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映画『トウキョウソナタ』の解説(ネタバレ有)食べることは生きること。

トウキョウソナタ
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『トウキョウソナタ』です。

トウキョウソナタ

2008年公開のドラマ。
監督黒沢清、脚本黒沢清、マックス・マニックス、田中幸子。119分。

第61回カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞など多くの賞を受賞しました。

最後の『月の光』を弾いたのは高尾奏ノ介氏で、当時12歳だったそうです。凄い演奏でした。

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映画『トウキョウソナタ』のヒーローズジャーニー

それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

合わせて読みたい
『ヒーローズジャーニー』とは。物語の王道法則から読み解く映画研究
『ヒーローズジャーニー』とは。物語の王道法則から読み解く映画研究

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。

残念ながら『トウキョウソナタ』は、U-NEXTPrime VideoなどのVODサービスでの配信がされていません。

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日常世界

平凡な4人家族・佐々木家。

冒険への誘い

竜平がリストラされる。専業主婦の妻・恵には言い出せない竜平。

冒険の拒否

ハローワークで仕事を薦められるが断る竜平。

賢者との出会い

健二がピアノ教室を見つける。

戸口の通過

同じ失業中の黒須と再会する竜平。親に黙ってピアノ教室に通い始める健二。

試練、仲間、敵

黒須から色々と失業中のアドバイスを受ける竜平。

最も危険な場所への接近

妻に失業がバレていないか心配する黒須。黒須の頼みで会社の同僚のふりをして夕食をご馳走してもらう竜平。

最大の試練

黒須夫婦は自殺してしまい、ショックを受ける竜平。

長男の貴は米軍に入りたいと話し、竜平と大喧嘩する。貴から家族のために何をしているのかと問われ、何も言い返せない竜平・

健二には天才的なピアノの才能があり、両親に話したいとピアノの先生が言うが、断る健二。

報酬

清掃員の仕事を始める竜平。アメリカへ向かう貴。

帰路

健二のピアノ教室が良いがばれ、激怒する竜平。階段から滑り落ち怪我をしてしまう健二。

復活

清掃中に大金を見つけた竜平、強盗とともに逃走する羽目になった恵と会ってしまい、逃げる。途中ひき逃げに遭い、朝まで気絶する。

恵と強盗はそのまま海まで逃げ、一夜を過ごす。

夜行バスで家出をしようとした健二は警察に捕まり、翌朝釈放される。

それぞれ家に帰ってきて、朝食を食べる。竜平は大金を遺失物として届けた。

宝を持って帰還

仕事を一生懸命する竜平。健二は音楽学校の試練で素晴らしい演奏をする。

映画『トウキョウソナタ』のテーマ

『どうやったらやり直せる? やり直したい…』と嘆く竜平。
『これまでの人生が夢だったらどんなにいいだろう』と呟く恵。家出する健二。アメリカに答えを求めた貴。

佐々木家の4人それぞれが現状に不満をもどこかへ旅立ちたいと願っていましたが、結局家に戻ってきます。

自分を救い出せるのは自分しかいない

これがテーマです。

黒須家での夕食シーンの最後、黒須と彼の妻は食べることをやめてしまいました。食べることは生きることを意味し、これは2人の死を暗示しています。

一方の佐々木家はクライマックスにそれぞれが自分の足で家に帰り、朝食を食べ始める。『色々あったけれども再び生きる』ということを決意した瞬間を表しています。

映画『トウキョウソナタ』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーともう一つ大切な要素、『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
吹き込む強風。窓を閉め床を拭く恵、再び窓を開けて空を見上げる。

荒れる世界に救いを見つけたような姿、まるでこの映画を暗示しているように思えます。

公園に向かう竜平。公園に集まるサラリーマン・配給・ハローワークの話、とワンカットずつ情報を与えていてわかりやすいですね。

主人公は竜平ですが、終盤は群像ものの構造になっています。ターニングポイントも分かりづらいですが、自分なりに当てはめてみました。

窓から入ってきたり失業したことを話せないなど、竜平はプライドの高さと間抜けさが混在する面白いキャラクターになっています。矛盾したキャラクターはとても魅了的です。

健二もまた担任を陥れつつ素直に謝る。素直さと分別を持ちながら他人を傷つけてしまうという矛盾を抱えています。

黒須と再会する竜平。竜平との話では常にストレッチしたり靴を拭いたりと動き回る黒須。キャラクターが動かないシーンはつまらないです。

うなされている竜平。張り詰めたシーンの演出で使われている光の点滅は家の隣を走る電車のものですが、不気味な効果を与えています。ロケーションも計算されていますね。

ピアノ教室に月謝を払う健二。これが第一ターニングポイントです。

第二幕

竜平が帰ってくるシーンや食卓のシーンでは窓越し・階段ごしなどさまざまな視点から撮られていて面白いですね。

黒須家での夕食シーン。妻の言葉一つ一つに緊張感があってすごいですね。黒須の言葉を聞いている時も疑惑を抱えているように見えてとても怖いです。

そしてそれがバレていることもたった一言の娘の言葉でわかる。これから竜平の家で起きることを予感させています。

黒須夫婦が亡くなったことを知るシーンの直後に東京の街並みが入るのが面白いですね。

これが東京、と言いたいのか東京の怖さを表したいのか、色々な解釈が考えられます。

貴が竜平に問い詰めるシーンで、すでに失業を知っている恵も同席することでより強くドラマが生まれています。恵の竜平を見る顔はすごいですね。

貴に何も言えなかった竜平はプライドを捨て、清掃員として働き始める。

健二に激怒しピアノを辞めさせる竜平。これが第二ターニングポイントです。

健二を説教する竜平の言葉は全て自分自身に当てはまっています。上手いですね。

第三幕

物語は分岐し、それぞれがそれぞれの展開を見せる三幕。

車で走る恵、走る竜平、逃げる健二。
クライマックスとあって少しだけ動きも派手になっています。特に恵のパートではセリフや海の先に見えるものなど、映画のテーマをはっきりと示しています。

一夜を明けて朝に集まる佐々木家。朝は始まりを表しています。

そして健二が圧巻の演奏をするラストシーン。少しずつ人々が集まり、風が吹く。
美しいシーンです。

さいごに

淡々と沈む人生の恐怖を描き、最後に全てを救う一曲。黒沢監督らしい人の動きや強調された演出が見事な素晴らしい映画でした。

次回も音楽映画特集として、U-NEXTNetflixで配信中の『シング・ストリート 未来へのうた』を研究します。

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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