映画『パターソン』の解説(ネタバレ有)穏やかで幸せな日常…しかしパターソンの詩は趣味から生きる理由へと生まれ変わる
こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『パターソン』です。
2016年公開のコメディ映画。
監督・脚本ジム・ジャームッシュ。118分。
主演のアダム・ドライバーはロサンゼルス映画批評家協会賞、トロント映画批評家協会賞で共に最優秀男優賞を受賞。
そして登場する愛犬のマーヴィンはカンヌ国際映画祭でパルム・ドック賞を受賞しました!!!!
永瀬正敏さんも出演しています。
いつもと同じ1週間。美しいシーンと詩の連続で平和だな…と思いますが、面白い映画は変化を描く物語を持っているもの。持ってしまうもの、と言った方はいいかもしれません。
もちろん今作も例外ではなくパターソンは明らかに別人へと変化しています。
映画『パターソン』が観られる配信サービス
この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。
配信状況
サービス | 配信状況 | 配信種別 |
---|---|---|
U-NEXT | ◯ | 定額 ※1 |
Prime Video | ◯ | レンタル ※2 |
NETFLIX | × | ー |
Hulu | ◯ | 定額 ※1 |
Disney+ | × | ー |
TSUTAYA DISCAS ※3 | ◯ | 定額 ※1 |
※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT。
U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。
他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。
映画『パターソン』のヒーローズジャーニー
それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。
ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!
日常世界
アメリカの街・パターソンに住む、バスの運転手をしているパターソン。
妻のローラは夢の多い女性だ。愛犬・マーヴィンの夜の散歩が日課。
賢者との出会い
詩を描くことが趣味のパターソン。
冒険への誘い/冒険の拒否
ローラは書いた詩を世に出した方がいいと話すが、気に乗らないパターソン。
戸口の通過
ローラと週末に詩のコピーをとることを約束するパターソン。また、ローラのカントリー歌手の夢のために高価なギターの通販を許す。
試練、仲間、敵
仕事をこなし、様々な人と出会い、詩を何度も描き直すパターソン。
最も危険な場所への接近
詩を描く少女と出会い、彼女の描いた「水が落ちる」という詩を聴くパターソン。
最大の試練
ローラの手作りパイをなんとか食べるパターソン。「水が落ちる」の詩を聴かせるが、ローラは最後まで聴かない。
報酬
ローラへの詩を考えるパターソン。
帰路
ローラと夜のデートに行っている最中、マーヴィンに詩の書いたノートをビリビリに破かれてしまう。
復活
ノートを失って落ち込むパターソンが散歩に出かける。
日本から来た詩人と出会い、白紙のノートをもらう。
宝を持っての帰還
「その一行」という詩を描き、日常に戻るパターソン。
映画『パターソン』のテーマ
マリーの恋人・エヴェレットがおもちゃの銃で騒ぎを起こすシーンで、エヴェレットが去り際に
『 愛を失って、
生きる理由があるか? 』
と言います。これが本作のテーマです。
パターソンはよく愛の映画と評されますが、この記事ではその逆で「ローラへの愛はそこまでではないと気づく」映画と考えてみていきます。
パターソンは次第にローラへの愛が薄らいでいく。
しかし新たに詩人へと生まれ変わるのです。
映画『パターソン』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。
神秘的な音楽とタイトル。
月曜日の字幕。
ベッドで寝ているパターソンとローラ。目覚めるパターソン。
ローラも目覚め、今見ていた双子の夢を話す。
劇中何度も繰り返されるシーンで始まります。繰り返すということは対比で変化を表現しやすいので、覚えてもらうためにオープニングに使って印象付けています。
目覚ましなしで目覚めるところなど、決まった生活を繰り返していることが想像しやすいですね。
置き時計代わりの腕時計もキャラクターらしさを感じます。
さりげなく写真やバスの模型も見せ、起きたローラが双子の夢を話します。
二人の間には子どもがいないと説明しつつ、子どもが出来ても良い関係。今後出てくる双子を見ると、ローラも思い出す。双子とローラを関連付けています。
ただの子どもではそこまで考えませんが、双子にすることで印象に残りますね。
ローラはたくさんの夢を持つ女性で、毎朝本当に見た夢を語るところも面白いです。
