映画『エイリアン』の解説(ネタバレ有)シンプル構造の傑作SFモンスター映画
こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『エイリアン』。
1979年公開のSFホラー映画。
監督リドリー・スコット、脚本ダン・オバノン。117分。
後に多くのシリーズや派生映画を生み出し、多くの賞を受賞。
イギリス情報誌『タイム・アウト』の企画『SF映画ベスト100』でも第3位にランクインするなどした、SF映画の金字塔的な作品。
リドリー・スコットはこの作品が出世作となりました。脚本のダンは、『ダーク・スター』『ブルーサンダー』『スペースバンパイア』『バタリアン』と素晴らしい映画ばかり書いていますね。
エイリアンの造形はシュルレアリスムの巨匠H・R・ギーガーが担当。
完璧主義者で、自分の作品に強烈な自負を持っていたギーガーは度重なる上層部との衝突で一度契約から1週間で解雇となるものの、彼がいなくなると現場が迷走したために上層部は再び契約し直したそうです。
映画『エイリアン』が観られる配信サービス
この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。
配信状況
サービス | 配信状況 | 種別 |
---|---|---|
U-NEXT | × | ー |
Prime Video | ◯ | レンタル ※2 |
NETFLIX | × | ー |
Hulu | × | ー |
Disney+ | ◯ | 定額 ※1 |
TSUTAYA DISCAS ※3 | ◯ | 定額 ※1 |
※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
※4 Prime VideoのスターチャンネルEXは、別途月額利用料が発生します。
この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
観たい映画が自分の登録しているサービスにはなくて観られない!!
なんてことが多い人は、TSUTAYA DISCASやゲオ宅配レンタルのような宅配レンタルサービスがオススメです。
確かにディスクが届いてからでないと観られないので、思いついた時にスグ観られる動画配信(VOD)サービスのような便利さはありませんが、DVDやBlu-rayとしてディスクになった作品はほとんど観ることができます。
どちらも1ヶ月のトライアルもあるので、気になる人は使い心地を試してみてください。
オススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。
映画『エイリアン』のヒーローズジャーニー
それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。
ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!
日常世界
宇宙貨物船ノストロモ号は地球に向かって帰っていた。冷凍睡眠していたリプリーら船員7名が目覚める。
冒険への誘い/冒険の拒否
地球へはまだ遠いところで目覚めたようで、謎の信号をキャッチしたために進路変更されていた。船員たちは不満に思うが、会社との契約上、信号を調査しなければならない。
賢者との出会い
信号を出している星に到着し、壊れた宇宙船を発見。
船長のダラスは船内を調査する。高度な技術を持った宇宙船だが、襲われた形跡が残っている。
戸口の通過
卵の中に生物を見つけるケイン。
孵化し、ケインに小型のエイリアンが襲いかかる。
試練、仲間、敵
ケインを連れて小型船に戻ってくるダラスたち。
ケインは生きているが、顔にへばりついたエイリアンを傷つけると強い酸を持つ血が噴き出るため、何もできない。
最も危険な場所への接近
しかし自然とエイリアンは顔から離れ死に、ケインが目覚める。
最大の試練
ケインの腹から新たなエイリアンが生まれる。
すぐに逃げて姿を見失ってしまう。
報酬
脱皮して成長し、巨大化したエイリアン。
武装するものの、船員たちは次々と殺されていく。
船員のアッシュはロボットであり、船員の命よりもエイリアンを持って帰るようにと会社から指示されていた。
暴走するアッシュを破壊するリプリーたち。
帰路
ついに一人になってしまったリプリー。
シャトルに乗って脱出し、船を爆破する。
復活
シャトルに忍び込んでいたエイリアンに気づくリプリー。
宇宙服に着替え、ドアを開けてエイリアンを宇宙空間に放り出す。
宝を持っての帰還
唯一の生存者リプリー、地球に向かって飛んでいく。
映画『エイリアン』のテーマ
エイリアンの造形は、男性器をモチーフにし、白い液体を垂れ流しています。これは明らかに男を意識して作られています。
そして主人公は女性のリプリー。
『 男性社会に打ち勝つ強い女性 』。
これがテーマです。
物語の中でも性別は重要な要素を持っており、エイリアンがケインの体内から出てくるところは出産(まさに死の痛み)。
狂ったアッシュにトドメを刺すのはランパート。
最後の小型艇では下着姿のリプリーに襲いかかります。
