サイコスリラー

映画『サイコ』の解説(ネタバレ有)囚われた鳥、ノーマン・ベイツ。ヒッチコックの代表作にして実験的な作品。

サイコ
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『サイコ』です。

サイコ

1960年公開のサイコスリラー映画。
監督アルフレッド・ヒッチコック、脚本ジョセフ・ステファノ。109分。

第33回アカデミー賞では多くの賞にノミネート。
ゴールデングローブ賞では助演女優賞、エドガー賞映画脚本部門も受賞しました。

ロバート・ブロックがエド・ゲインの犯罪をヒントに執筆した小説『サイコ』が原作です。

ヒッチコックはシャワーを浴びていた女が突然殺されるその唐突さに惹かれ、映画化を決めたと語っています。

ジョセフ・ステファノはガス・ヴァン・サントがリメイクした『サイコ』の脚本も書いているのは面白いですね。

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映画『サイコ』のヒーローズジャーニー

それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。

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※この記事の情報は、2023年2月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

日常世界

不動産屋で働くマリオン。恋人のサムと結婚を迫るが、借金があるためサムに断られる。

冒険への誘い

仕事で預かった現金の大金を盗むマリオン。サムの元へ向かう。

冒険の拒否

車で逃走中に偶然社長と会ってしまう。車内で一泊していると警察官に職務質問されるマリオン。

賢者との出会い/戸口の通過

ベイツが経営するモーテルに泊まるマリオン。

試練、仲間、敵

モーテルの隣にある家で母親と暮らしているベイツ。厳しく病気持ちの母親でベイツは苦労しているが、施設に入れ流のはどうかと提案したマリオンに異常に反応する。

最も危険な場所への接近

マリオンの部屋を覗き見するベイツ。マリオンに惹かれている。

最大の試練

ベイツの母親に殺されるマリオン。ベイツは母親の犯行と気づき、隠蔽するためにマリオンの死体と大金があると知らずに荷物とともに沼に沈める。

報酬

マリオンの妹・ライラがマリオンを探すためにサムの元を訪れる。会社は探偵も雇っており、探偵がベイツのモーテルにたどり着く。

帰路

ベイツの母親に会いに行った探偵は、母親に殺される。探偵と連絡のつかないライラとサムは保安官を訪れるが、ベイツの母親は10年前に死んだと知らされ相手にしてもらえない。

復活

ベイツのモーテルを訪れ、調べ始めるライラとサム。ライラは母親に会いに向かい、ミイラ化した母親を見つけてしまう。母親に扮したベイツがライラを殺そうとするが、サムが捕まえる。

宝を持って帰還

ベイツの心の中には母親が入っており、母親に支配されたベイツがマリオンと探偵を殺していた。マリオンの死体と現金が入った車が沼から引き上げられる。

映画『サイコ』のテーマ

ベイツの心を作り上げたのは母親の異常な執着心でした。親に支配されたことを表現するためにこの映画にはモチーフとして『鳥』が使われています。

探偵がモーテルを訪れて宿帳を確認するシーンで、ベイツは不自然な角度から覗き込み、カメラはベイツの顔を下から捉えています。ベイツの鼻は鳥の嘴を模倣し、まるで鳥の顔かのようにベイツを撮っているんですね。母親の愛という鳥籠に囚われた鳥、ベイツ。

異常な愛に包まれた姿はまるで鳥籠にいる鳥

これがテーマです。

応接室のシーンでベイツに飛びかかろうとしている鳥の剥製はフクロウ。夜行性の鳥のフクロウが、罪を犯して夜の住人となったベイツを監視している、とヒッチコックは語っています。

映画『サイコ』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーともう一つ大切な要素、『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。フェニックスにあるホテルの一室。昼休みのマリオンが愛人のサムと情事をしていた。結婚したいマリオンだが、サムには借金があり認めてくれない。

フェニックスの街並みから徐々にクローズアップしていきホテルの一室へ。大きな視点から小さな視点へと移行していくのはヒッチコックの手法です。観客は覗き見する感覚ですね。

昼休み中、食事もしないでサムといたいマリオン。マリオンのサムへの愛の強さが表現されています。マリオンの願望とその障壁をオープニングから提示します。

職場に戻ってきたマリオン。ちなみにこのシーンで外に立っていた帽子の男がヒッチコック本人です。金で不幸を追い払えるのか?この映画のテーマっぽいセリフですね。

金を気にしながら荷物をまとめるマリオン。丁寧な描写がマリオンの不安な心情を表していますね。さらに社長と偶然会ってしまう。緊張感が増していきます。主人公を落としていく偶然は都合よく見えないものです。

