映画『ジャガーノート』の解説(ネタバレ有)勝利とは。虚しく響くチャンピオンの拍手。

こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『ジャガーノート』です。

1974年に公開されたサスペンス映画。
監督リチャード・レスター、脚本リチャード・アラン・シモンズ。111分。
監督のリチャードは『スーパーマン』シリーズも代表作として知られています。
クライマックスに今ではよく見る「爆弾を解除するのは赤か青か?」と選択を迫る手法はワイヤージレンマと言われ、この作品が発明したものです。
映画『ジャガーノート』のヒーローズジャーニー
それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
残念ながら『ジャガーノート』は、U-NEXTやPrime VideoなどのVODサービスでの配信がされていません。
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日常世界
豪華客船ブリタニック号が出航する。海は大荒れの予想だ。
冒険への誘い
ジャガーノートと名乗る男が爆弾を設置し、大金を要求する。爆弾処理班のファロンと弟子のチャーリーが呼ばれる。
冒険の拒否
金を渡すことは絶対に許さないと話す政府の役人。
戸口の通過
ファロンら爆弾処理班が降下し、ブリタニック号に乗り込む。荒れる海で船員と隊員の3人が犠牲となる。
試練、仲間、敵
ドラム缶のなかにある爆弾を調べるファロンたち。船長は乗客に全てを説明する。警察は怪しい人物をリストアップし、しらみつぶしに犯人を探す。
最も危険な場所への接近
試しにドラム缶に穴を開けようとするファロンたち。
最大の試練
穴を開けている最中、少年とボーイが爆弾に近づいてしまう。装置を止めようとするが爆発してしまい、ボーイと隊員が犠牲となる。
報酬
ファロンが先に解体し、続いてチャーリーが解体するという命懸けの方法を始める。
乗客たちは死を受け入れ、ダンスを楽しむ。
帰路
爆弾の罠と不運が重なり、チャーリーが爆死してしまう。
犯人逮捕のために大金を渡す警察。金を受け取りに来た男を捉えるが、犯人ではない。
ジャガーノートは取引中止を連絡する。
復活
チャーリーを失った悲しみから立ち上がり、再び爆弾解除に挑むファロン。似たような爆弾を見たことがあると話し、それをきっかけにファロンの元上司の男を逮捕する警察。
最後の爆弾解除のワイヤー、赤か青のどちらかを尋ねるファロン。ジャガーノートの嘘を見抜き、爆弾を解除する。
宝を持って帰還
歓喜する乗客たち。一人酒を飲むファロン。

