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映画『プリティ・リーグ』の解説(ネタバレ有)戦時中に創設されたプロ女子野球の奮闘記

プリティ・リーグ
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『プリティ・リーグ』。

1992年公開のスポーツコメディ映画。
監督ペニー・マーシャル、脚本ババルー・マルデル、ローウェン・ガンツ。128分。

1943年から1954年まで行われた女子プロ野球リーグをモチーフにした本作。
主人公姉妹のようなモデルは実在していませんが、監督のジミーはジミー・フォックスがモデルとなっているようです。

また、主題歌の『マイ・プレイグラウンド』はマドンナが制作し、メイ役としても出演しています。

ジミーの劇中にあるセリフ、「野球には泣くなんてない!」はアメリカ映画の名セリフベスト100の第54位にランクインしました。

2022年にはAmazonプライムビデオにてリブートとなるドラマが制作され、配信されました。

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映画『プリティ・リーグ』が観られる配信サービス

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。

配信状況

サービス配信状況配信種別
U-NEXT定額 ※1
Prime Video定額 ※1
NETFLIX×
Hulu×
Disney+×
TSUTAYA DISCAS ※3定額 ※1

※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。

この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT

U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。

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映画『プリティ・リーグ』のヒーローズジャーニー

それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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日常世界

現代。
老女のドティが、娘に強引に勧められ野球スタジアムへ向かう。老女達がしている野球を見て、昔を思い出すドティ。

戦時中の1943年。
男は兵士として戦地に向かい、政府はプロ野球の廃止を考えていた。野球チームのオーナー達は女子プロリーグを計画する。
田舎町で野球をしていたドティとキット。
野球センスの塊であるドティ、彼女の夫・ボブは戦地にいる。キットは優秀なピッチャーだが、完璧な姉・ドティに劣等感を抱えている。

冒険への誘い/冒険の拒否

スカウトがドティをテストに参加するように薦める。報酬も高額だ。しかしそんな上手い話はないと断るドティ。キットもスカウトにせがむが、ドティを連れてくればテストに連れていくと提案される。

賢者との出会い

ドティを説得するキット。田舎の閉じた世界から抜け出したい気持ちは二人とも一緒だ。

戸口の通過

各地から女子野球選手が集まり、テストが行われる。合格したドティとキット。

試練、仲間、敵

個性的で、様々な背景を持ったチームメイト。監督はレジェンド級の選手だが引退し、アル中のジミー。やる気は全くない。マナー教室など、野球以外の講習もさせられる。

最も危険な場所への接近

リーグ戦が始まり、様々なトラブルが起きながらも試合をしていくドティたち。

最大の試練

しかし客足が伸びず、儲けがないためオーナー達は廃止を検討していると聞かされるドティたち。ドティがスーパープレイをし、観客とライフの記者を魅了する。

報酬

ドティの記事や新聞、様々な企画の効果で人気が出始める女子リーグ。ジミーも少しづつやる気を出してきた。

帰路

ドティとキットの関係が悪化し、ドティが野球を辞めると言い始める。
ドティ放出を阻止するためチームはキットをトレードに出してしまう。ケンカ別れするドティとキット。
さらに戦争が終わりに近づき男達が戻ってくるため、オーナーは女子リーグを今季で終わらせるつもりだ。ボブが帰ってきたため、ドティは野球を辞めて田舎に戻る。

復活

ワールドシリーズに進んだジミーたち。
優勝決定戦にドティが戻ってくる。相手投手はキットだ。キットが打ち、優勝する。ドティは田舎に戻り、キットは野球を続けるつもりだ。

宝を持っての帰還

現代。旧友と再会するドティ。野球の殿堂にて女子プロ野球リーグのコーナーが新設され、招待されたのだ。キットと再会するドティ。美しい思い出が残っている。

映画『プリティ・リーグ』のテーマ

冒頭、プロ野球のテストに向かうことに渋るドティを説得するキット。

そして終盤、夫のボブが帰ってきたことで野球をやめようとするドティを説得するジミー。
苦痛が伴うが、それが大事なんだと訴えます。

この二つのシーンから、この映画のテーマは

全力で取り組んだことは
かけがえのない思い出になる

と読み取れます。

皆が初めてのことであり、皆が苦しみながらも挑戦する。だからこそその経験は唯一無二であり、深く人々の心に残る『偉大な』思い出となるのです。

思い出という内面的なテーマは、女性というモチーフにも合っていますね。

映画『プリティ・リーグ』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
ドティの家、家のまえで遊ぶ子ども。夫婦の写真が飾られている。旅行の準備をしているドティ、気乗りしていないようだ。