前半でも、リプリーの指示に従わないアッシュ、立場を利用しリプリーの話を聞かないダラス、謎の宇宙船の危険を予知するも話を聞いてくれないランパートなど、女性は常に弱い立場でした。
それでも最後はリプリーが自分の閃きと行動で勝つ。
『強い女性が自分の力で勝つ』パターンはこれまでのSF映画になかった新しいキャラクター像で、今後の映画にも多くの影響を与えました。
映画『エイリアン』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。
タイトル。宇宙空間を進むノストロモ号。
誰もいない船内、コンピューターが自動で動く。船員たちが目覚める。
不穏な音楽とゆっくりとしたタイトル。いきなり驚かせてつかむわけではなく、緊張感のある中でじっとりとしたトーンで映画の世界に導いていきます。
ノストロモ号の形や船内はSE好きを喜ばせるような構造です。スタイリッシュで明るく綺麗ではなく、無骨でリアルで薄暗い、比較的近未来なイメージですね。
食事をする船員たち。食事は生きる象徴でもあり、中盤にあるエイリアン登場の伏線にもなっています。死人の顔だ、のセリフの後にケインの顔のアップが入るのは興味深いです。
目覚めてすぐにボーナスの話を持ち出すところも、これが人間なんだと感じさせます。
謎の信号を受信し、話し合う船員たち。自分の席にこだわるパーカーの行動はキャラクター像を印象付けるとてもいいアイディアですね。
船員たちは自分たちの意思ではなく『巻き込まれる』形で物語が進んでいきます。
第一幕のストーリーは未知の星で探索をする。観客の好奇心とミステリーの力を利用した目が離せない展開でとても上手いです。ダラスたちから送られてくる荒い通信映像もまた臨場感を与えます。
船内でエイリアンを見つけ、ケインが襲われる。
これが第一ターニングポイントです。
第二幕
リプリーの決定を聞かずに船内に入れるアッシュ。女性の意見を聞かない男というテーマもありますが、アッシュはさらに知的生命体の情報を得るために船内に入れたと言う設定も有そうですね。
エイリアンについて調べるアッシュたち。登場人物が知ることで、自然と観客にエイリアンの能力を説明しています。酸の跡を追うなど行動とリンクしているので説明していると全く感じませんね。
アッシュとリプリーとの会話のシーン。ここでも性差別のテーマを表現しつつ、エイリアンの設定の補足を観客に説明しています。
エイリアンが死に、目覚めるケイン。そして食事のシーンへ。リプリーたちも観客も何が起きたのかわからないけどケインが生きていてよかったとほっとした瞬間に、エイリアンが出産。食事から出産までをワンシーンの中で作っているところがとても凄いです。シーンの中でも明るい雰囲気から地獄へとなり、かつ映画もここからエイリアンとの対決へ、と全てをひっくり返すシーンとなっています。置いてある時間も映画のちょうど真ん中。恐ろしい設計です。
閉鎖された空間でどこにいるかわからない巨大なエイリアンと戦う。最高のシチュエーションです。
ケインの遺体を宇宙空間に射出する。これはクライマックスの伏線になっています。
暗く、ジメジメしたり水滴が落ちるなど陰湿な船内はより緊張感と雰囲気を高める演出ですね。カメラも役者に近く同じ高さか低いところからの視点、また船内の外から撮るようないわゆる神視点のアングルはなく、観客も同じ閉鎖された空間にいるような感覚を与えます。
エイリアンの攻撃や映るシーンも一瞬で、何が起きているのかわからない。だからこそ怖さが引き立ちますね。これは当時の技術ではエイリアンの動きをうまく表現できないからそうしたのかもしれませんが、逆手に取った素晴らしいアイディアです。
ブレットが殺された後、パーカーとリプリーが説明するというシーンにすぐ飛ぶのも面白いですね。ブレットを追いかけてきた二人のシーンを見せがちですが、省略しても次のシーンで皆に説明すれば同じことです。動きを見せるより言葉で説明する方がより混乱している様子が伝わってくると考えたんですね。ダラスが殺された後も同じように省略しています。
船員が殺されていく展開はエイリアンだけでなく身内のアッシュがロボットだったというパターンも挟んでいて、変化をつけていますね。首だけのアッシュが喋るシーンも、見ればわかりますがとても頑張っています!
脱出を決意するリプリーたち。
これが第二ターニングポイントです。
第三幕
猫を絶対に助けるのはハリウッドの習性でしょうか…こんな状況でもジョーンズを探すリプリー。動物を大切に扱う・粗末に扱う行動はキャラクター作りとして使われますが、このタイミングではちょっと間抜けにも見えてしまいます。
船を爆破して脱出したリプリー。しかしシャトルにはエイリアンが忍び込んでおり、最後の戦いをする。一度安心させた後にもう一度対決する展開はこの映画が初めてで、新たな典型を作りました。挟まってたエイリアンはちょっと面白いですね。
さいごに
宇宙の探索、謎の生物、閉鎖空間の戦いなど、SFでありながらミステリーやサスペンスフルな構造も含まれていてとても面白かったですね。
そしてやはり傑作は、その後の映画の歴史に影響を与えるような新しいアイディアを持っています。
次回は『ギャラクシー・クエスト』を研究します!
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