映画『宇宙戦争』の解説(ネタバレ有)トム・クルーズが演じた、平凡な中年男の逃走劇。
こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『宇宙戦争』です。
2005年公開のSFスリラー映画。
監督スティーブン・スピルバーグ、脚本ジョシュ・フリードマン、デヴィッド・コープ。116分。
H・G・ウェルズによる同名SF小説『宇宙戦争』を原作とした作品。原作のみならず、1938年のラジオドラマ版や1953年の映画『宇宙戦争』の要素も引用されている。
9・11の同時多発テロの衝撃や思いを反映しており、ジャンボジェット機の墜落や掲示板に貼られた無数の人探しはあえて描かれたものとスピルバーグが語っています。
ラジオドラマ版が放送された当時、ラジオを聞いた人々は本当に宇宙人が襲ってきたと勘違いし、大きなパニックになったそうですよ。
映画『宇宙戦争』が観られる配信サービス
この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。
配信状況
サービス | 配信状況 | 配信種別 |
---|---|---|
U-NEXT | ◯ | 定額 ※1 |
Prime Video | ◯ | 定額 ※1 |
NETFLIX | × | ー |
Hulu | ◯ | 定額 ※1 |
Disney+ | × | ー |
TSUTAYA DISCAS ※3 | ◯ | 定額 ※1 |
※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
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他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。
映画『宇宙戦争』のヒーローズジャーニー
それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。
ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!
日常世界/賢者との出会い
港で働いているレイ。
妻・メリーアンとは別れており、会える日が限られている息子のロビーとレイチェルが家にやってくる。子供たちには懐かれていないレイ。
冒険への誘い
不穏な雲がわき、異常な落雷が道に落ちる。と、地中から巨大なマシンが現れ、人々を襲い始める。
冒険の拒否
必死に逃げるレイ。
戸口の通過
家につき、車に乗って急いで逃げるレイたち。子供達には宇宙人が襲ってきたと説明する。
試練、仲間、敵
元妻の家に着くが、元妻の姿はない。実家のボストンに行くといっていたので、そうだと自分に言い聞かせるレイ。一晩過ごすが、夜中にジャンボジェット機が家に墜落してくる。
偶然出会ったテレビクルーからマシンに宇宙人が乗り込み世界中に現れ、軍も歯が立たないと教えてもらう。
ロビーは軍と共に戦いたいと思い、レイには止められない。レイチェルが一人にしないでと訴える。
最も危険な場所への接近
レイたちの乗る車をめぐって暴動が起き、車が奪われる。川を渡るフェリーに乗るが、マシンが襲ってくる。命からがら逃げるレイたち。マシンは人々を捕まえている。
最大の試練
丘の向こうで戦闘が起き、逃げるレイたち。ロビーはどうしてもこの後がみたいと訴え、その決意に負けたレイはロビーを向かわせる。
報酬
家の地下で立てこもる男に助けてもらうレイとレイチェル。マシンは人間の血を吸って散布し、奇妙な赤い草を育てている。狂った男に命の危険を感じたレイは男を殺す。
帰路
マシンに見つかり、レイチェルと共にマシンに捕まってしまうレイ。手榴弾を使いマシンを破壊する。
復活
突如マシンの様子がおかしくなり、次々と軍がマシンを破壊していく。
宝を持っての帰還
ボストンに着くレイたち。メリーアン、そして生き延びたロビーと再会する。宇宙人は地球の微生物に適応できずに死んでいった。
映画『宇宙戦争』のテーマ
レイはメリーアンと別れ、レイチェルとロビーとは離れ離れに暮らしています。メリーアンとの関係はそれほど悪いようではなさそうですが、子供たちとの関係はほぼ無いと言えます。
それが宇宙人の襲来と逃走という物語の過程で親子の絆が再構築されていく。
『 親子の絆の修復 』
これがテーマです。
宇宙人との対決をモチーフにした映画では主人公は軍人や研究者でなければ宇宙人と関わることがとても難しくなりますが、レイは軍人でもなく研究者でもないただの男で、逃げ惑うことしかできません。
ただの男だからこそ親子というテーマに時間をかけることができ、より深く描くことが可能になりましたね。
また、当時ドキュメンタリー風な演出がヒットしていたので、『宇宙人の侵略をドキュメンタリー風に描く』というアイディアも組み込まれています。
映画『宇宙戦争』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。
不穏な音楽。水滴の中で生きている微生物から徐々に世界へ。宇宙人が監視しているというナレーション。