「月曜日」と字幕が出ることでなんとなく一週間の物語なのかな、なんて予想が着きますね。週末に近づくにつれて大きなことが起こる……と予感させます。
続いてパターソンの出勤に合わせて、朝食で見たマッチの詩のナレーション。パターソンは詩を描く、同時に職業はバスの運転手であると説明しています。
乗客の話を聞いてしまうのもパターソンの特徴ですね。
昼食。
滝が見える広場で詩を描いているパターソン。ランチボックスの個性的な柄が面白いです。そして柄や手紙を見る限り、ローラがランチを作ってくれたのは最初のこの日だけです。
後にわかる傾いたポストの謎。マーヴィンのいたずらだったというのもユーモアがあり、かわいくて癒されます。
日課であるマーヴィンの夜の散歩と、バーの紹介。
火曜日の朝。
ローラが再び見た夢を話します。
ローラはさまざまなものにデザイン・創作していきます。個性的ではありますが、あまり良いと思えるものではありません。パターソンも本心ではそう思えるような表情に思えます。
その夜、パターソンは週末に詩のコピーを取ることを約束。そしてローラに高価なギターの通販を許します。
これが第一ターニングポイントです。
大きな事件ではありませんが、一年頼み続けた詩のコピーを約束する。いつもの一週間から変化していきます。
第二幕
その夜のバーで、マリーとエヴェレットが登場。
水曜日の朝。
ローラの夢の話しはなく、起きてきてキスをして去っていきます。
このシーンから徐々にゆっくりとローラとの関係・印象が変化していきます。
パターソンとの会話の中で、ローラの「バカね」というセリフ。
「おバカさん」ではなく「バカね」と合わせて二度使われているので意図的なセリフでしょう。
そして夕食はキヌア。
パターソンはあまりうれしくなさそうです。
夜の散歩。
コインランドリーで言葉の詩人・ラッパーと出会うパターソン。
木曜日の朝。
ローラと会話するパターソン。ビールの匂いが好きと言われても、と感じてしまいます。
仕事の帰り道、詩を描く少女と出会います。
彼女の書いた「水が落ちる」という詩。パターソンはここ数日雨が降っていないにも関わらず、雨についての詩。
パターソンは日常や目の前の出来事、ローラについて詩を描きますが、この少女の詩は心や人生から出てきた詩を表しています。
そんな少女の詩に深く感動するパターソン。自分との違いを無意識に感じています。
ランチのカップケーキを戻す瞬間も見せているのも、「美味しくない」と伝えているように思えます。
その夜。
ローラは夕食にチーズと芽キャベツのパイを出します。食べるものの水で流し込むパターソン。明らかに美味しいリアクションではないと思いますが、気に入っていると勘違いするローラ。本音を言わないパターソンの優しさも表しています。
少女の雨の詩を聞かせますが、最後まで聞かずに感想を言うローラ。
ドク夫婦の喧嘩、マリーとエヴェレットの別れ騒動、ドニーの家族の問題。
サブキャラクターたちはパターソンと違ってことごとく家庭に問題を抱えています。
金曜日の朝。
一人で目覚めるパターソン。
この日に起きたバスのトラブルをローラに話すと、ローラはスマホを持つように話します。
パターソンのことを想って話していますが、直前のバーで「ローラは理解している」と話していたパターソンの考えとずれが生じています。
「火だるま」の表現も、ローラが話した時よりもドクが話した時のほうが笑っています。
繰り返しの笑いかもしれませんが、意図的に思えます。
ローラが買ったギターも「道化師(ハーレクイン)」。
土曜日の朝。
ローラに起こされるパターソン。
ローラはバーでのトラブルを聞くと、バーも危険だと話します。ローラはパターソンの意思を次々と否定しています。
カップケーキを運ばせたり、マーヴィンの昼の散歩も任せたりと都合のいいように使われるパターソン。
マーヴィンに秘密のノートを破かれてしまう。
これが第二ターニングポイントです。
第三幕
日曜日の朝。
眠れなかったパターソン。
深く落ち込んだパターソンにローラは無力です。
散歩に出かけ、日本から来た詩人と出会い、白紙のノートをもらいます。
そこに描いた最初の詩「その1行」。
最も大切なものを失ったパターソン。
目の前のことや日常ではなく、これまで積み上げてきた人生・心の底から出てきた詩。
パターソンが詩人へと生まれ変わりました。
白紙のノートをもらいペンを握ったときにパターソンに寄っていくカメラワークは、映画の中でこの瞬間だけです。
ラストシーン。
月曜日の朝。
オープニングと同じように向かい合って寝ていたパターソンとローラ。
目覚めたパターソンはローラとの会話もなく、部屋を出ていきます。
さいごに
はっきりと明確な説明がある映画ではないので憶測が多い記事になってしまいましたが、いろいろと想像できる映画なのでそれぞれの解釈で観れるのは面白いですね。
振り返ると、パターソンと出会った人は誰もローラの話をしないことも興味深いです。
次回はU-NEXTで配信中、シドニー・ポラック監督、ダスティン・ホフマン主演の傑作ラブコメディ『トッツィー』を研究します。
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