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映画『椿三十郎』の解説(ネタバレ有)本当に良い『刀』は誰?

椿三十郎
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『椿三十郎』です。

1962年公開のアクション映画。
監督黒澤明、脚本黒澤明、菊島隆三、小國英雄。96分。

前年に公開された『用心棒』の続編的作品で、当時のキネマ旬報ベストテンの5位にランクインし、キネマ旬報が1999年に発表した『映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画賞』では82位にランクイン。
1995年にBBCが発表した『21世紀に残したい映画100本』にも選出されました。

賞は取らずとも、多くの人に評価される傑作映画です。

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映画『椿三十郎』が観られる配信サービス

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。

配信状況

サービス配信状況配信種別
U-NEXT定額 ※1
Prime Videoレンタル ※2
NETFLIX×
Hulu×
Disney+×
TSUTAYA DISCAS ※3定額 ※1

※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。

この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT

U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。

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映画『椿三十郎』のヒーローズジャーニー

それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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日常世界

汚職を告発するために寺に集まり話し合っている若侍9人。
叔父の城代は話を信じず、大目付の菊井は応援してくれるようだ。喜ぶ9人だが、偶然話を聞いていた椿三十郎が話を不審に思い、割って入ってくる。案の定、彼らは菊井の手のものに殺されそうになるが、三十郎の機転で生き延びる。

菊井の腹心・室戸は凄腕の侍。三十郎の腕を見抜き、仲間になる気があるなら来いと言い残し去っていく。

冒険への誘い

次は城代が危険だと予期した三十郎、若侍たちとともに城代の家に向かう。

冒険の拒否

城代の家に忍び込む三十郎たちだが、すでに室戸らに占拠されていた。城代はどこかへ連れていかれ、その妻と娘は囚われているようだ。

賢者との出会い

まずは妻と娘を救出する三十郎たち。

戸口の通過

汚職をしていた男の隣が若侍の家であり、そこを拠点にする三十郎たち。三十郎も城代の救出を手伝うと決める。

試練、仲間、敵

菊井の計画にハマり、危うく殺されそうになる若侍たち。すでに藩全体が若侍の敵となってしまった。

最も危険な場所への接近

室戸の言葉に従い、室戸の家に忍び込む三十郎。三十郎が敵か味方かで意見が割れる若侍たちは、三十郎の尾行をするが室戸らに捕まってしまう。

最大の試練

命をかけて室戸を騙し、若侍たちを救う三十郎。

報酬

隣の黒幕の家に城代が捕まっていると気づく若侍たち。
しかし家には多くの武士たちが集まっている。

命をかける覚悟を決めた若侍たち。三十郎が若侍たちが離れた場所に集まっていると嘘をついて家を空にする作戦を思いつき、実行する。

帰路

三十郎の目論見通り菊井と武士たちはいなくなったが、室戸が三十郎の計画に気づき、三十郎を捕まえる。

復活

三十郎の機転で若侍が突入し、城代と三十郎を救い出す。

宝を持っての帰還

プライドを傷つけられた室戸が三十郎に決闘を申し込む。三十郎が室戸を斬り、去っていく。

映画『椿三十郎』のテーマ

良い侍とは、
命をかけるべき時や対象をわかっている者

これがテーマです。

椿三十郎は凄腕の侍ですが、劇中に言われるように抜き身のような誰でも斬ってしまう刀のような男。

映画の最後では三十郎自らが若い侍9人に対し、『大人しく鞘に収まっていろ』と言います。これは彼らを良い侍と認めていること。

三十郎でも室戸でもなく、腕も頭脳も未熟ですが城代を助けるために忠義を尽くす侍たちこそが本当に良い侍なのです。

腕のいい侍よりも平凡で心の強い人物を評価するテーマは、『七人の侍』にも繋がっていますね。

映画『椿三十郎』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。寺で話し合っている若侍9人。話を聞いていた三十郎が声をかける。

若侍の話で物語の土台や彼らの目的が説明されます。『ダメか、やっぱり』という話の途中から始まるセリフがもう映画の世界に入りますね。そしてこれだけで彼らは不利な状況とわかります。とてもうまい省略です。城代や菊井など、言葉だけでのキャラクターの登場は少し印象が薄いため、現代ならカットやシーンを入れて説明しそうですね。しかしそれではテンポが遅くなるため、一長一短な手法です。しかし城代はあくまで助ける対象、菊井は親玉であり実際の悪役は室戸なので、二人はそこまで説明する必要がないとも言えますね。

