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映画『ヘアスプレー』の解説(ネタバレ有)願うだけでは叶わない。63分の歌とダンスで描く差別との闘い

ヘアスプレー
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『ヘアスプレー』です。

2007年公開のミュージカルコメディ映画。
監督アダム・シャンクマン、脚本レスリー・ディクソン。117分。

1988年の同名映画を元にしたミュージカル劇の映画化。117分の内、およそ半分の63分がダンス・歌のシーンになっています。

特殊メイクで女装し出演したジョン・トラボルタ。

元々デビュー前はブロードウェイでミュージカルに出演し、『サタデー・ナイト・フィーバー』でヒットしたので、ダンスや歌は流石ですね。

2020年6月に日本版のミュージカルが予定されており、トレーシー役に渡辺直美、メイベル役にCrystal Kay。納得の配役です。

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映画『ヘアスプレー』のヒーローズジャーニー

それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。

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※この記事の情報は、2023年1月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

日常世界

ボルチモアに住む歌と踊りが好きなビッグサイズの女の子・トレーシー。
大好きな番組は『コーニー・コリンズ・ショー』であり、ダンサーのリンクは憧れの存在だ。

冒険への誘い

番組の新メンバーオーディションを知るトレーシー。

冒険の拒否

しかし母・エドナに反対され、落ち込むトレーシー。

賢者との出会い

父・ウィルバーの助言で、オーディションに参加する。
しかし番組ディレクター・ベルマの差別的偏見で落選。

戸口の通過

学校で黒人ダンサー・ウィーシードと出会い、黒人グループと仲良くなる。
トレーシーのダンスを偶然見たリンクは、トレーシーを番組に誘う。
恋に落ちたトレーシー。
そして番組のレギュラーになる。

試練、仲間、敵

トレーシーブームが起きるボルチモア。
ビッグサイズにトラウマのあったエドナも、自信を取り戻す。

最も危険な場所への接近

シーウィードの家に向かうトレーシーとリンク。

最大の試練

シーウィードの母・メイベルは番組の『ブラックデー』のホストだったが、打ち切りになったと報告し、みなショックを受ける。
デモを提案するトレーシー。
メイベルらは賛同するが、リンクはリスクが大きすぎる、と去っていく。

またベルマはウィルバーを誘惑し、ウィルバーとエドナとの関係を悪化させる。

報酬

夢を叶えるためには家を出て戦わなければならないと悟るトレーシー。
デモに参加する。

帰路

警察に手を出してしまい、追いかけられるトレーシー。

復活

ミス・ヘアスプレーを決める生放送にトレーシーが登場。
ミス・ヘアスプレーはシーウィードの妹・アイネスに決まり、番組は黒人差別の廃止を宣言する。

宝を持って帰還

リンクとキスをするトレーシー。

映画『ヘアスプレー』のテーマ

もちろん『黒人差別撤廃』がテーマなのですが、それだけではありません。

中盤、トレーシーがウィルバーに「差別は消えるなんて信じてたあたしがおめでたかったんだわ。こうしたいと本気で思ったら親の元から巣立って闘うべきなのね」と話します。

夢を叶えるには信じるだけでなく
戦わなければならない
 』

と気づくのです。

映画『ヘアスプレー』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーともう一つ大切な要素、『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
朝のボルチモアの街。トレーシーが目覚め、学校へ。

それぞれの曲・映像で何が説明されているかを見て行きます。

一曲目『Good Morning Baltimore』
オープニングにふさわしい明るくテンションの高い曲。
トレーシーの歌とダンスの能力、学校への移動、朝刊での黒人差別のテーマの提示、ボルチモアの治安の悪さ、トレーシーの有名になりたいという願望。

ボルチモアは1988年版の『ヘアスプレー』の舞台であり、その監督ジョン・ウォーターズの出身地。

1950〜60年代はアフリカ系アメリカ人公民権運動、つまり黒人差別撤廃運動が盛んだったのですが、ボルチモアは遅れており、冒頭の新聞記事に書かれた差別は実際にあったことのようです。

黒人の人口は今でも多く、アメリカで最も古い都市の一つでもあり、また南北戦争の舞台なので、この映画のテーマを表す土地です。

続いて学校の授業のシーンで、トレーシーの髪形のこだわりが示されます。

そして2曲目『The Nicest Kids in Town』。
『コーニー・コリンズ・ショー』と出演者、ペニー・エドナらの登場。
『ブラックデー』の提示をしています。

字幕では『ブラックデー』ですが、英語では『ニグロデー』と言っているのも差別を強調させています。

オーディションに挑戦するトレーシー。
3曲目『Miss Baltimore Crabs』
悪役ベルマ・アンバーの差別的偏見の説明、ベルマの過去・ミス・ボルチモアのプライド、オーディションの落選をしています。

オーディションに落選しましたが、遅刻したせいで居残り教室に行くことになり、シーウィードらと出会うことになります。
そしてさらにリンクの目に留まり……とチャレンジした結果が繋がっていきます。