警察官に目をつけられるマリオン。威圧的な警察官のアップの顔が恐怖心を駆り立てます。

動かないことが怖いですね。有機物を無機物に、無機物を有機物のように撮ることもヒッチコックの特徴です。中古車販売店で遠くから見つめる警察官の姿も同様ですね。

中古車販売店の店主も、開口一番『揉め事はいやですよ』と話します。『いらっしゃいませ』のようなつまらないセリフよりも生きている人間となり、マリオンの心を刺激する小さいですが大きなひと工夫ですね。

マリオンがトイレで現金を数えるときも、カメラはしっかりと丁寧に映します。

運転しているマリオン、心の声がナレーションで漏れてきます。果たしてマリオンは大金を手に入れ、サムと幸せになることができるのか?と観客は予想し、感情移入します。ここまでの丁寧な描写、マリオンの心の声は全て観客をマリオンの味方にし、ミスリードさせるための手法なんですね。

ベイツモーテルに泊まるマリオン。これが第一ターニングポイントです。大雨が未来を予感させます。

第二幕

最初からモーテルとベイツの家の位置関係を見せます。マリオンを食事に誘うベイツ。部屋を一号室にしたのも覗くため。すでにベイツはマリオンに惹かれています。

食事を持ってきたベイツはマリオンの部屋に入ることを躊躇う。直前の母親との喧嘩を見せているので、ベイツは母親に抗えないことを表しています。

応接室でベイツと話すマリオン。ここでもベイツをあまり動かしません。鳥の剥製のように、動かないことが怖いですね。母親に苦労しているものの、母親を施設に入れることに対して猛批判するベイツ。さらに覗き見もします。一見好青年に見えるベイツのねじれた心が怖く、同時にキャラとして魅力的ですね。

フェニックスに戻ると話すマリオン。果たしてこれまで通りの生活に戻れるのか、どんな展開になるんだろうと思っていたら、いきなり殺されてしまいます。有名なこのシーン、血に見えるものはチョコレートソースで、このシーンのためにあらゆる撮影をして7日間も費やしたそうです。

マリオンの死体を発見したベイツは、丁寧に掃除をしてマリオンの死体を沼に沈ませます。続いて妹のライラが登場し、サムと探偵とともにマリオンを探し始める。

映画の前半に描いていた『マリオンは大金を手にしサムと幸せになれるのか』という主題から、『ライラたちはマリオンと大金を見つけられるのか』、『ベイツは母親の罪を隠すことができるのか』という主題に変化します。掃除を丁寧に映すことで観客はベイツに感情移入しベイツの味方になるんですね。

車を沼に沈ませるシーンでも、一瞬車が止まるところで不安になります。早く沈んでくれ、と思ってしまいますよね。この時点でもう観客はベイツの味方になっている、ということです。これも小さくて大きなひと工夫です。

ライラとサム、探偵の会話シーンで会社の思惑と今後の展開を観客に説明。非常にわかりやすいです。

母親に扮したベイツに殺される探偵。階段をずり落ちてくるシーンが印象的ですね。

モーテルは横に広く平面的な印象、ベイツの家は俯瞰に撮り縦に長い印象を与えています。

探偵から連絡が取れず、探しに向かうライラとサム。これが第二ターニングポイントです。

第三幕

保安官を尋ねる展開は、ヒッチコックがこういう場合警察はどう動くのか、どうして主人公は警察に行かないのかという観客の疑問に答えるために作ったと語っています。

ここでベイツの母親が死んでいたことを知り、観客の主題は『ベイツは何者なんだ?何を隠している?』へ変わっていきます。

ベイツがミイラ化した死体を地下室に運ぶシーンでも俯瞰を使っています。母親の顔を映さないためですが、ベイツの背中越しに映そうとすると意図的に顔を隠そうとしていると思われてしまうかもしれないので俯瞰にしたそうです。

クライマックスとなり、ベイツが母親になり殺していたことが判明。医師によって全ての真実が明らかとなります。

心の中の半分が母親だったベイツ。普通なら役者に母親になりきった演技をさせそうなものですが、母親の声が全てナレーションでベイツは不敵に笑うだけ、というのがより怖さを引き立てているようで良いですよね。ハエも殺さないベイツ。ここでもやはり無機物となっているのです。

ラストシーン。マリオンの死体を乗せた車が引き上げられ、全ての疑問を解消し、映画が終わります。

さいごに

主人公が中盤に突然殺される、主人公が交代し前半と後半で全く別のストーリーに代わる構成、登場しない人物のナレーションで終わる、探偵が殺されるシーンのカメラワークなどなど多くの実験的技術が注ぎ込まれた映画でした。

ヒッチコック作品をもっと深く知りたい方は、ヒッチコックにフランソワ・トリュフォーが全作品をインタビューした本『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』に多く書かれているのでおすすめです。

次回もアルフレッド・ヒッチコックの代表作『』を研究します!

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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