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映画『ダーティハリー』の解説(ネタバレ有)腐敗した世の中で貫く正義

ダーティハリー
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『ダーティハリー』です。

ダーティハリー

1971年公開のアクションサスペンス映画。
監督ドン・シーゲル、脚本ハリー・ジュリアン・フィンク、R・M・フィンク、ディーン・リズナー。102分。

それまでB級映画監督とされていたドン・シーゲルとマカロニ・ウェスタンの役者としか思われていなかったイーストウッドがタッグを組み、ダーティーヒーローの典型を作り上げた作品。

この作品でドンは1970年代のアクションを牽引し、イーストウッドは最大の当たり役、スターの仲間入りとなりました。

元来は狩猟用の大型拳銃を自在に操るキャラハンは、今でもモチーフになるほどの強烈な印象を与えますね。

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映画『ダーティハリー』のヒーローズジャーニー

それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。

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※この記事の情報は、2023年2月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

日常世界

サンフランシスコ警察の刑事、ハリー・キャラハン。

冒険への誘い

プールで女性がライフルで殺され、狙撃場所に向かうハリー。スコーピオンと名乗る凶悪犯から、身代金を払わなければ毎日殺すとメッセージが残されていた。

冒険の拒否

市長は身代金の支払いを拒否する。

賢者との出会い

銀行強盗事件を解決したハリー、病院で治療を受ける。ハリーの妻については禁句のようだ。

戸口の通過/試練、仲間、敵

新たな相棒としてチコと組まされるハリー。スコーピオンは身代金の支払いを拒否されたことに怒り次の標的を狙うが、警察に見つかり逃げていく。

スコーピオンは黒人の少年を殺し、次は神父を狙う。見張りをしていたハリーがスコーピオンを見つけ追いかけるが、仲間が撃たれ、逃げられてしまう。

最も危険な場所への接近

少女を人質に増額した身代金を要求するスコーピオン。市長は従い、受け渡し役はハリーになる。何もするなと言われるハリー。

最大の試練

スコーピオンに襲われるハリー、チコが助けてくれる。ハリーに足を刺され逃げるスコーピオン。スコーピオンを独断で捕まえようとしたハリーは問題となっている。

報酬

足の治療をしたスコーピオンの情報を得て、スコーピオンの家に向かうハリー。スコーピオンを逮捕する。

帰路

しかし不当な捜査と判断され無罪としてスコーピオンは釈放される。チコはこれを機に警察をやめると決めた。ハリーの妻は酔っぱらいに轢かれて死んだと話す。

スコーピオンはスクールバスをバスジャックし、身代金を要求する。

復活

凶悪犯を殺さずに再び身代金を渡して解決しようとする警察に怒るハリーは独断でスコーピオンを捕まえに向かう。スコーピオンを殺すハリー。

宝を持って帰還

警察バッジを池に投げ捨てるハリー。

映画『ダーティハリー』のテーマ

この映画の最初のセリフは、ハリーの『ジーザス』。

意味は『クソ』『ちくしょう』と捉えますが、この世の中を表しているのでしょう。

凶悪犯スコーピオンだけではなく、銀行強盗や自殺未遂など世の中にはひどい事件ばかり起きています。
自殺しようとしている男と話す時の、巻き込まれて死んだ仲間の話は嘘ではなくハリーの実体験なのでしょう。そしてハリーの妻も理不尽な死にあってしまいました。

いくら解決しても次から次へと事件は起きていく。それでもハリーは自分でもわからないまま仕事をし、凶悪事件を解決していきます。

腐敗しきった世の中でどう自分の正義を貫くか

どんな悪人でも人権があり、もはや法律や倫理の枠では正義が貫けない複雑な世界となってしまった現代。

その中でハリーは周囲からなんと言われようと、たとえ法から外れようと徹底的に悪を倒すために生きているのです。

映画『ダーティハリー』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーともう一つ大切な要素、『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。サンフランシスコ警察殉職警官記念碑。星形の警察のマーク。

プールを泳ぐ女性を狙うライフル。スコーピオンが撃ち殺す。刑事ハリーが現場にやってくる。向かいのビルの屋上を見上げる。そのビルに向かうハリー。屋上で空の薬莢とスコーピオンからのメッセージを見つける。

