映画『ジョーズ』の解説(ネタバレ有)人喰いサメとの死闘。人には戦わなければならない時がある
こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『ジョーズ』です。
1975年に公開されたスリラー・ホラー映画。
監督スティーブン・スピルバーグ、脚本ピーター・ベンチリー、カール・ゴットリーブ。124分。
第48回アカデミー賞にて作曲賞、録音賞、編集賞を受賞し、作品賞にノミネートされました。原作者のベンチリーが脚本の草案を考え、その後ゴットリープが加わり脚本が完成した様ですね。スピルバーグは特に原作のサメ狩りのシーンが好きであり、そこを原作に忠実にやりたかった様です。
映画『ジョーズ』が観られる配信サービス
この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。
配信状況
サービス | 配信状況 | 配信種別 |
---|---|---|
U-NEXT | ◯ | 定額 ※1 |
Prime Video | ◯ | レンタル ※2 |
NETFLIX | ◯ | 定額 ※1 |
Hulu | × | ー |
Disney+ | × | ー |
TSUTAYA DISCAS ※3 | ◯ | 定額 ※1 |
※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
※4 Prime VideoのスターチャンネルEXは、別途月額利用料が発生します。
この記事の情報は、2024年4月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT。
U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。
他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。
映画『ジョーズ』のヒーローズジャーニー
それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。
ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!
日常世界
観光地アミティ島。平和な島で、もうすぐ海開きで観光シーズンだ。だが、若い女性が海で何かに襲われる。
冒険への誘い
引っ越してきて初めての夏を迎える署長のマーティンが死体を見て、サメの仕業だと気づき、海岸を封鎖しようと動き始める。
冒険の拒否
しかし夏は島の重要な観光収入だという市長の説得と医師がスクリューの事故だと説明し、海開きをしてしまうマーティン。少年がサメに襲われ亡くなってしまう。
賢者との出会い
サメに懸賞金がかかる。懸賞金の3倍の金額を要求するサメハンターのクイントを市長らは相手にしない。マーティンはサメ専門家のフーパーと出会う。
戸口の通過
懸賞金目当てに多くの人々が集まり、サメの狩りが始まる。
試練、仲間、敵
大きなサメが狩られマーティンや市長は喜ぶが、フーパーはそれでも小さいと信じない。少年を殺された母親がマーティンの責任だと怒りをぶつけ、マーティンは深く落ち込んでしまう。捕まえたサメを解剖したがやはり標的ではなく、海に探しに向かうマーティンとフーパー。沈没した船を見つけ、巨大な歯と死体を見つける。死体を見つけた際に驚いて歯を海底に落としてしまうフーパー。
最も危険な場所への接近
マーティンとフーパーは海岸を封鎖するように市長を説得するが、証拠がないと反対する市長。
最大の試練
観光客や子供達が集まる海に再びサメが現れ、犠牲者が出てしまう。マーティンの息子も間一髪のところで助かった。
報酬
市長も自分の子供が海岸にいて恐怖を感じ、マーティンの要求に応じクイントの契約書にサインする。クイントの船にマーティンとフーパーが乗り込み、海に出る。マーティンは海が苦手だ。
帰路
巨大ホオジロザメを見つける3人。普通のサメなら弱ってしまうタルを二つも打ち込んでも物ともせず、熟練したクイントも出会ったことのないモンスターだ。サメは海中に潜り、姿を見失ってしまう。
復活
再びサメが現れ、クイントの船を襲う。長時間に渡る死闘、沈みゆく船の中クイントはサメに食われてしまうが、マーティンがサメを倒す。
宝を持っての帰還
壊れた船を浮き輪がわりにして島へと戻るマーティンとフーパー。マーティンは海が好きになったようだ。
映画『ジョーズ』のテーマ
署長のマーティンは危険と知りながらも海開きを許してしまい、子どもが犠牲となってしまった。
クイントは海軍時代に大勢の仲間たちがサメの餌食となってしまった。
2人ともサメに対して引いてはならない理由、ある意味『呪い』があり、一方のフーパーにはそこまでの理由がありません。
そのため、クライマックスである沈みゆく船での戦いでは、フーパーは脱落し、マーティンとクイントVSサメの形であり、マーティンとクイントは復讐のためにサメと戦います。
『どんな敵だろうと、引いてはならない時がある』
これがテーマです。
無線機をぶち壊すクイントは、人の手を借りずに自分の力だけでサメと戦いたかったのですね。
理屈ではなく、自分のプライドから来た行動と言えます。
映画『ジョーズ』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。海中の映像。『ジョーズ』のテーマ曲。
夜の海辺に集まって思い思いの時間を過ごしている若者たち。あるカップルが人気のない浜辺へ走り始める。海に入り泳ぐ女性。と、何かに襲われ、なすすべもなく海中に引きずり込まれる。酔い潰れた男は叫び声に気づかず、海は静寂に戻っている。
舞台となる海、さらに海中に潜むサメの視点から映画が始まり、この映画の代名詞と言えるテーマ曲を印象付けています。このオープニングのおかげで、テーマ曲が流れるとサメが来ると観客は関連付けてシーンの中に引き込むことができますね。
