サスペンス

映画『アメリカン・ビューティー』の解説(ネタバレ有)小さな物語を構成とすれ違い、サスペンスで傑作に昇華させる

アメリカン・ビューティー
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『アメリカン・ビューティー』。

1999年公開のドラマ映画。
監督サム・メンデス、脚本アラン・ポール。122分。

第72回アカデミー賞で作品賞を受賞した本作。

アラン・ポールが執筆した脚本をプロデューサーのブルース・コーエンがドリームワークスに持ち込んだことからスタートした本作。
サム・メンデスの監督デビュー作でもあります。

多くのシーンで登場する薔薇。
アメリカン・ビューティーと言うバラの品種でもあり、『豊かな家庭の象徴』や『官能の象徴』と、様々な意味が込められています。

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映画『アメリカン・ビューティー』が観られる配信サービス

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。

配信状況

サービス配信状況配信種別
U-NEXT定額 ※1
Prime Videoレンタル ※2
NETFLIX×
Hulu定額 ※1
Disney+×
TSUTAYA DISCAS ※3定額 ※1

※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
※4 Prime VideoのスターチャンネルEXは、別途月額利用料が発生します。

この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT

U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。

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映画『アメリカン・ビューティー』のヒーローズジャーニー

それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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日常世界

シカゴ郊外に住むバーナム一家。

妻・キャロリンへの愛は薄れており、娘のジェーンは典型的なティーンエイジャーで、反抗期だ。レスター自身も人生の敗北者と悟っているが、また充実感を取り戻せると思っている。

だが、一年後に彼は死ぬようだ。

冒険への誘い/冒険の拒否

ジェーンの同級生・アンジェラに一目惚れするレスター。
ジェーンはそれを感じとり、気持ち悪がる。

アンジェラは男の欲に満ちた視線に気づき、将来モデルになれると自信を持っている。

隣家にフランク大佐とその息子・リッキーが引っ越してくる。
ビデオカメラが趣味のリッキー、ジェーンを撮り始めるが、気持ち悪がるジェーン。

賢者との出会い

レスターはアンジェラとの妄想にひたる。

戸口の通過

アンジェラはレスターが筋肉質になれば寝てもいいとジェーンに話し、それを盗み聞きしたレスターは早速筋トレを始める。

試練、仲間、敵

筋トレしているレスターを盗撮するリッキー。
リッキーはマリファナの売人であり、レスターはマリファナを買う。

最も危険な場所への接近

自信を取り戻し、本音を出して生き始めたレスター。
キャロリンは不倫を始める。

本当はリッキーに惹かれていたジェーン、二人はキスをする。

最大の試練

レスター一家での夕食。
レスターは本音を家族にもぶつけ始める。うんざりするジェーン、キャロリンとも喧嘩する。

報酬

ジェーンが恋人だと大佐に伝えるリッキー。
キャロリンはストレス発散に銃の射撃を始め、銃を買う。

帰路

レスターの死ぬ日が始まる。

リッキーがレスターと恋人になっていると勘違いしてしまう大佐。

キャロリンは不倫がレスターにバレてしまい、別れる。
絶望するキャロリン。

アンジェラがレスター家に泊まりにくる。

復活

大佐はゲイと勘違いし、リッキーを殴りつける。
家出を決意するリッキー、ジェーンを誘い、ジェーンも家出を決意する。

大佐はゲイだと思っているレスターにキスをする。
動揺するレスター、大佐は去っていく。

ジェーンとリッキーと喧嘩し、ショックを受けたアンジェラ、レスターが慰め、二人はキスをする。
セックスしようとした時、処女だと告白するアンジェラ、レスターは行為をやめ、アンジェラに優しくする。

宝を持っての帰還

人生に充実感を持ったレスター、大佐に殺される。

映画『アメリカン・ビューティー』のテーマ

物語によく用いられるテーマとして、『中年の危機』というジャンルがあります。

人生が安定してきて残りの人生が終わりまで予想できてしまう中年になってくると、このままでいいのだろうか、何かやり残しがないのだろうか、自分の人生はこんなものなのだろうか、と自分に問いかけてしまうもので、現実にもよくある普遍的なテーマです。

この映画も例外ではなく、

人生の充実を取り戻す

これがテーマです。

人生を取り戻す手段として『娘の同級生に恋してしまう』と言うモチーフを使っているわけですね。

映画『アメリカン・ビューティー』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。

下着姿のジェーンを映すビデオカメラの映像。
レスターの不満を話し、殺す提案を受け入れる。レスターのナレ。
一年以内に自分は死ぬとつげる。
レスターのルーティーン。
バラを摘むキャロリン。
隣人のゲイカップル。
キャロリンとの夫婦生活に疲れたレスター、ジェーンは反抗期だ。
カバンをぶちまけるレスター。人生の何かを失ったが、まだ取り戻せると信じている。

