映画『風の谷のナウシカ』の解説(ネタバレ有)スタジオジブリの前身映画

こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『風の谷のナウシカ』です。

1984年に作られたファンタジーアニメ映画。116分。
原作・監督・脚本、宮崎駿。
辺境の国の姫が、王へと成長する物語。
とても素晴らしく、面白い映画です。
しかし、観終わったあとに「楽しい」とも「感動した」とも僕は思えません。
この映画の世界が現実世界の未来に見えてしまうからです。
映画は、原作漫画の第2巻の途中までを脚色して作られています。
原作はより深く、壮大にナウシカを描いています。こちらも是非読んでみてください。
映画『風の谷のナウシカ』のヒーローズジャーニー
それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
ジブリ作品は残念ながら、U-NEXTやPrime VideoなどのVODサービスでの配信がされていません。
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日常/賢者との出会い
人に死を招く瘴気を放ち、王蟲などの巨大な蟲が住んでいる腐海という森が出現・拡大し、人間は徐々に住む場所をむしばまれている世界。
辺境の国「風の谷」のナウシカは、自然と寄り添い生きていた。
ナウシカの師・ユパが風の谷を訪れる。
冒険のへのいざない
風の谷にトルメキアの大型船が墜落する。
囚われていたペジテの姫から、死の間際に積荷を燃やすように伝言を受けるナウシカ。
冒険の拒否
トルメキアの姫・クシュナが軍を率いて現れ、風の谷を制圧する。
住民たちも捕らわれるが、ナウシカは従うように皆に話す。
戸口の通過
積荷は巨神兵という旧世界の兵器であり、巨神兵を復活させる準備をしているトルメキア軍。
ナウシカと人質たちはクシュナとともにペジテに連れていかれる。
試練、仲間、敵
その道中、ペジテのアスベルがナウシカたちを襲撃し、トルメキアの船は墜落する。
脱出するナウシカと人質たち、クシュナ。
最も危険な場所への接近
腐海の深部に不時着するナウシカたち。王蟲などの虫の怒りに気づいたナウシカは、脱出の準備を指示し、王蟲を追いかける。
最大の試練
アスベルが蟲を殺しながら逃げている。
ナウシカが助けるも、蟲の攻撃に気絶してしまい、アスベルとともに腐海の底に落ちてしまう。
報酬
腐海の底は瘴気がなく、きれいな砂と水が生まれていた。
腐海は身を犠牲にして世界を浄化する役割をしていると気づくナウシカ。
一方、巨神兵は徐々に育っている。
帰路
ペジテに向かうナウシカとアスベル。
ペジテは占拠していたトルメキア軍とともに、王蟲たちに襲われ崩壊していた。
生き残ったペジテの民とアスベルから、風の谷にある巨神兵を奪うため、同じように蟲に襲われる計画が始まったと聞くナウシカ。ナウシカは止めるべく飛び立とうとするが、捕まってしまう。
しかし、アスベルとペジテの女性たちがナウシカを逃がす。
トルメキア兵に襲撃されるペジテの船だが、ナウシカは想いをくみ、風の谷へ向かう。
風の谷の住民たちは反乱を起こし、酸の海にある廃船へ避難する。
復活
ユパがペジテの船に乗り込み、トルメキア軍を制圧する。
ペジテの兵は王蟲のこどもをおとりにし、王蟲の群れを風の谷に向かわせていた。
クシュナは巨神兵を復活させ迎撃させるが、早すぎる復活だったためにすぐに死んでしまう。
ナウシカは王蟲のこどもを取り戻し、群れの前に降り立つ。
王蟲の群れに弾き飛ばされるナウシカ。
王蟲の群れは止まり、彼らはナウシカを生き返らせる。
宝を持って帰還
王蟲の群れは去り、クシュナたちも帰っていく。
ナウシカと避難し生き残った住民たちは、ペジテの人々とともに生き始める。