女性が襲われるシーンは、若いカップルの戯れ→叫び声→静かな海。日常から非日常の恐怖に叩き落とし、また日常に戻っている『ように』見せている。この緩急が『ジョーズ』をより怖く感じさせる演出となっています。サメの姿を一切見せていない演出も、要するに見せない恐怖。水面の下のどこかに化け物がいると想像し、キャラクターにも観客にも恐怖を感じさせています。
朝、家で目覚めるマーティン。妻との会話でこの家族は引っ越したばかり、子供が二人いる、死体を見つけたという電話と車でマーティンは保安官の仕事だと説明しています。さりげない妻のセリフで署長という立場まで説明しています。
女性の死体をみるマーティン。若い警官の反応と、ここでも死体を見せない演出で、死体は見るも無惨な姿だと想像させ、恐ろしい怪物の仕業だと印象付けます。
報告書を書き、海岸封鎖の準備をするマーティン。マーティンへの住民からの苦情で、この島はとても平和なんだとわかります。そんな平和な島での大事件。物語の王道な設定ですね。海で少年たちが遠泳していると聞き、海へ向かうマーティン。最後に市長をあらかじめ登場させて次のシーンに繋げています。
フェリーの上で会話するマーティンと市長のシーン。画面端に追い込まれたマーティンと、大勢の市長とその連れ。会話の内容に合わせて、圧力を感じさせる役者の配置になっていますね。さらに画面奥から手前に移動し話を進める。ワンカットで見せるスピルバーグのセンスが素晴らしいですね。
海岸で見張りをするマーティン。犠牲者となる少年をちょっとした会話で印象付け。カップルの遊びの叫び声で一度フリを作り、犬が最初に消えるというお膳立ても。そして少年がサメに襲われます。女性に続いて少年。あえて犠牲者を弱者にすることで、よりサメの悪役感を強めています。
マーティンと市長らが集まった会議のシーンでクイントが登場。登場の仕方、ゆっくりと近づくカメラワーク、話の内容でクイントは重要なキャラクターだと印象付けています。
『サメに懸賞金がかかり、大勢の人間がサメ狩りを始める』これが第一ターニングポイントです。
第二幕
フーパーが登場。フーパーはサメの専門家なのでマーティンに知識を与えてくれる仲間です。メガネで小柄なキャラクターにしているので、狩りの際には頼りにならなそうな印象を与えてますね。
フーパーの検死のシーンでは、食われた腕だけを見せています。焦らした上で少し見せる。流石の演出です。
大きなサメが上がるシーン。盛り上がる男たちと喜ぶマーティンから始まり、最後は少年の母親がきてマーティンに怒りをぶつけます。シーンの中でうねりがあり、マーティンに『呪い』がかかる重要なシーンでもあります。このシーンの後からマーティンの妻は黒い服しか着ていないんですよね。喪に服す意味を表しているのかもしれません。
沖合に出てサメを探すマーティンとフーパー。夜の海に浮かぶ船はまるで宇宙船の様ですね。ソナーなどを搭載した最新式のフーパーの船は後に登場するクイントの船の伏線になっています。
市長を説得するマーティンとフーパーのシーン。ここでもフェリーのシーンと同じように移動しながらワンカットで撮影しています。今度は2体1の構図なのでマーティンが優勢になりそうですが、市長はしぶといですね。結局海岸封鎖はできずに事態は悪化していきます。何もないところを歩いているのかと思いきや、最後に看板の伏線回収。お見事です。
またも海水浴のシーンで、子どものイタズラというフリをして緊張感を解いた後に、本物のサメが襲う。ここでもサメはあまり見せずに、食いちぎられた足という小道具で恐怖を与えます。
映画が始まっておおよそ70分頃にクイントの船が出港し、もったいぶることなくいきなりサメと出会い、残りの50分ほどはほぼサメとの対決のシーンとなります。
圧搾空気ボンベの伏線、サメと初めての遭遇、クイントとフーパーのリアクションを使っていかにこのサメが規格外なのかを説明し、夜のシーンに入ります。
サメが近づくことを表すのによくサメの背鰭を使いますが、この映画では意外にもそのシーンは少なく、代わりにタルを使ってサメが近づいていることを表しています。
タルがある。近くにいるけどどこにいるかわからない。と、突然襲ってくる。タルという小道具を使っていろいろな感情を浮かび上がらせることができています。
夜のシーン。いわゆる焚き火のシーンで、キャラクター同士が過去やトラウマを話し、お互いの絆を深めるシーンですね。傷を見せあうというモチーフが実に男らしく、子どもらしくて良いアイディアです。クイントが自ら見せる傷と、見せたくない傷。対比もつけていて素晴らしいです。アクションばかりの第三幕の前にある嵐の前の静けさのようなシーンでもありますね。最後にみんなで歌う姿が素敵です。そして、サメが近づいてくる。
『再びサメが襲ってくる』これが第二ターニングポイントです。
第三幕
エンジンの修理をしているクイントとフーパー。動きや構図が全く一緒です。フーパーはマーティンが吹き出したクイントの作った酒を飲めるので、この二人は師弟関係のように描かれていますね。
長い戦いでエンジンは壊れ、船はボロボロ。救命胴衣を渡すことで、クイントも敗北を覚悟していると思えます。
フーパーが用意した檻と毒薬を準備し、最後の戦いのシーンへ。海中のフーパー視点から襲ってくるサメを見るシーンも、ここだけなんですね。暗闇から近づいてくるサメは恐怖そのものです。そして一回の衝撃で毒薬を手放すフーパー。さすがです。
クライマックス。海に落ちたら負けの状況で、沈む船でのギリギリの戦い。クイントは死に、ボンベの伏線を回収し、サメを倒します。
ラストシーン。島まで泳いでいくマーティンとフーパー。マーティンは海嫌いを克服し、平和な海が戻ってきました。
さいごに
サメ映画というジャンルを作ったエンタメかつ完成された男の物語。実に素晴らしい映画でしたね。
次回もスティーブン・スピルバーグ監督作品、『ジュラシック・パーク』の研究です。
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