改めて文字に起こすと、このたった5分の映像にこの映画の必要な情報が全て詰め込まれいて凄いですね。

オープニングのジェーンの殺人依頼と、ナレーションでレスター自らが死ぬと話す。
この2段階のヒキで観客を釘付けにさせます。

物語自体は中年男性が若い子に恋するだけの単純なよくあるストーリーですが、主人公はどうやって死ぬのか?というサスペンスと、バラをモチーフにした性的な世界観、魅力的なセリフの数々、勘違いが勘違いを生む展開。
これらの技術がこの映画を傑作に仕上げています。色のない世界にポツンとある赤い薔薇が嫌でも目を惹きますね。

レスター家の夕食のシーン。
これからも何度も使われるシーンで、それらは対比することでキャラクターの変化を表すことができます。一度目はBGMの伏線と崩壊した家族を説明。

レスターとジェーンが会話している時に突然のビデオカメラ。
冒頭にもあるので、このビデオカメラを持つリッキーが今後どのように絡んでいくのか、リッキーの初登場シーンにビデオカメラを使うことでかなり強く印象付ける方法になっています。

この映画は群像劇に近いスタイルなので、キャロリンの仕事シーンも必要ないですが、キャロラインのキャラクターを魅せるシーンになっていますね。

アンジェラに恋してしまうレスター。
これが第一ターニングポイントです。

この一目惚れするシーンも監督の個性が溢れていてとても良いですよね。
直後にアンジェラと話すレスターの演技も絶妙な気持ち悪さで素晴らしいです。

第二幕

ジェーンとリッキーが初めて出会う。

暴言を吐きながらリッキーを気にして微笑むジェーン。矛盾した行動が魅力的なキャラクターを生みます。

続けてリッキー家の食卓へ。
短いシーンで不思議な母親と保守的な海軍大佐の父親が見事に描かれています。ベーコンとゲイカップルの小道具を使うことで違和感なく説明できるんですね。

学校で初めてジェーンとリッキーが会話するシーン。
そのオチでアンジェラの「一度もこっちを見なかった!」というセリフ、最高にアンジェラを表していて素晴らしいですね。

リッキーとレスターが初めて会話するシーンでも、一気に二人をマリファナの関係にまで持っていく。
この速さが凄いです。

鏡越しにジェーンを撮るリッキー。
まだ本音を直接映さず、鏡越しにしか見せないわけですね。

複雑なジェーンとは違い、レスターは単純明快。
筋肉がつけば寝てもいいと言うアンジェラの言葉を鵜呑みにして筋トレを始めます。

その夜、しごいていることキャロリンに気づかれますが、開き直って心のうちを全てぶちまける。ぶちまけることに快感を覚えるレスター。

レスターが変わった瞬間ですね。

キャロリンは不倫を始め、ジェーンはリッキーとの関係が深くなっていく。

中盤にさしかかり、物語が複雑になっていきます。
夕食での夫婦喧嘩のシーンでは『豊かな家庭の象徴』である薔薇が置かれてないですね。

大佐がリッキーに棚を開けたことを激怒するシーン。

ジェーンがガールフレンドと知りますが、この時の大佐の反応はラストを見た後で振り返ると、リッキーにガールフレンドがいたことに対するのかリッキーはゲイではないとわかったことなのか、二つ考えられますね。
答えは分かりませんが、自分はゲイの方ではないかと思います。

冒頭の映像はジェーンとリッキーのやりとりと分かり、キャロリンは銃の射撃を始める。

ラストに向けて、レスターはどういう死を迎えるのか?と言う問いに対し観客は答えを予想しながらどんどん期待感を高めていきます。

『レスターの死ぬ日が始まる』……これが第二ターニングポイントです。
第二ターニングポイントは主人公自らの意志で決断することが多いですが、今回は例外ですね。

第三幕

三幕に入り、大佐とゲイに関するサブストーリーが再び始まる。

レスターの映像を見てしまう大佐。
レスターとリッキーを覗き見する大佐。
大佐の勘違いに合わせて家出を決意するリッキーといいその後の大佐とレスターの会話といい、まるですれ違いコントのように最悪な方向へと向かっていってしまいます。

リッキーはレスターの賢者ではないかと思われますが、最初に出会った頃はバイトを簡単に辞めるリッキーをヒーローと称えますが、リッキーがレスターの家を訪れるシーンではレスターがリッキーに攻撃的になれとアドバイスしています。

レスターも仕事を辞めますがリッキーの行動を参考にしているわけでもなく、リッキーを目標にしているわけではないので賢者という立場ではないのかなと思います。

リッキーに対するリアクションでレスターの変化を見ることができますね。

ゲイだった大佐、処女だったアンジェラ。
嘘は最後の最後まで取っておくと効果が絶大ですね。

自分の人生を取り戻し、幸せの中で殺されるレスター。
壁に飛び散った赤い血がまるでバラのようです。

人生の敗北者だった男が世界の美しさに気づき、勝者となって去っていきました。

さいごに

性的で個性的な世界観と、綿密に決められた構成。何より無駄なやりとりがなく、ほとんどが対立するかキャラクターを表しているセリフが素晴らしい映画でした。

次回は『デーヴ』を研究します!

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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