映画『ギャラクシー・クエスト』の解説(ネタバレ有)ドラマがまさかの現実に! ありえないことを起こせるのが映画です。

こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『ギャラクシー・クエスト』。

1999年公開のSFアクションコメディ映画。
監督ディーン・パリソット、脚本デヴィッド・ハワード、ロバート・ゴードン。102分。
『スタートレック』へのオマージュをこめたパロディ映画ではありますが、その脚本の完成度はとても高く、スタートレックを知らなくても満足できるクオリティになっています。
2000年度のヒューゴー賞を獲得しました。
映画『ギャラクシー・クエスト』のヒーローズジャーニー
それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
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日常世界
20年前に放送された大ヒットSFドラマ『ギャラクシー・クエスト』。
今でもその人気は絶大で、イベントも超人気だ。
一方役者たちはこの作品以外はあまり活躍できず、サイン会などで生活費を稼いでいた。
主演を演じたネズミスが一番人気だが、本人はその人気に調子に乗っており、他の役者たちからも嫌われている。
冒険への誘い
宇宙人サーミアンと名乗る人物たちがネズミスに助けを求めるが、イベント関係者だと思い適当にあしらうネズミス。
賢者との出会い
過去の栄光にすがっているとトイレで陰口を言われ、傷つくネズミス。本人も自覚している。
つい熱狂的なファン・ブランドンに激昂してしまう。
冒険の拒否
翌日、勘違いしたままサーミアンに本物の宇宙船に連れて行かれるネズミス。
イベントの演出と思い、サリスと名乗る凶悪なサーミアンの敵に攻撃を命じる。
地球にワープされ、本物だったと気づくネズミス。
戸口の通過
サリスと交渉して欲しいと再びネズミスの前に現れるサーミアン。同僚も仕事と勘違いして宇宙船に乗り込む。
サーミアンは『ギャラクシー・クエスト』をドキュメンタリーと信じ、『ギャラクシー・クエスト』を元に文明を進化してきた。
彼らが作り上げたドラマの設定と瓜二つの本物の宇宙船に乗り込み、発進するネズミスたち。
試練、仲間、敵
サリスとの交渉は決裂し、攻撃される。
宇宙機雷原を抜けて逃げ切るネズミスたちだが、動力源を破損してしまった。
サーミアンは最近嘘の概念に気づいた宇宙人で、ネズミスたちはドラマの嘘をいうことができない。
最も危険な場所への接近
新しい動力源を手に入れるために惑星に着陸するネズミスたち。
最大の試練/報酬
ロックという巨大な生物に襲われながらも、なんとか動力源を手に入れるネズミスたち。
帰路
しかし宇宙船はサリスに乗っ取られてしまい、サリスは『ギャラクシー・クエスト』の嘘に気づく。
サリスはネズミスにサーミアンに嘘だと説明させ、愕然とするサーミアン。
サリスは宇宙船の爆破を指示する。
復活
拘束から抜け出したネズミスたち。
ブランドンに協力してもらい、船の爆破を止める。さらに機雷原を利用し、サリスの船を爆破する。
宝を持って帰還
サーミアンと別れ、地球に戻ってきたネズミスたち。生き残っていたサリスをネズミスが倒す。
冒険を経て、仲間との信頼を取り戻したネズミス。
『ギャラクシー・クエスト』が映画化する。

