映画『スペース・カウボーイ』の解説(ネタバレ有)老人たちが宇宙へ!強いアイディアとただただシンプルな脚本

こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『スペース・カウボーイ』です。

2000年公開のアドベンチャー映画。監督クリント・イーストウッド、脚本ケン・カウフマン、ハワード・クラウスナー。130分。
イーストウッド自身が監督・脚本・制作を務め、他にトミー・リー・ジョーンズも出演しています。NASAの宇宙服に苦労し、出演したドナルド・サザーランドは撮影中に膝にひび、ジェームズ・ガーナーは転んで肩を脱臼したそうです。
映画『スペース・カウボーイ』が観られる配信サービス
この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。
配信状況
サービス | 配信状況 | 配信種別 |
---|---|---|
U-NEXT | ◯ | 定額 ※1 |
Prime Video | × | ー |
NETFLIX | × | ー |
Hulu | × | ー |
Disney+ | × | ー |
TSUTAYA DISCAS ※3 | ◯ | 定額 ※1 |
※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
※4 Prime VideoのスターチャンネルEXは、別途月額利用料が発生します。
この記事の情報は、2024年1月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXTか、サービスが充実していてコスパの良いPrime Video。
どちらもトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。


他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。

映画『スペース・カウボーイ』のヒーローズジャーニー
それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!

