀な小道具ですね。

ボデガ湾に到着したメラニー。郵便局の男とのやりとりで、街とミッチの実家の位置関係、学校とその近所にアニーの家があると観客に説明します。アニーも登場し街について必要な説明を終え、再びミッチとのストーリーを進ませます。

ボートを扱えるメラニー、この要素はどこかで使ってもよかったかもしれませんね。キャシーへの手紙を置き、わざわざそこで手紙を破る。実に映画的な説明の仕方です。

食堂でメラニーの手当をするミッチ。嘘をつくメラニー。普通のやりとりではなく、セリフに嘘を混ぜると俄然面白くなりますね。ミッチの母が登場。この映画は『サイコ』の次に公開されたものなので、ミッチに対する愛が強いため母にも恐怖心が生まれますね。

夕食に誘われたため、ボドガ湾に泊まることにするメラニー。
これが第一ターニングポイントです。

第二幕

鶏が餌を食べず、業者に電話する母。手前・中央・奥にキャラクターを配置し、部屋の奥行きを生かしたシーンですね。ただの電話の会話だけでは面白くなくなってしまうので、画面に工夫を加えています。

キャシーがメラニーにミッチが担当したひどい動機の事件を話しますが、これは動機など些細なこと、むしろないかもしれない、と言うことを伝えたかったのではないかと思います。

この映画では鳥が襲ってくる理由は説明されませんが、人間も理由なく人を殺すのであり、鳥たちが襲ってくる理由がなくても不思議ではないという根拠を説明したかったのかもしれません。鳥が襲う理由が描かれないのは、そっちの方が怖い、面白いと思ったからだとヒッチコックは語っています。鳥の病気で襲ってきた設定にしたら、冷めますよね。

映画が始まって50分をすぎたところで、ついに鳥の大群が襲い始めます。最初にタンジョビパーティー、続けて雀の大群が家の中に。外でも建物の中でも鳥からは逃げる場所がないような印象を与えますね。そして画面を埋め尽くす鳥の映像と桁たましい鳥の鳴き声。さすがです。

ミッチが保安官に説明しているシーン。カメラはミッチの母の行動を追いますが、これはメラニーの視点であり、メラニーが母の様子を心配しているという印象を与え、同時に割れたカップの伏線にもなっています。

ミッチの母が友人の農家を訪れるシーン。声がしないのにずかずかと家の中に入るのは不自然ですが、割れたカップを見つけることで何かが起きたと予感させ、奥に進むことを自然に誘導しています。そして目の潰れた死体を見つける。割れた窓、足、全体、顔のアップ。最大から最小へ。ヒッチコック特有のオープニングの逆のやり方であり、強烈です。

この直後のシーンでミッチとメラニーが急にキスをしますが、母が知り合いの農家に行っている間に二人が惹かれあうシーンがあったそうですが、映画のリズムが崩れると思いカットしたそうです。

学校でメラニーがタバコを吸っていると、後ろに鳥が集まっているシーン。気づいたら後ろに大量の鳥が止まっている。もっとカットを多くするのが普通ですが、あえて少なくしていつの間にか静かに鳥たちが近づいている、という恐怖を与えています。

食堂で鳥の襲来を議論しているシーン。トリュフォーはこのシーンが長すぎるのではないかと指摘しますが、ヒッチコックはこれまで何度も鳥が襲うシーンがあったためにすこし観客を休ませるシーンにしたかった、代わりにユーモアをたっぷり入れたと語っています。

鳥に詳しい老婦人は保守的であり、現実世界で問題に対処しない政府を代弁しているようです。その直後に街を襲う鴎たち。ボドガ湾を俯瞰で映しているカットは、大量の鴎たちが街に近づいている、ボドガ湾の地形を見せる、集まった人々の消化活動を見せると言う三つの理由があります。メラニーが電話ボックスの中にとじ込まれるアイディアはまさに鳥籠の中に閉じ込められた鳥のようです。

キャシーを探しにアニーの家を訪れるシーン。アニーは当初最後まで生きてミッチの家でみんなと籠城する予定でしたが、ここで殺されるように変更されました。

アニーはミッチに失恋しており、その時点でアニーはすでに死んだキャラクターとなってしまった。キャシーを助けるために自己犠牲をしたアニーはむしろ本望なのではないかとヒッチコックは語っています。

ミッチの実家に籠城するメラニーたち。
これが第二ターニングポイントです。

第三幕

籠城した家を鳥が襲うシーン。外にいる鳥たちを映さないアイディアは即興で考えたそうです。逃げようにもどこにも逃げる場所はないとうまく表現されています。夜になり一度観客を落ち着かせ、最後に主人公メラニーにも鳥を襲わせる。最後まで楽しませます。

ラストシーン。車にのり、去っていくミッチたち。果たして逃げる場所はあるのか。まるでこの世の終わりのような幻想的で恐ろしいラストカットです。

さいごに

ヒッチコック作品で最大のヒットとなった本作。

愛のテーマとどこにでもいる鳥が襲ってくる生物パニックのモチーフ、アイディアと構成がハイレベルに融合した見事な物語でした。

次回は、天才ウェス・アンダーソンのデビュー作『アンソニーのハッピーモーテル』を研究します!

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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