映画『ギャラクシー・クエスト』のテーマ
突拍子もない設定ですが、王道のストーリー展開であり、テーマも非常にシンプルです。
『 仲間たちとの友情を取り戻す 』。
これがテーマです。
外的なストーリーは『サリスを倒し、サーミアンを救う』。
内的なストーリーはネズミス自身『過去の栄光にすがりついたまま。仲間たちとの関係も悪いまま終わるのか』という葛藤を解決することです。
命をかけた大冒険をへて、仲間たちとの信頼を取り戻す。虚構のドラマが伝えていた『チームワークと友情』が現実になったのです。
そして結果として『ギャラクシー・クエスト』映画化にまでなりました。
他にもサブストーリーとして、ちょっとしたグエンとのラブストーリーや、デーンと青年宇宙人のドラマがありますね。
特にデーンが死にゆく青年宇宙人のために反復セリフを使って復讐を誓うシーンは素晴らしいです。
ちなみに反復セリフの文は、バージョンによって言葉が違うので注意です。
映画『ギャラクシー・クエスト』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーともう一つ大切な要素、『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。
ドラマ『ギャラクシー・クエスト』の映像。それがスクリーンで流れていたファンイベントの会場。
ドラマの映像で観客をSFの世界に一気に引き込み、『ネバーギブアップ、ネバーサレンダー』『オメガ13』とキーワードを印象付けます。会場の熱気で人気の高さを見せ、その控え室の役者の反応で熱量の差と現実を見せています。
ドラマの世界の友情と現実世界の対比。表と裏が見えると面白いですよね。
控室では会話の中でさりげなくそれぞれのキャラクターの特徴と不満を説明。複数人の会話をしているから不自然に思わずに表現できます。遅れて主人公のネズミスが登場。
イベントに辟易しているデーンですが、仕事に対するプライドを見せ、今後の伏線にもなっています。トカゲヘッドの伏線台詞もここで説明。
一連の流れでキャラクターと世界観を説明できており、素晴らしいオープニングです。
サーミアン星人が登場し、ネズミスのトイレでのシーンで外的ストーリーと内的ストーリーを始めます。
ファンの前で初めて怒るネズミス。彼の精神も限界が近い、家でも酒を飲みすぎて寝落ちする。
つまり主人公は崖っぷち状態から映画を始めていますね。再放送で流れるドラマのシーンのセリフを今でも言える。『ギャラクシー・クエスト』は今でも彼の誇りです。
リムジンに乗り、気づかないうちに本物の宇宙に連れて行かれるネズミス。
観客はサーミアンやサリスが本物だと勘づいていますが、それを気づかないネズミスとのすれ違いが楽しいですね。ネズミスは観客よりも能力が低い状態に設定されており、同情することで彼を好きになります。
何も知らないネズミスの攻撃指示が通じたり、本物の交信機とおもちゃの交信機を間違えたりと、設定をうまく利用していますね。
グエンやデーンたちも宇宙に行き、プロテクター号が発進する。これが第一ターニングポイントです。壁にぶつかりながらの発進は、すんなり行かない旅路の予感とラレドの操縦技術の無さの伏線にもなっています。
第二幕
サリスの危険性に気づいたグエンたちは逃げようとするが、サリスに狙われているので逃げられない状況になっています。
グエンたちの『冒険の拒否』もしっかり描いているのがとても偉いですね。
サリスの目的も「オメガ13が欲しい」と明確に理由を表しているのも素晴らしいです。
サリスとの一度目の戦いは、チームワークや機雷原などクライマックスの伏線となっています。
ベリリウム球がなんなのかは全く説明がありませんが、それは専門的な情報であり知ったところで観客に意味はありません。
物語としてはそれがないと船が動かないことこそが重要な情報であり、物語を進ませることができます。
惑星での冒険も無駄にせず、ロックの伏線やチェンの見せ場などを作ります。
ネズミスたちが拘束から逃れ、戦いに向かう。これが第二ターニングポイントです。
第三幕
サーミアンたちに『ギャラクシー・クエスト』は嘘であり自分たちは役者だと告白したネズミス。
ここからは彼らは役者としてではなく、本人たちの意思と力だけで戦いに挑みます。
爆破を止めるためにブランドンに連絡をとる伏線回収は素晴らしいですね。
彼らの中にあるリアルとドラマの葛藤も描くことで、一工夫あって面白いです。
オメガ13、グエンとのラブストーリー、デーンと青年宇宙人のドラマ、ロックとデジタル転送、機雷原などの大量の伏線を回収しながらサリスの船を破壊し、擬似的なクライマックスを迎えます。
サーミアンと別れ、束の間のラスト。
忍び込んでいたサリスを倒し、本当のラストを迎えます。
ネズミスたちには信頼が生まれ、『ギャラクシー・ラスト』は映画になりました。
オープニングはドラマの映像・イベント会場で、ラストもイベント会場・映画の予告。
完璧なオープニングとラストの関係です。

さいごに
「ドラマの世界が本当の世界になったら?」という嘘みたいな設定をドラマの役者、現実にいる宇宙人、ファン視点と三重構造の世界をうまく使って最高のエンターテインメントに仕上げた素晴らしい作品ですね。
次回はU-NEXTで配信中、トニー・スコット監督の『サブウェイ123 激突』を研究します!

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