この映画では一貫して『上下関係』『水』『十字架』が意図して扱われています。その点に注意しながら見ていきましょう。

セリフのないまま次々とシーンが変わっていきますが、ハリーの行動の意味がわかっているのでとてもスムーズですね。ハリーが現場に来た時も階段を登るという上下の動き。殺された場所はプール、向かいのビルを見上げる、屋上では下をのぞく、汚水が流れている、メッセージが貼られていたアンテナは十字架の形。オープニングだけでもたくさんの要素が散りばめられています。

警察の記念碑から、ライフルの銃口。丸い形から丸い形へとシーンを繋げると同時に、この映画では警察とスコーピオンの戦いが描かれると観客はすぐにわかります。

続いて市長と警察幹部が話すシーン。メッセージの内容でスコーピオンの凶悪性、市長の対応、市長に対するハリーの態度でハリーのキャラクターがわかります。ハリーと警部補が交互に話すことで対比となり、よりわかりやすく強調されていますね。最後にハリーは悪人を殺すことを厭わない性格だと印象付けます。

続けて銀行強盗を解決するハリー。ハリーが大型拳銃を相棒に、優秀な刑事だということがわかりますね。ここでも水道管が壊れ水が吹き出しています。そして伏線となるセリフ。

ヘリコプターで警察署に着くハリー。ヘリコプターや上空からの映像が多いのも画面に上下関係を作るためですね。

チコが新たな相棒となり、スコーピオン事件の捜査を始めるハリー。これが第一ターニングポイントです。

第二幕

教会前の広場。屋上へカメラがズーム。標的を見つけ、狙うところを警察のヘリコプターに見つかるスコーピオン。新聞記事を破ることでスコーピオンが次の犯行をするとわかります。このシーンにも当然上下関係の構図があり、教会の前はもちろんライフルのマークも十字ですね。

夜の街でスコーピオンを探すハリーたち。夜の街の人間を全員逮捕したいというセリフ、家の中をのぞいて調べるなどハリーのキャラクターが表れています。投身自殺する事件も、自然と上下のカメラワークになりますね。

夜の教会で監視するハリー。ここでもジーザスと書かれたネオンがはっきりと映し出され、高低差のある場所で銃撃戦を描いています。身代金の受け渡し場所も水の近くのヨットハーバーで始まり、最後は巨大な十字架のある公園。徹底してますね。

令状を無視しスコーピオンを捕まえるハリー。最後のスタジアムの全景はやはり上からの映像であり、霧のようなもやも水を連想、スタジアムの白いラインで十字架も書かれていますね。スコーピオンの傷を踏むハリーは、もう法律の枠から外れ自分の正義の道に進もうとしていますね。少女の遺体の場所も、やはり川の近くでした。

ミランダ警告がないために不当な逮捕となった展開や、劇場型犯罪と言われる警察やマスコミを利用するスコーピオンなど、当時のアメリカの世相を反映したプロットになっていますね。時折映像がドキュメンタリータッチになるのも臨場感を与えます。

チコの彼女と階段を降りながら話すシーンも上下の動きで映していますね。このシーンが唯一ハリーのプライベートが垣間見える内容となっています。

スクールバスをジャックしたスコーピオン。市長の電話でスコーピオンのメッセージをハリーとともに観客にも説明しています。

引き渡し役を拒否し、ハリーは単独でスコーピオンに戦いを挑む。これが第二ターニングポイントです。

第三幕

バス車内で子どもたちに無理やり歌わせるスコーピオン。まさに狂気です。ハリーを見つけた時のスコーピオンの『ジーザス』というセリフも皮肉ですね。

ラストは採石場での銃撃戦。上下関係、最後の池、十字で池に飛び込んでいくスコーピオン。オープニングの記念碑の警察バッジからのプールで殺される女性とサンドイッチする形で、池で死ぬスコーピオンからの警察バッジを投げ捨てる。さらに反復セリフの回収という素晴らしいラストです。

さいごに

隙のない構成に、綿密なハリーとスコーピオンのキャラクター。
一貫したモチーフを持った映像。全てにおいてハイレベルな映画でした。

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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