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映画『グランド・ブタペスト・ホテル』の解説(ネタバレ有)ウェス・アンダーソンの最高傑作

akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『グランド・ブタペスト・ホテル』です。

2014年公開のサスペンス・コメディ映画。監督・脚本ウェス・アンダーソン。100分。

第64回ベルリン国際映画祭審査員グランプリ、第87回アカデミー賞4部門受賞、ゴールデングローブ賞映画部門作品賞(ミュージカル・コメディ部門)など多くの賞を取った本作。他のウェスの作品に比べてストーリーがしっかりある印象ですね。

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映画『グランド・ブタペスト・ホテル』が観られる配信サービス

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。

配信状況

サービス配信状況配信種別
U-NEXT×
Prime Videoレンタル ※2
NETFLIX×
Hulu×
Disney+定額 ※1
TSUTAYA DISCAS ※3定額 ※1

※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
※4 Prime VideoのスターチャンネルEXは、別途月額利用料が発生します。

この記事の情報は、2024年1月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXTではありますが、『グランド・ブタペスト・ホテル』はPrime Videoで観ることができます。

どちらもトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。

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他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。

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映画『グランド・ブタペスト・ホテル』のヒーローズジャーニー

それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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日常世界

廃墟寸前のグランド・ブタペスト・ホテルに泊まった作家。ホテルのオーナーでこの国一番の富豪・ゼロと出会う。

冒険への誘い/冒険の拒否

なぜホテルを買ったのか気になるものの、話しかけることはできない作家。幸運にもゼロが作家に興味を抱き、ゼロから初代コンシェルジュのグスタヴについて話を聞き始める作家。

賢者との出会い

若い頃のゼロはグスタヴの元でロビーボーイとして働き始める。

戸口の通過

ホテルの常連客でグスタヴと親しかったマダム・Dが殺される。遺産として計り知れない価値を持つ『少年と林檎』の絵を受け継ぐグスタヴ。

試練、仲間、敵

絵を盗み、ホテルに隠すグスタヴとゼロ。グスタヴに遺産が残ることに怒るマダムの息子・ドミトリーはグスタヴにマダム・D殺人の罪を着せ、グスタヴは刑務所に入れられてしまう。

最も危険な場所への接近

脱獄計画を練るグスタヴ。ゼロと付き合っていたアガサも協力する。ドミトリーの差し向けた殺し屋が敵対するマダムの弁護士など関係者を殺していく。

最大の試練

脱獄を始めるグスタヴ。

報酬

脱獄に成功するグスタヴはゼロと再会する。支配人の秘密結社に助けを求め、真実を知るマダム・Dの執事セルジュと会おうとする。

帰路

セルジュと出会い、マダム・Dが書いた殺された場合の遺書の控えがあると聞くが、隠し場所を伝える前にセルジュは殺し屋に殺されてしまう。グスタヴも命の危機が迫るが、ゼロが殺し屋を倒し助ける。

復活

ホテルに戻り、絵を巡ってドミトリーと対決するグスタヴ。絵の裏に執事が隠した遺書の控えを見つけるアガサ。遺書が開封され、正式にマダム・Dの全財産を受け継ぐグスタヴ。

宝を持っての帰還

しかしそのすぐ後にグスタヴは戦争によって処刑され、アガサも病気で亡くなる。グスタヴの遺産を受け継いだゼロはアガサのためにホテルを買ったと話す。作家はこれまでの話を本に書き、現代でも読まれている。

映画『グランド・ブタペスト・ホテル』のテーマ

グスタヴに何度も言わせるセリフがある通り、

『ひどい世界だが微かながら文明の光・人間性は残っている』これが本作のテーマです。

戦争、遺産をめぐる殺人などこの映画のモチーフは結構生々しい人間の悪のようなものを扱っていますよね。しかしそれをウェスのセンスが存分に現れた美術や衣装・音楽と融合し、暗い雰囲気にならず特別な世界観を持った映画へと昇華しています。

そしてもう一つの内面的なテーマとして、ゼロとグスタヴの友情物語も描かれています。

戦争で家族もふるさとも失った文字通りゼロの少年と、凄腕で人を魅了するが実はこちらも経歴のわからないグスタヴ。二人の親子のような絆であり、ゼロの成長も重要なテーマです。

しかし、最後は孤独となってしまったゼロ。この余韻もまた美しく、残酷なものです。

映画『グランド・ブタペスト・ホテル』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。旧ズブロフカ共和国の墓地。少女が作家の墓に鍵を供える。『グランド・ブタペスト・ホテル』という本を書いた作家だ。作家が『グランド・ブタペスト・ホテル』を書いた経緯を観客に語り始める。息子からイタズラされる作家。

オープニングの少女のファッションと墓の鍵にもうウェスの世界観にやられてしまいますね。墓地にいる3人の黒服の人々にも何か感じてしまいます。

作家が息子にイタズラされる。作家は高尚な職業と思われがちですが、ここで威厳を失わせています。作家以外にも、『グランド・ブタペスト・ホテル』に出てくる主要なキャラクターは皆何か欠点を持たせ、何か観客に同情させるような工夫があります。グスタヴとゼロは孤独、アガサは顔に傷、ですね。

