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映画『バックドラフト』の解説(ネタバレ有)壮絶な火災現場を舞台にした兄弟ドラマの傑作エンタメ映画

バックドラフト
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『バックドラフト』です。

1991年公開のスリラー映画。
監督ロン・ハワード、脚本グレゴリー・ワイデン。137分。

主演を演じたのはウィリアム・ボールドウィンですが、他の候補にはトム・クルーズ、ジョニー・デップ、マット・ディロン、ヴァル・キルマーなども挙がっていたそうです。
当時まだ無名だったキアヌ・リーブス、ロバート・ダウニー・ジュニア、ブラッド・ピットなどもスクリーンテストを受けたようで、みんな若手時代はいろいろ苦労していますね。

またウィリアム・ボールドウィンは同時期に『テルマ&ルイーズ』に出演する予定でしたが、脚本を読んで「この役は絶対に自分が演じたい」と思い、『テルマ&ルイーズ』を降板。
その降板した役をブラッド・ピットが演じることになり飛躍していったので、世の中面白いものです。

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映画『バックドラフト』が観られる配信サービス

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。

配信状況

サービス配信状況配信種別
U-NEXT定額 ※1
Prime Video定額 ※1
NETFLIX×
Hulu×
Disney+×
TSUTAYA DISCAS ※3定額 ※1

※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
※4 Prime VideoのスターチャンネルEXは、別途月額利用料が発生します。

この記事の情報は、2024年1月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

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映画『バックドラフト』のヒーローズジャーニー

それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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日常世界

少年時代、消防士の父を火災事故で亡くしたブライアンと兄のスティーブン。その瞬間に立ち会ったブライアンは写真を撮られ、全米に知られる存在となった。

冒険への誘い

一度は挫折したものの、再び消防士となったブライアン。友人のティムと共に現場に配属予定だ。

冒険の拒否/賢者との出会い

ちょうど火災がおき、現場に向かうブライアン。スティーブンが消化作業をしていた。兄とは違う部署を希望していたブライアンだが、スティーブンの策略で兄の分隊に配属されることになる。二人の仲はよくない。スティーブンはブライアンには消防士ができないと思っているが、ブライアンは絶対になると固く決意している。幼馴染のジェニーと再会するブライアン。

戸口の通過

仕事初日、いきなり火災現場に向かうブライアン。

試練、仲間、敵

過酷な火災現場で消化作業をするスティーブンたち。ブライアンは空回りしてしまい、スティーブンの指示も聞かずみっともないミスをする。

不穏な爆発事故が起き、ドナルドが調査を始める。現場では市議会議員の方針で人員削減が進んでおり、スティーブンらは市議会議員に怒りを募らせている。

ブライアンは議員にドナルドの仕事を手伝うように打診されるが、現場の仕事がしたいと断る。

最も危険な場所への接近

訓練でスティーブンと張り合うブライアン。子供の頃から自分のことを下に見ているスティーブンに不満を募らせているブライアン。

最大の試練

火災現場で子供が取り残されている。救出に向かうスティーブンとブライアン。スティーブンは決死の覚悟で火の海に突っ込んでいく。ついて行こうとするが、怖気づくブライアン。子供を救出するスティーブン。ブライアンはスティーブンを認め、消防士を辞める。

報酬

ドナルドの仕事を手伝うブライアン。再び爆発事件が起きる。ジェニーと親密な関係になる。

帰路

再び爆発事件が起き、ティムが巻き込まれ重体になる。スティーブンのミスだと責め、対立するブライアンとスティーブン。議員が事件に関わっていると気づくドナルド。ブライアンは議員と仕事をしているジェニーに議員の調査を頼むが、断られる。が、議員を不真に思ったジェニーはブライアンに資料を渡し、二人は別れる。議員の家を訪れるブライアンとドナルド、議員を殺そうとしていた犯人と遭遇する。犯人は逃げ、ドナルドは重傷を負ってしまった。

復活

刑務所に囚われていた危険な放火魔に手がかりを探るブライアン。犯人は消防士だと気づく。スティーブンを疑うブライアンだったが、犯人は古くから分隊に所属していたアドコックスとブライアンとスティーブンは気づく。