映画『ジャガーノート』のテーマ
『 人の死の価値とは? 』
これがテーマです。
ファロンは死など珍しくもなく、1200人の命も大したことはない。人間は宇宙のシミだと話します。政府もまた、乗客の命よりもテロに屈しない姿勢を見せています。
それに対してバニスター婦人は大切な人の命は特別という持論を展開。そしてファロン自身もチャーリーの死に深く落ち込みます。
人間はいずれ死ぬものであり常に死と隣り合わせで生きてきたファロンを通じて、死とはどう言うものかを問いかけます。
乗客たちは助かり歓喜しますが、人生の唯一の希望であったチャーリーを失ったファロン。生き残ったにもかかわらずまるで死んでしまったかのような悲しい音楽がラストに流れています。
映画『ジャガーノート』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーともう一つ大切な要素、『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。
出航するブリタニック号。
サスペンス映画でよくあるオープニングは犯人側の視点から犯行の計画や準備が描かれるシーンが多いですが、この映画は穏やかでドキュメンタリータッチなセレモニーのシーンで始まり、しばらく船内のシーンが続きます。
乗客のキャラクターの説明はもちろん、日常が描かれているので感情移入もできますし、本編の緊張感をより強調させる始まり方になっています。本作の特徴的な始まり方ですね。大きく揺れる船内も伏線となっています。揺れる船のせいでみんな食欲がないのもリアルですね。
ゆったりと何事もなく進むシーンが続いた後で、ジャガーノートの電話をきっかけに一気に緊張感が高まります。ジャガーノートも淡々と理路整然に話していて逆に怖いですね。
ジャガーノートの電話と重ねて、映像では乗客の様子と爆弾の捜索のシーンなので手早くストーリーが進みます。ゆったりしたシーンと展開の早さの緩急がとてもうまいです。
ジャガーノートの話が終わった直後にファロンの登場。爆弾処理の真っ最中のシーンなのでファロンの職業と技術がすぐにわかり、またファロンの性格と経験値の高さ、チャーリーとの関係も同時に説明されていますね。
警察・政府と軍・海運会社のそれぞれの動き・思考を会議を通じて観客に説明。それぞれの立場で代表する人間がいるため非常にわかりやすいですね。
再びジャガーノートの電話。ここでもナレーションで取引のやり方を説明しつつ、映像では逆探知し追いかける警察と同じ方法で手早く進みます。また、ジャガーノートが一筋縄では行かない犯人だと強調されていますね。
ファロンたちがブリタニック号に向けて降下する。これが第一ターニングポイントです。
荒れた海、多くの乗客、夜明けまでのタイムリミット。当たり前のようですが面白くなる設定ばかりです。
第二幕
降下シーンで3人が犠牲となる。
簡単な任務ではないことが伝わってきます。しかし仲間の死に対する感情を表に出さず爆弾を調べ始めるファロンたち。彼らには悲しむ余裕も時間もありません。それが日常です。
船長が乗客に事件を説明するシーンで、海が荒れているため乗客は逃げられないこともしっかりと説明します。解体するか犯人を逮捕するかして爆弾を解除するしかないことを明確にしています。
爆弾が生きているか死んでいるかをモニターで表示させて視覚的にわかるようにしているのも、細かいところですが大事なポイントです。
オニールと面談するマクロード。オニールもワンシーンの登場ながらいやらしい性格を表現されていて印象的です。警察に有効な探し方がないことも説明しています。
ファロンと唯一対等な立場でいることができるのは船長だけであり、二人だけで話させるのはとても有効ですね。
ファロンの最初の試みは失敗し、さらに二人の犠牲者が出てしまいます。状況はどんどん悪化。犠牲を伴いながらも進むしかファロンたちにはありません。命をかけて解体に挑みます。
仮装パーティー。
しらけたムードの始まりから、最後は踊り始める乗客たち。シーンの中で変化が生まれ、観客に気を緩ませるシーンでもあります。音楽は雰囲気を伝える有効な手段ですね。順調に解除していくファロン。鼻歌を歌うチャーリー。しかし、そこでチャーリーの爆死。サスペンス(緊張感)を緩めたところでサプライズの爆発。基本的ですがギャップを使ったシーンの組み立てです。
続けて警察の最後の頼みだった犯人に繋がる金の取引も失敗。主人公たちの状況はどん底まで落ちていきます。
ファロンがやけ酒を飲んで自分の価値観を船長にぶつけます。相手が船長だから船長もファロンと張り合い、だからファロンから引き出せたといえます。
ファロンは再び爆弾解除に挑む。これが第二ターニングポイントです。
第三幕
これまで見てきたあのファロンでさえ手が震える。それを自分の力だけで抑え、解除に挑みます。
ファロンの手がかりから犯人・バックランドを逮捕。大義名分のないただ金のための動機は逆に清々しいですね。
そして有名な赤か青かのクライマックスを迎えます。これまでの技術的な戦いから、バックランドとファロンの心理的な戦いに持っていく方法はすごいですね。二つに一つのシンプルな選択だからこそ、より強いドラマが生まれています。
勝負に勝ったファロンですが、チャンピオンの拍手は虚しく響きます。

さいごに
『豪華客船に設置された時限爆弾を解除する』シンプルなストーリーながら緊張感のあるワンシーンワンシーン。
とても素晴らしい映画でした。
次回はU-NEXT』で配信中、『がんばれ!ベアーズ』を研究します!

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