4曲目『I Can Hear The Bells』
トレーシーの恋心、しかしリンクにはアンバーが……ティーンの恋心をユーモアたっぷりに歌い上げています。

続いて5曲目『Ladie’s Choice』
トレーシーが黒人との壁を突き破る存在、リンクも盛り上がり、コーニーもトレーシーを認めた、ということがわかります。

このシーンの設定は番組ではなく学校もしくはコーニーの企画なのですが、よくわからないです。
アメリカではダンスパーティーはよくあるんですかね。

トレーシーが番組のレギュラーに。第一ターニングポイントです。
トレーシーは髪の色を着けて進化しました。

第二幕

コーニーは番組の黒人差別廃止を考えており、それがボルチモア以外のアメリカの流れだと表しています。

黒人差別という問題の答えが、『コーニー・コリンズ・ショー』が黒人差別廃止をする、と具体的に設定されました。
堂々とヘアスプレーの模型も横切っていますね。

6曲目『The New Girl In Town』
ミス・ヘアスプレーは電話投票、トレーシーブーム、『ブラックデー』・メイベルの紹介、ペニーとシーウィードの出会い。
歌の「彼女」はトレーシーを表しています。

7曲目『Welcome To The 60s』
60年代は変化の時代、エドナのトラウマの解消、ピンキーの店への移動・契約の成立。

黒人差別からビッグサイズというモチーフを使ってテーマはさらに広がり、古い価値観・偏見からの変化や挑戦を表現しています。

黒人がなんだ!デカいからなんだ!ということですね。

リンクもトレーシーをともに居残り教室に行くことで、トレーシーの関係より強まっていると説明しています。

8曲目『Run And Tell That』
黒人としての誇り、黒人の現状、平等な世界を望む、アイネスの登場、シーウィード家への移動をしています。

僕が一番好きな曲。アイネスの歌と踊りが最高ですね。

9曲目『Big Blonde & Beautiful』
メイベルの歌・自信、アンバーの策略、エドナの誤解の解消。
少し間が空いて、ベルマとエドナも歌います。みな自分に自信を持っている母親たちです。

メイベルを演じたのはラッパーでもありR&B歌手でもあるクィーン・ラティファ。
スケールの大きさを感じる曲です。

喧嘩した両親を仲直りさせようとするトレーシー。
オーディションの後押しをしてくれたウィルバーに、自分の決意を話す。
賢者だったウィルバーのもとを離れる、つまりトレーシーの成長を表しています。

10曲目『You’re Timeless To Me』
仲直り、時代が変化しても変わらないものがある、それは夫婦の愛。
ウィルバー役クリストファー・ウォーケンの見せ場ですね。彼も舞台のミュージカル俳優出身です。

11曲目『I know Where I’ve Been』
テレビ局へのデモ、差別撤廃運動の困難さ・犠牲、それでも未来のために闘い続ける決意。
最もテーマを表す曲です。デモの中にいる白人のトレーシー、強調されています。

12曲目『Without Love』
リンク・ペニー・シーウィードの気持ち、愛のない人生のつまらなさ、ペニー・トレーシーの脱出を説明しています。
前の曲が重いため、ここでテンションを再び持ち上げます。

トレーシーがエドナにテレビ局に来るように頼む。第二ターニングポイントです。

第三幕

13曲目『(it’s)Hairspray』
番組の開始、ベルマの警戒、ラストへの盛り上げですね。

そしてラスト14曲目『You Can’t Stop The Beat』。
一気にフィナーレへと向かっていきます。
変化は止められない、アイネスのミス・ヘアスプレー受賞、ベルマのクビ、黒人差別の廃止を宣言。
トレーシーの髪形はオリジナルとなり、流行を追うのではなく新しいトレーシーへと生まれく変わりました。

シーウィードとペニー、エドナ、メイベルとみなが歌い上げます。
ペニーが一度ためらったのは、アイネスの見せ場を邪魔したくなかったからですかね。

ベルマがクビと言われた時、感情を抑えて何事もないようにふるまう姿も、ベルマのプライドが表れていて素晴らしいです。

ラストシーン。
黒人差別の廃止のためにリンクをも諦めたトレーシーですが、トレーシーは大切な人と結ばれました。

トレーシーとリンクは白人同士のカップルですが、白人と黒人のカップルをメインにしなかったのは『ウエスト・サイド・ストーリー』に近い物語になってしまうからかな?と思います。

しかし出てこないのもテーマにそぐわないので、ペニーとシーウィードをサブストーリーにしたのでしょう。

トレーシー親子・ペニー親子・ベルマ親子と三人の白人の親子が出てきますが、それぞれ二人とも変化した・片方だけ変化した・二人とも変わらなかった、としっかり区別されていますね。

エンドロールでは15曲目『Come so far(got so far to go)』、16曲目『Mama,I’m a big girl now』(歌っているのは1988年版・舞台版・今作の主役を演じた3人!)、17曲目『Cooties』と最後まで楽しませてくれました。

さいごに

リンクの初登場の「リンク」の言い方、生放送でのコーニーのかっこつけ、エドナが最後に踊るときにベルマを挑発する。

などなど、好きな瞬間がたくさんある映画でした!
サントラも出ています!

次回は邦画。
沖田修一監督の『キツツキと雨』を研究します!

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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