火災現場でアドコックスに迫る二人。アドコックスは人員削減の裏で金儲けをしていた議員たちを許せなかったのだ。火災はさらに広がり、アドコックスとスティーブンは死んでしまう。分隊の名誉のため、アドコックスのことは秘密にすると約束するブライアンとスティーブン。

宝を持っての帰還

議員に追求するドナルドとブライアン。ブライアンは兄の分隊に再び戻り、消防士となって仕事をする。

映画『バックドラフト』のテーマ

消防士とは偉大な仕事だ

これがテーマです。

命をかけた過酷な火災現場で仕事をする消防士たちの凄さ・感謝の気持ちを土台にし、その上にブライアンとスティーブンの兄弟のドラマ、謎の爆発事件というミステリー要素を乗せています。

兄弟ドラマとミステリー要素、一般人の知らない世界である消防士という職業、火災現場の緊張感などを使い物語を楽しませるエンタメでありながら、最も大事な消防士の偉大さを伝える。

絶妙なバランスで成り立っている映画だと言えます。
さすが名監督ロン・ハワードですね。

映画『バックドラフト』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
消防署の中を探索する少年ブライアンと兄のスティーブン。父デニスの出動についていくブライアン。子供を救出するデニスに感銘を受けるブライアン。だが、デニスは事故に巻き込まれ亡くなってしまう。

消防士がモチーフの映画なので、消防署の中からスタート。音楽からも重厚な映画を思わせます。ブライアンとスティーブンの会話から、二人は兄弟という関係をすぐに説明していますね。また、父のデニスはスティーブン役でもあるカート・ラッセルが演じています。

出動していくデニスたち。消防車が出ていくシーンの中央には明らかに十字架が表現されています。事故にあった直後のブライアンを写真に撮るアイディア、この後の展開にも繋がっていく行動ですが、人の死すらネタになるという現実を見せつける残酷なシーンにも思えますね。

大人になり、バーで飲んでいるブライアン。店主との会話でブライアンのこれまでの経歴を説明。消防士になることを一度は挫折したという設定はブライアンの弱さを表しています。

直後に爆発シーン。主人公の知らないところですでに悪役は始まっているというサスペンスやスリラーでは定番の物語の始まり方ですね。

爆発現場でスティーブンと会うブライアン。スティーブンは消防士の体調、ブライアンとスティーブンの現在の関係、ドナルドの登場など、物語に必要な情報を次々と説明していきます。火災現場でタバコを吸いながら登場するドナルドは他のキャラクターとは違う存在だと印象付けていますね。

続いてスティーブンの家を訪れるブライアンのシーン。ブライアン視点でスティーブンの状況を説明していき、同時にアドコックスからもらった備品の伏線も張っています。火災現場ではなく落ち着いた状態で二人の対立を描き、二人の関係をより強調させています。

『消防士としての仕事が始まるブライアン』これが第一ターニングポイントです。
しっかりと初日に遅刻させていますね。

第二幕

ブライアンにとっても観客にとっても初めての火災現場・消火活動。

命懸けの壮絶な環境だということを見せつけるようなシーン・演出になっています。そんな状況だからこそ、決して仲間を見捨てないスティーブンのキャラクターをはっきり描くことができますね。その対比で、恥ずかしい失敗をするブライアン。まだまだ一人前には程遠い主人公です。

新たに議員が登場し、ジェニーの職業、爆発事件はただの事件ではないと観客に印象付け、さらに消防士の人員削減、現場にいるスティーブンたちは怒りが溜まっていると説明。

ランチで演説するアドコックス。アドコックスは昔からブライアンたちを知っている古株、ブライアンはすでに同僚からマネキンをいじられているため、このシーンは物語に関わらず不要なシーンかもしれませんが、今後もあまり登場しない真犯人のアドコックスを印象付けるシーンになっていますね。ただそれだけのシーンで終わらせず、ニュースを使って爆発事件の情報も加えています。

退職パーティーのシーン。ブライアンをバカにした男を殴るスティーブン。その後の眠りにつく間際のスティーブンの呟きでスティーブンの本音の部分、兄弟を誇りに思っている・誰からも信頼されていないと気づき、悩んでいるが自分ではどうしたらいいかわからないということが垣間見えます。強さだけではなく弱さも描くことでキャラクターに深みが増しますね。