映画『風の谷のナウシカ』のテーマ
腐海は、自然をより端的に強調した象徴です。巨神兵は、人が生み出した兵器であり、核兵器ととらえて良いと思います。
争いで世界を滅ぼし、自然を破壊した人間たちが、生き返ろうとする自然に滅ぼされたとしてもそれは報いのように思えます。
人は生きてもいいのでしょうか。滅びる運命なのでしょうか。
生き方を変えられないのでしょうか。
『 人の運命とは?
自然との共生はできないのか? 』
ナウシカはそれを追い求めます。
そしてこれは、温暖化や森林減少など様々な環境問題を抱える今の僕たちも考えなければならないテーマでもあります。
映画『風の谷のナウシカ』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーともう一つ大切な要素、『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。
腐海に包まれた村をユパが訪れます。そして「また村が一つ死んだ」とユパのセリフ。
腐海が人間の世界を脅かしていることが説明されています。
テロップが出てきますが、映画の中で文字を読ませることはとても難しいそうです。
なので、最初に映像とセリフ、続いて音楽とともに映される絵で世界を説明しています。
人間世界は腐海によって常に死の危険にさらされている不利な立ち位置なので、この世界に生きているだけですでに共感を得やすいと思います。
メーヴェで空を飛ぶナウシカ。
腐海の森の中に入っていきます。
冒頭で腐海の始まりを描き、その後育った状態の腐海、の順番で置かれています。
王蟲の眼の殻を取る行動で、ナウシカが武器の扱いに慣れているとわかります。
腐海は死を招く瘴気に包まれていると話しながらも、美しいと思っています。ナウシカは蟲や腐海は「悪」という視点だけで見ていないとわかります。
王蟲に襲われたユパを助けることで、蟲の扱いも長けていることがわかります。
さらにユパのセリフで、おそらくナウシカにしかできない能力だとわかります。
王蟲が暴れていることも、観客よりもさきにナウシカは察知しています。蟲の声が聞こえるようです。この後も、多くのシーンでナウシカは観客よりも早く異変に気付きます。
襲われている人が誰かも知らずすぐに助けに向かうので、正義感がとても強い人ともわかります。
ユパと出会い、凶暴なキツネリスのテトを、話しかけるだけでてなづけます。
映画の中で、こどもや動物に好かれる人物を観客は好印象に思います。
悪人でも捨てられた犬を拾うと好意的に思い、善人でも捨てられた犬を無視すると嫌いな印象を持つようです。なんとなくわかりますね。
ここでさりげなく気絶すると瘴気を吸わないと説明されます。
メーヴェに乗り、空を飛ぶ能力。
蟲の怒りを鎮める能力。蟲や生き物の気持ちや意思を察知する能力。
ナウシカは普通の人が持っていない能力を持っている主人公で、常に観客よりも一歩先に進んでいます。
観客よりも上位に置かれ、あこがれるような主人公として描いています。
そしてアクションシーンによって、この映画のトーンが提示されています。
映画の中で集団や組織を描く場合、その代表となるキャラクターを描く場合が多いです。
この場合、腐海の代表として王蟲が作られています。
王蟲の意思が腐海全体の意思、のようにとらえるようになっています。
王蟲の眼の色が怒ると赤くなるのも、単純ですがわかりやすいですね。
風の谷に入るユパ。
住民たちの歓迎ぶりで、ユパがどれほど慕われているかがわかります。
ジルの部屋のシーン。
ユパの旅の目的によって、この映画のテーマ「腐海の謎」「人は滅びる運命なのか」が語られ、ここで画面はナウシカの顔に合わせているので、ナウシカ自身のテーマでもあると示しています。
トルメキアの大型船の墜落シーン。
ラステルの遺言により、積荷とはなにか?というミステリー要素が生まれます。
そしてユパがミトに語る形で、積荷の正体「巨神兵」が語られます。
ナウシカのラステルに対する敬意と行動も、ナウシカの人となりを描いてますね。
クシュナ軍の襲撃シーン。
ジルの死により、ナウシカの暴走が描かれます。
ほぼ完ぺきな人物に思えるナウシカの欠点と言えます。ナウシカが超えるべき壁ですが、ここで賢者・ユパが助言を与えます。
ジルはナウシカの父であり、この国の王であり、心の支えでした。
ジルの死によって、ナウシカは自分の力で困難に立ち向かわなければならなくなりました。
ナウシカがクシュナに連れられ風の谷を離れます。これが第一ターニングポイントです。
第二幕
腐海の底のシーン。
ナウシカとアスベルが寝転がって話します。
ここまで緊張感の高いシーンが続いてましたが、ここではゆったりと落ち着いた雰囲気で見ることができます。
あらゆる映画で、焚火を囲むシーンをよく見ると思います。
緊張感の高いシーンだけだと、観客は疲れてしまいます。
なので、こういった焚火のシーンで一度リラックスさせます。ユーモアのあるシーンも同様だと思います。
そのかわりに、キャラクターの会話でキャラ同士が惹かれあったり、内面を吐露する、などの要素を含ませます。
その話が伏線の場合も多いです。嵐の前の静けさ、ですね。
ここでナウシカの回想が描かれています。
金の大地がラストの伏線になってはいますが、この回想はあまり意味をなしていないのではないかと思います。
ナウシカ自身は常に蟲を守り、尊重して生きているので、それの繰り返しになっていると思います。
ナウシカは生まれた時から蟲に対して好意を抱いているようですが、それもよくわかりません。
幼少期にナウシカ自身が蟲に対しての考え方が変わるシーンなどがよかったのでは、と思います。
ペジテの民と出会うシーン。
このシーンはアスベルが主人公となり、葛藤が描かれます。
ナウシカと親しくなったアスベルに一番つらいことを言わせ、今度はナウシカの動きを封じます。アスベルの葛藤をより強調し、アスベルに決断させます。
アスベル自身もナウシカによって変わりました。人の可能性を提示しています。
そして第二ターニングポイント。ナウシカは風の谷へ向かいます。
ペジテの民が襲われていますが、初めて見捨てます。犠牲ではなく、ペジテの民やアスベルの気持ちを尊重し、向かいます。アスベルのセリフが重いですね。
ナウシカの対立する相手がトルメキア軍、アスベル、腐海、ペジテ、王蟲の群れと次々に変わっていき、行動を要求され、物語が動いています。
そしてどれもがナウシカ自身の命や、風の谷の存続が懸かっています。面白いはずですね。
第三幕
ナウシカ自身の犠牲によって、王蟲の暴走が止まります。その後、王蟲によって生き返ります。かつてのナウシカならば怒りで暴走しそうですが、ここではしっかりと見極めて行動しています。
宮崎駿監督自身も言っていますが、クリスマスの奇跡のような映画になってしまったと話しています。確かに理屈のよくわからない展開かもしれませんね。
しかし、映画の中で答えが出るようなテーマではないと思います。
答えは現実世界の自分たちが出すべき、です。

さいごに
テーマ自体が深く、監督自身が「考えて欲しい」と願って作った映画だからこそ気軽に見れない作品でもあります。
問題提起の映画だからこそ、観終わった後に映画の内容や感じた事を人と話すことができれば、この映画が作られた意味は大いにあるなと思います。
次回は引き続きジブリ作品、『耳をすませば』を研究します。

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-fin-