椿三十郎が加わり、反対意見を言い9対1という構図になる。これだけで主人公・椿三十郎の存在感が際立たせられています。

さらに周囲を取り囲まれ、いきなりの命の危機。腕もあるが頭もいい三十郎の能力を存分に見せて窮地を切り抜け、弱者の味方をする性格。ヒーロー的な主人公ですね。おまけに悪役として重要な室戸も登場します。

物語の背景を説明、主要キャラクターの紹介、崖っぷちから物語が始まるという素晴らしいオープニングです。

城代が危険だと気づき、若侍たちとともに城代の家に向かう三十郎。

城代の妻と娘を救出します。生け捕りになった侍と城代の妻と娘。真面目でシリアスな展開のなかで違ったテンポとユーモアをもたらすキャラクターで、こういうキャラクターは終盤で偶然大事な手がかりを見つけますよね。もちろんこの映画でも同じです。さらに今回の場合、三十郎に良い刀の意味を気づかせる重要なキャラクターです。

また、室戸が敵の中でも恐れられている存在と印象付けています。一つエピソードを加えるだけでキャラクターが深まりますね。藁で眠る妻と娘も同様です。

黒藤の家の隣を拠点とする三十郎たち。後々重要となる庭を流れる川も、最初に見せることで印象付けています。黒藤の家の椿も、三十郎の名前を使って印象付けていますね。

物語で使うものは全て最初に観客に印象付けることが大切です。都合のいい展開と思われてしまうかもしれませんからね。

若侍たちとともに城代を助けると決める三十郎。これが第一ターニングポイントです。

結果的に城代の妻と娘しか助けられませんでしたが、第一幕の中でも『城代を助ける』という目的があるというのがさすがですね。

外的なゴールは『城代救出』、内的なゴールは『良い刀とは?』と二つ設定されています。

第二幕

二幕に入り、悪役視点のシーンも入り始めます。
小川から隣の椿屋敷に入り、悪役視点へ。次のシーンへの繋がりに小道具や似たシチュエーションを使うことで、澱みなくシーンが続いていきます。

三十郎たちは城代の妻と娘を救出したが、今度は室戸の撹乱と菊井の権力で有利な盤面を作る。直接戦わなくとも、策略と力関係の押し合いで面白いですね。

そして三十郎と若侍との関係も最初から強固というわけでもなく意見が対立し、若侍が勝手に行動を起こす。三十郎の障害は菊井・室戸だけでなく若侍との信頼、城代の妻の教えと実はたくさん設定されています。

若侍たちは偶然助かります。これは都合のいい展開ですが、主人公ではなくサブキャラの若侍の命、三十郎は菊井の策略と気づいていたので、観客はこの展開を許せますね。

物語の半分のところで、命をすてる覚悟をした若侍と三十郎。三十郎は室戸に会いに向かいます。『10人だぜ』という繰り返される言葉が、三十郎と若侍の徐々に強力となる信頼関係を表す重要なセリフになっていますね。

三十郎について議論する若侍たちの言い争いがユーモアを含んでて面白いですね。三十郎を庇っているのか貶しているのか馬鹿にしているのか。とにかくすごいです。

三十郎と室戸が話すシーン。菊井の本性を見抜いている室戸の語りで、真の悪役は室戸だと観客は気づき、室戸を倒すことが真の終わりだと察します。続いて三十郎が3人を瞬殺、大勢を斬る殺陣のシーン。圧巻です。

隣の椿屋敷に城代が監禁されていることが分かり、突入する作戦を決める。これが第二ターニングポイントです。

突入の合図を話す妻と娘の会話の間、襖の文字をなぞる三十郎。演出なのか三船敏郎のアドリブなのか分かりませんが、素晴らしいですね。

第三幕

嘘には穴があり、三十郎の嘘が見破られるものの、得意の三十郎の話術で城代を救出する若侍たち。

物語として外的なゴールは達成され、今度は内的なゴールとして室戸との決闘があります。

三十郎に斬られ、血飛沫を出す室戸。リアルを求め、血が出ない殺陣に一石を投じる、日本のスプラッター映画として初めての演出です。(実際には前作の『用心棒』でも同じ演出が初めて行われたようですが、ここまではっきりと映されたわけではなく反響がなかったようなので、歴史に登場したとは言えません)

物語を通じて良い刀とはなんたるかに気づき、去っていく三十郎。三十郎と若侍は仲間であり、師弟であり、親子のような関係でした。最後のセリフは三船敏郎の『あばよ』。
カッコ良すぎるラストです。

さいごに

ユーモアを交えながら状況が絶えず変化し、要所要所に迫力のある殺陣、圧巻のラストシーン。素晴らしい映画でしたね。

次回も同じく黒澤明監督の『用心棒』を研究します!

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-fin-

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akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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