少し物語が落ち着いたところでモンタージュ。消防士の訓練や様々な仕事を見せます。この時に流れる歌はいい雰囲気のメロディーですが、消防士は仲間の誰かが死んでも仕事を続けていかなければならないというとても残酷で悲しい歌詞になっています。

訓練を使って再びブライアンとスティーブンを対立させてから、次の火災現場のシーンで自分はスティーブンにはなれない、ブライアンが消防士を諦めるという展開に繋げています。フリをして落とす。漫才にもある王道のやり方ですね。間違いありません。

ドナルドの仕事が欲しいとジェニーに電話をし、その後電話を投げるブライアン。悔しいという気持ちを持ちながらも逃げてしまう矛盾を抱えています。映画のおよそ半分が過ぎても、主人公はまだまだ未熟です。

二度目の爆発事件。
最初のシーンは観客を驚かせて惹きつけることに重点を置いていましたが、このシーンはドアの下や爆発する瞬間を見せることで最初のシーンより手がかりを見せます。事故ではなく事件のようだ、どういう事件なのかミステリー要素が散りばめられ、観客は最初とは違う形で惹きつけられますね。丁寧に現場検証をするドナルドが臨場感やリアリティを出しています。

船上パーティーに出席するブライアン。嫌っていた政治に利用され、そのシーンのうちに仕事に向かう消防車。対比を使ってブライアンをいじめていますね。主人公はいじめればいじめるほど後に効いてきます。

続いて高層ビルの火災に向かうスティーブンたちとラブシーンのブライアン。ここでも対比を使い、最後にうまい具合にブライアンとティムの事故を鉢合わせて大きなドラマを作っています。17分隊が高層ビルについた瞬間や、病院のシーンの最初にアドコックスを映しているので、この時点で犯人はアドコックスだとわかる人にはわかりそうですね。議員の間違いもあからさまなので、ここからはミステリーよりサスペンスの方向へと移行しています。ティムが救急車に送られるシーンや病院のシーンでも、スティーブンを擁護したり守る人が誰もおらず、仲間は黙って見ているだけ。スティーブンが孤立していることを見せ、犯人がスティーブンかもしれないことも匂わせています。

ジェニーに議員の資料を頼み、対立するブライアン。スティーブンもヘレンと一度は関係が復活するものの、再び離れてしまいました。二人ともラブストーリーの面で帰路を迎えています。

議員の資料をブライアンに渡すジェニー。このシーンでジェニーは退場となりますが、ジェニーは議員の悪事を暴く役割のために作られたようなキャラクターですね。ジェニーとの恋愛によってブライアンが成長するということはありませんでした。

ドナルドが大怪我をし、一人で犯人を探し始めたブライアンは刑務所に囚われていたロナルドの元へ向かう。凶悪犯に事件解決のアドバイスを求める展開は『羊たちの沈黙』と同じです。しかし、凶悪犯の造形は頑張っているものの、レクターとは比べものになりませんね。

ブライアンは背中の傷でアドコックスが犯人とわかるわけですが、議員の家でアドコックスと格闘しているためにブライアンとは会わないようにするのではないか(ブライアンと気づかなかったのは無理がある)、背中の傷はコンセントの形とはっきりわかるので、そこも隠そうとするのではないか、と少しご都合な展開ですね。

『スティーブンとアドコックスを追いかけに火災現場に向かう』これが第二ターニングポイントです。

第三幕

犯人が誰かわかったものの、最後にスティーブンを信じるか否か、兄弟のドラマを決定づける障害を第三幕で解決していきます。最後の舞台が火災現場というのも当たり前ですがしっかりと設定されています。第三幕はアクションシーンが中心ですね。

クライマックスはブライアンが消防士として活躍し、スティーブンを救助。しかしスティーブンは亡くなってしまいます。二人はアドコックスの真実を隠すことを約束しますが、それでいいのか?と正直思ってしまいますね。自分はよくないとは思いますが。

議員を追い詰めるシーンでの反復台詞、新人の装備を整えるブライアンの反復シーンで綺麗にまとめ上げ、映画は終わります。

さいごに

消防士をモチーフに、命をかけた火災現場・兄弟のドラマ・ミステリー要素を駆使し、観客をしっかりと楽しめるように作りながら消防士は素晴らしい仕事だと伝える。とても良い映画でした。

次回もロン・ハワード作品、『ビューティフル・マインド』を研究します。

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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