日常世界
かつて空軍に所属し宇宙飛行士を目指していたチーム・ダイダロスだったが、その願いは叶わずにいた。
冒険への誘い
現代。NASAで問題が発生。ロシアの通信衛星が故障し、修理しなければ地球に落ちてくる。
冒険の拒否
古い装置のためフランクに修理の協力依頼がくるが、かつての上司ガーソンの指示と聞き、意地を張って断るフランク。
賢者との出会い
フランクしかできない修理、協力するかどうか悩むフランク。
戸口の通過
ガーソンに会い、チーム・ダイダロスで宇宙に行き修理するしかないと話すフランク。渋々承諾するガーソン。
試練、仲間、敵
メンバーのタンク・ジェリー・ホークが集まり、宇宙に向けて訓練を始める。
最も危険な場所への接近
順調に訓練を進めていたが、ホークにガンが見つかる。ホークは自分をおいて宇宙に行けとフランクに伝える。
最大の試練
ホーク抜きでは宇宙に行けないとガーソンに伝えるフランク。条件付きで交渉し、ホークの宇宙行きを認めてもらう。
報酬
宇宙に行くフランクたち。
帰路
ロシアの通信衛星にドッキングするフランクたち。通信衛星には核ミサイルが装備されており、冷戦の遺物だった。若手宇宙飛行士が修理に失敗し、衛星は暴走を始める。
復活
暴走を食い止め、地球落下を阻止するフランクたち。ホークは自らの命を犠牲にして衛星ごと月に向かい、宇宙に核ミサイルを捨てると話す。ホークの覚悟を汲んだフランクは、ホークと核ミサイルを月に向かって飛ばす。
宝を持っての帰還
悪条件の中、無事に地球に帰還するフランクたち。月についたホークが地球を見つめている。
映画『スペース・カウボーイ』のテーマ
『命を大事に。
しかし命を賭ける時がある』
これがテーマです。
空軍での訓練でも無茶をするホークに怒り、宇宙での任務中でも搭乗員の命を第一に優先するフランク。しかし、そもそもこの危険な任務に行く決意をしたのもフランクです。そして、クライマックスではホークが命を賭けることも認めています。
長く生きていたからこそ実現できたフランクの宇宙行きの夢。同時に命を賭ける覚悟も持って人生最大の挑戦に向かって行ったのです。
映画『スペース・カウボーイ』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。まずはギターのメロディ。宇宙が舞台の映画なので、空を見上げるアングルからの導入。音、映像、ストーリーと少しずつ情報を増やすイーストウッドの定番の始まり方です。
モノクロで描く若い頃のフランクたちのシーン。ハワイ人形のタンク、女好きで怖いもの知らずのジェリー、ふざけて無茶をするホークとそれぞれのキャラクターを見せていきます。無茶をするホークに怒るフランク。命を大事に、のフランクです。ガーソンとの対立も描いて、映画の背景を描いたオープニングが終わります。
カラーとなり現代へ。ここからストーリーが始まります。サラとガーソンが登場し、問題の説明とスピーディーに進んでいきます。現代のフランク。修理シーンだけで、年老いてさらに一筋縄では行かない性格になったと分かりますね。さらにサラの登場。本当に話が早いです。通信衛星の説明シーンではフランクにしかできない修理、未だにあるガーソンへの怒り、妻が同席している意味までしっかり描いていてとてもいいですね。
フランクも一度断ってから協力し、ガーソンも一度断ってから認める。ホークも最初は断りますが、結局入る。すんなりいかせず小さなドラマや葛藤を重ねていく定石のテクニックです。ホークの場合は理由が少し描かれていればもっと良かったかもしれませんね。ベタに亡き妻の言葉など。
『チーム・ダイダロスが復活し、NASAに入る』これが第一ターニングポイントです。
第二幕
二幕に入り、ガーソンとロシア高官だけのシーンが入ります。この二人が物語上の悪役であり、衛星に何か秘密を持っている、フランクたちは最初から行かせる気がないと説明しています。さらに悪役ほどではないが障害となるジーンも登場。訓練をこなし、フライトディレクターのジーンを納得させることが最初の障害となります。体力や視力など身体的に問題が出てきますが、果たしてこれでいいのかと疑問を持ちながらものらりくらりと訓練が進んでいきます。ガーソンのどうせ落とすからいい、みたいな説明があると良かったかもですね。Gの訓練や着陸の訓練でやはり凡人でないキャラクターたちと説明し、同時にクライマックスの伏線を張っていますね。
サラとホークのサブストーリーである恋愛要素も発生しますが、正直微妙な要素ですね。第三幕でホークが命を捨てることになりますが、そこに生きているサブストーリーとはあまり思えません。
物語のちょうど半分のところで大問題が発生。ホークのガンが見つかります。世間から人気を得たフランクたちは宇宙に行けるようになったというのに、なんとも皮肉な展開ですね。
宇宙に行きたいと一番思っていたフランクがためらい、ガーソンやホークが宇宙に行けと伝える。一幕とは逆の構図になっていて面白いです。
宇宙船に乗り込むフランクたちのシーンでは、フランクの妻がホークに『生きて帰して』と伝えています。結果的にホークは自らの命と引き換えにフランクたちを地球に帰させる。ここでも皮肉なセリフを使っていますね。
二幕の後半は宇宙での任務のシーンが中心となります。舞台が宇宙空間なので、一つ一つの動作に緊張感を持たせたシーンが続いていきますね。衛星もまるで凶暴な生き物のように表現されています。無機物を有機物のように見せるテクニックや、この後の衛星が暴走していくシーンの怖さもさすがのイーストウッドです。
フランクたちが衛星に到着し、通信衛星の秘密である核ミサイルが判明。ここからはさらに緊張感をあげ地球の運命をかけたサスペンスとなり、さらにイーサンと言ういかにもやりそうなキャラクターのせいで事態が大きく悪化していきます。
イーサンとロジャーは行動不能となったため、
『チーム・ダイダロスだけで任務を続行する』これが第二ターニングポイントです。
第三幕
衛星の地球落下を阻止しましたが、核ミサイルの処理はホークが犠牲となってしまいます。ホークの覚悟とフランクの決断の速さは、老人という設定だからすんなりとできましたね。
ホークと最後の別れをし、クライマックスは操舵手不在の中ボロボロのシャトルで地球に戻らなければならないフランクたち。ホークがシミュレーションで見せた行動とセリフの伏線を回収し、無事に地球に戻ります。
ラストシーンは月にいるホーク。オープニングの空を見上げるのと真逆で、月から地球を見ています。
笑っているのか、泣いているのか、生きているのか、死んでいるのか。ホークの顔を見せないところがまた憎いです。
さいごに
老人たちが集まり、宇宙に行って仕事をして帰ってくる。シンプルなストーリーだからこそ、役者の演技や映像に集中することができる脚本でしたね。振り返ってみると結構穴のあるというか甘い展開が多いですが、それでも大好きな映画だなと思いました。
次回はスタンリー・キューブリック監督の『フルメタル・ジャケット』を研究します!

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