1968年のホテルを訪れる作家。ここで作家はゼロと出会い、ゼロが語るというやり方で本編のゼロの若い頃のグスタヴとの物語が始まります。

本編にいくまでに何層もの時代の構造がありますね。しかもその時代ごとに画面の大きさを変えている。それらはその語られる時代の映画での主流だった大きさだそうで……いやはやウェスのすごいアイディアですね。

また、ナレーションがとても多い映画なのも本作の特徴です。細かい情報をナレーションで説明するやり方ですが、テンポの良さと新しい情報ばかり語るので退屈になることはありません。

1932年。グスタヴの登場です。ゼロのセリフで最初のコンシェルジュと説明、文字で名前、バックショット、横顔から入る。少しずつ情報を出すセンスの塊のような紹介ですね。

マダムと別れ、ゼロと出会うグスタヴ。移動しながらゼロとの面接でゼロの説明があります。細かいですが移動しながらという工夫も素晴らしいです。ホテルという舞台とウェスのセンスの相性も抜群ですね。

二人の出会いのあとは二人の日常や細かい設定の説明。グスタヴの香水は彼のキャラクターを説明しつつ伏線になっています。この時点ではアガサのことは語らないゼロ。まだゼロはアガサの死を受け止めきれていないことが伺えます。

『マダム・Dが亡くなる』これが第一ターニングポイントです。

第二幕

マダム・Dの元へ向かうグスタヴとゼロ。軍隊とグスタヴのやりとりではグスタヴのゼロへの信頼とテーマが見えてきます。二人とも鼻血を出しながら。また、ラストの伏線にもなっていますね。

ルッツ城に着く二人。ただの移動でめちゃくちゃカットが多いのですが、それがよく見えてしまうのがウェスのすごいところです。

遺書開封のシーンで、グスタヴたちと悪役である長男のドミトリーとの対決が描かれます。初対面ではっきりと対立構造を視覚的に説明されていて、とてもわかりやすいですね。ドミトリーにはやり返しすゼロですが最後は殺し屋に殴られ、最初の対決はグスタヴとゼロの負け。王道なことはしっかりとやっているんですね。

遺産として渡された『少年と林檎』を盗んで帰るグスタヴとゼロ。さらにセルジュが絵の裏に遺言の写しを隠すことでこの物語を動かすアイテムであり、かつ物語を解決する重要なアイテムとはっきりと示されます。

帰りの列車でタッグとなるグスタヴとゼロ。二人も遺産の約束で結束するのが面白いですね。その直後、逮捕されるグスタヴ。テンポがいいですね。

脱獄を計画するグスタヴと仲間たち。ケーキを分ける時自分で切っているので検閲が通ると気づくのですが、この時点ではちょっとわかりづらいかもですね。

そして泣きながらもアガサとの物語を語り始めるゼロ。やはり傷は癒えていません。

グスタヴが逮捕され、コヴァックが殺される。第二幕の前半事態はどんどん悪化していきますが、第二幕の後半、グスタヴの脱獄シーンからグスタヴたちの反撃が始まります。コヴァックが殺される美術館での死の鬼ごっこは、ヒッチコックのようにサスペンスたっぷりの映像的演出があってとても面白いですね。

脱獄するグスタヴたち。長いハシゴを持った横移動は横に短い画面の大きさを生かした演出で面白いですね。ゼロと再会するグスタヴ。しかししっかりした指示がなかったゼロは段取りが悪く、グスタヴと喧嘩してしまいますが、仲直りしてより強い絆が生まれ、第三幕に突入します。

『グスタヴが脱獄に成功する』これが第二ターニングポイントです。

第三幕

ホテルコンシェルジュの秘密結社に連絡するグスタヴ。こういう秘密結社のような組織がウェスは大好きですね。電話でのリレー、それぞれのホテルを鍵で表現するところも最高です。

アガサが殺されたかと思いきや、セルジュの姉が殺される。ここはあまりうまくいってないような気がしますね。

セルジュに会いにいくグスタヴたちだが、大事なところでセルジュが殺されてしまう。

アクションシーンを挟んで殺し屋を倒すゼロ。ここで一皮向けたゼロは、今後の行動を考えグスタヴを連れていきます。ゼロはこれまでグスタヴの口ひげを真似て口ひげを書いていましたが、ここでは書かれていません。ゼロが自立したということを視覚的にも表しているんですね。

クライマックスの舞台は再びグランド・ブタペスト・ホテル。主要なキャラクターが集まり、銃撃戦を交えて物語が一気に解決へと向かいます。

コンシェルジュとなったゼロ。立派な本物の口ひげがありますね。グスタヴとの最期のシーンはモノクロ。ここでもウェスのセンスが表れています。

グスタヴともアガサとも早くに死別し、一人残されたゼロ。ラストシーンは沈黙の作家、続いて少女。少し哀しみの残る静かなラストです。

さいごに

マイベスト3に入る大好きな映画なので大絶賛の嵐でしたが、客観的に見てもやはりとんでもない傑作だったと改めて思いました。

次回はU-NEXTで配信中、クリント・イーストウッド監督の『スペース・カウボーイ』を研究します!

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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