娘がグローブを放る。行かないと話すドティ。旧友やキットとは長く会っていないようだ。大事な思い出と説得する娘、ドティを強引に連れていく。

普通の旅行の準備かと思わせて、グローブの登場。女性にグローブという絵柄でオリジナリティのある企画です。

意味深な『ダイヤモンドの女王』という呼び名。ドティの旅行は珍しく、子ども達が「火事でもあったの?」と冷やかします。
そのセリフだけで閉じた世界で穏やかに住んでいる女性だと説明されます。兄弟へのアドバイスで、ドティの優しさと強さを兼ね備えた人だとわかります。
そして『思い出』というキーワード。テーマと設定、物語の始まりをオープニングのワンシーンで処理しています。

ゆったりとした音楽と走るバスの映像、行き着いた先では年配の女性達が野球をしている。
ドティが過去の記憶を思い出し、本編が始まります。
大人時代から若い頃を思い出すことで、大人達をターゲットにした客層をスムーズに映画の世界に導入させています。

野球をしているキットとドティ。
ドティのアドバイスを聞こうとしないキット、野球の才能があり端正な顔立ちのドティ。二人の初登場シーンから二人の問題を描き、ドラマを作り始めています。キットの苦手な高めがクライマックスの伏線にもなっていますね。

家に帰るドティとキット。
仲はとてもいい設定ですがベタベタしているわけでもなく、たわいない口喧嘩をする二人の描き方が素敵ですね。

口の悪いスカウトとの出会いが二人の運命を変える。
皮肉屋だがスタジアムの別れ際では人間味を見せるこのスカウトも、少ない登場ながらとてもいいキャラクターになっていますね。
一言二言のセリフで生きているキャラクターが浮かび上がってきます。

マーラの登場。
サブキャラクターのドラマも王道の展開ながらやはり必要な要素であり、父子家庭の父との別れもグッとくるシーンにしっかりと描かれています。

メイとドリスの登場。
その後エブリン、シャーリー、ベティなども登場します。チームは16人と多くいますが全員に名前を持たせるわけでなく、数人に絞ることで観客にキャラクターを覚えやすくしています。

テストに合格し、女子プロ野球選手となるドティとキット。
これが第一ターニングポイントです。

男性からは女性が野球?とバカにされ、女性からの女性らしさの否定とどちらからも批判されているのが上手い設定ですね。

第二幕

初めての練習シーンが野球ではなくマナー講習とこの企画らしいユーモアが描かれています。

監督ジミーの登場。
選手時代の輝かしい実績と、落ちぶれた現在・アル中・女子野球を卑下している、とワンシーンでジミーの全てを説明しています。選手達の前で立ちションするジミー、べティの夫の野球カードも破いてしまいます。
「主人に殺される」というセリフはこのシーンのユーモアとともに悲しい伏線にもなっています。

酒場のシーンでドティを送った少年や、マーラの歌のユーモア、そのマーラに惹かれる男など本当に抜け目のない脚本で素晴らしいですね。

夜を走るチームバス内のシーンが何度かありますが、このシーンは内面的なシーンで、選手達の関係を強くする役割を持っています。
映画でよく観る『焚き火を前に語る』シーンですね。

映画の中盤に女子リーグの人気が増していくことを描いたモンタージュ。
良い監督はモンタージュが上手いですよね〜。リーグの不人気問題が解消された後は、ドティとキットの関係悪化、さらに男が戻ってくるため女子リーグが廃止と映画のラストに向けてさらに大きな問題を発生させます。

さらに容赦なく戦争の現実が彼女たちを襲う。
戦死報告の相手はドティかと思いきや、ベティ。
観客の予想を裏切りますが、ドティの夫・ボブが帰ってくる形でドティから野球を奪います。

チームを去っていくドティ。これが第二ターニングポイントです。

第三幕

ワールドシリーズが始まり、映画なので当然最終戦までもつれ込みますね。
ジミーも変化し、口は悪いが監督らしくなりました。そしてドティも戻ってきました。

エブリンとジミーのシーン、メイの打席に立つときの嫌がらせ、ドリスの叫びなど最後まで素晴らしいディテールです。

キットとの因縁・高目の伏線も回収し、クライマックスを迎えます。ドティは優勝できませんでしたが、キットを信じ、キットは一人で生きていけるように成長したという内面的なゴールを達成しました。

現代に戻り、チームメイトと再会するドティ。この一年を最後まで全力でやり遂げたからこそ、素晴らしい思い出となりました。

さいごに

野球のリーグ戦というフォーマットに女性の野球を掛け合わせ、ドティ・キット姉妹のドラマ、戦争の現実、当時の女性の立場など、社会・仲間・家族のドラマが全て美しく詰め込まれた素晴らしい脚本でした。

次回はエドガー・ライト監督の『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』を研究します!

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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