人間が水滴の微生物をみている様に、宇宙人も広い宇宙から小さな地球を監視していることを映像でわかりやすく見せています。微生物はラストの重要な要素なので同時に説明もできています。
レイの仕事シーンに続き、レイのプライベートな面を説明するシーン。メリーアン、レイチェル、ロビーと会います。レイチェル、ロビーとはそれほど仲良くなく、今の夫であるティムは毛嫌い。去っていくメリーアンとの会話や態度でレイは未練が残っていることが、この一連のシーンで説明されています。
レイチェルに一人で荷物を運ばせようとするレイには、家族は助け合うものということがわかっていません。これもテーマに通ずる行動ですね。
子供二人という設定も実はいい仕事をしています。3人の関係は2対1になったり1対1対1になったりと、力関係が崩れやすくなり、そしてそれが物語を面白くさせます。
キャッチボールのシーンも、二人の口喧嘩と傍観しているレイチェルと視点が複数あってより面白いですね。
レイチェルの指にささくれが刺さり、レイチェルは自然と体が押し出すと話します。これは今後の展開を表しているセリフですね。
この映画の中では画面越しにアクションを見せたり、鏡や窓の反射でキャラクターを見せる演出がとても多いです。まるで虚構のような現実、を表しています。これも9・11を意識しているのでしょう。
じわじわと恐怖を見せる感覚も与えるため、スピルバーグのお得意の焦らし演出をより引き立たせますね。
レイが部屋からリビング、外へと移動しながら、電気や携帯、車が動かない、ロビーが家に戻ってくる、と次々と情報を説明していきます。
教会を崩壊させながら、地中からマシンが出てくる。この世の終わりを表しています。
いきなりマシンが現れるわけでなく、地割れから始まりたっぷりと時間を使ってじっくりと、最後は派手に登場させる。さすがスピルバーグですね。マシンが初めてビームを撃ち人を粉にする瞬間も、ビデオカメラ越しです。
ロビーとレイチェルを連れて逃げるレイ。
これが第一ターニングポイントです。
第二幕
きっちりとレイの家を破壊されるところも観客に見せます。
車を走らせながらロビーに説明するレイ。ここもシーンを区切らずにワンシーンで撮っているので臨場感がすごいですね。
メリーアンの家につき、一息つくレイたち。観客もここで一息つくことが出来ます。
しかし翌朝にはジャンボジェット機が墜落している。もはや安全の地はどこにもありません。
テレビクルーと会うレイ。電気も止まり、ただの一般人なレイには情報を得ることが出来ません。しかし観客には世界の状況と宇宙人の説明したい情報であり、無理やり入れるとご都合にも見えてしまいます。このシーンで情報を持っていそうなマスコミを登場させ、世界中が襲われ、マシンにはシールドがあり軍も歯が立たないという情報をレイと観客に説明します。耳が聞こえない、スクープのある人だけ助けようとするなど、ワンシーンだけの登場でもきっちりとキャラクターを与えています。
川を流れる無数の死体。のちに出てくる燃えたまま走る列車もそうですが、どういう経緯でこうなったのか説明されませんが、とても怖いですね。
ロビーが一緒に戦いたいと懇願し、レイが止めるシーン。正論を言われたレイには止められる力がなく、レイチェルがロビーを止めます。この時2対1になるような立ち位置になっていますね。この3人の関係が崩れましたが、直後に運転をロビーに任せることで少し回復します。人間関係は本音をぶつけて強くなっていくものです。ロビーとレイの関係はロビーのレイの呼び方でその強さと変化を表しています。
車を奪うために殺し合う。人間も狂った世界となってしまいました。夜・土砂降りの演出も緊迫感を助長させています。
電気がついている港で少し安心させたところで、再びマシンの襲来。安堵と恐怖を交互に繰り返しています。人助けをするロビー。彼のキャラクターとレイの知らない成長を見せてくれます。降ってくる大量の服。それだけの描写で多くの人間が犠牲になったと説明しています。
ロビーを行かせるレイ。レイにはロビーを止める力もなく、同時にロビーを子供ではなく一人の人間と認めたことを表しています。軍の戦闘シーンは結構稚拙ですね。ここで予算を削減しているのかもしれません。
オグルビーに導かれ地下に隠れるレイたち。レイは子守唄も知らないダメな父親ですが、彼なりにレイチェルへの愛を表現し、二人の関係を強くしようとします。
これまでの派手な戦いとうって代わり、今度はカメラ・宇宙人とのかくれんぼ。命がけのかくれんぼなので緊張感が凄まじいです。
マシンに見つかってしまうレイとレイチェル。
これが第二ターニングポイントです。
第三幕
マシンを壊し、捕まったレイチェルを救うレイ。
ボストンに着くレイたち。メリーアン、そしてロビーと再会します。これはロードムービーだったんですね。
さいごに
主人公はレイチェルを守り、ボストンに届けただけ。
宇宙人襲来、人類滅亡の危機という設定なのに、最後にシールドがないと叫んだだけという凡人の行動しかしていません。
しかし、凡人が主人公だからこそできる物語でしたね。
次回はU-NEXTで配信中、黒澤明監督の『椿三十郎』を研究します!
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