映画『アンソニーのハッピーモーテル』の解説(ネタバレ有) 3バカトリオのちょっとしたいい話。

こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『アンソニーのハッピーモーテル』です。

1996年公開のコメディ映画。
監督ウェス・アンダーソン、脚本ウェス・アンダーソン、オーウェン・ウィルソン。91分。
ウェスがテキサス大学在学中に出会ったオーウェンと共同執筆した脚本を映画化した13分の短編映画を、長編映画としてリメイクした本作。
MTVムービー・アワードで新人監督賞を受賞しました。
短編映画では当時映画出演経験のなかったルーク・ウィルソンとオーウェン・ウィルソンは資金不足のためキャスティングされたようですが、長編映画でもそのまま出演し、結果的に商業映画デビューとなりました。
映画『アンソニーのハッピーモーテル』のヒーローズジャーニー
それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
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※この記事の情報は、2023年2月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
日常世界
病んでいたアンソニーが退院し、旧友のディグナンが考えた強盗計画に参加する。強盗を成功させ、昔世話になった大泥棒のヘンリーに認めてもらおうとディグナンは目論んでいる。
冒険への誘い
アンソニーの母の家に侵入し、盗みの練習をするアンソニーとディグナン。
冒険の拒否
ディグナンはアンソニーがプレゼントしたピアスを盗んでしまい、アンソニーが怒る。仲直りする二人。運転手にボブも加わる。ボブは麻薬を作っており金持ちだが、兄との関係は悪い。ディグナンは銃を手に入れる。
戸口の通過
本屋に強盗し、成功するアンソニーたち。ヘンリーは偽物で、昔ディグナンが働いていた造園会社の社長だとボブに教えられ、アンソニーはディグナンを疑う。ディグナンは造園会社はカモフラージュ。本当はクビになったが、今回のことで認められたいと説明する。納得するアンソニー。逃亡生活を始める。
試練、仲間、敵/賢者との出会い
モーテルに泊まるアンソニーたち。アンソニーは掃除係のイネスと出会い、一目惚れする。積極的にアプローチし、二人はキスをする。そんな二人を見て拗ねるディグナン。
最も危険な場所への接近
ボブの兄が逮捕されてしまい、動揺するボブ。
最大の試練
ボブが車とともに消えてしまう。ディグナンはイネスを利用して車を盗もうとするが、アンソニーは頑なに断る。
報酬
モーテルを去るため、イネスについてきて欲しいと伝えるアンソニー。計画性のな行動、コロコロ意見を変えるアンソニーにイネスは怒り、二人は別れる。アンソニーは盗んだ金をチップとしてイネスに渡す。
帰路
盗んだ車は壊れ、金もイネスに渡したとディグナンは知り、アンソニーを殴ってしまう。別れる二人。その後、真面目に働き始めるアンソニーとボブ。ディグナンはヘンリーの元に戻れたようで、再びアンソニーに前回よりさらに大きな強盗計画を持ちかけるが、断るアンソニー。
復活
ディグナンをバカにする周囲を見返すためアンソニーは強盗計画に乗ると決める。イネスは別れ際、本当は愛していたとアンソニーは知り、二人は仲直りする。
強盗をするアンソニーたちだが、失敗し、ディグナンは逮捕される。その裏で、ボブの家はヘンリーに荒らされていた。
宝を持って帰還
アンソニーとイネスは結ばれ、ボブも兄と仲直りした。結果的に計画は成功だと満足げなディグナン。

映画『アンソニーのハッピーモーテル』のテーマ
『過去に囚われず、未来に進む』。
これがテーマです。
アンソニーは運命的な出会いをしたイネスとの恋物語を、ディグナンは一人の男として成長を、ボブは兄弟の関係修復を、とそれぞれにストーリーが設定されており、映画を通じてそれらを解決していきます。
過去にどんな経験や失敗があろうと、前に進んでいけば成長していけるはずです。
映画『アンソニーのハッピーモーテル』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーともう一つ大切な要素、『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。タイトル。窓を開けるアンソニー。ディグナンが合図を送る。シーツで作ったロープを窓から下ろし、脱走しようとするアンソニー。担当医師が挨拶にくる。ディグナンの計画に乗っていると告白するアンソニー。脱走し、ディグナンと合流する。
病院からの脱走は映画だとよくあることですが、医師にすんなり挨拶することで意外性を持たせ、ディグナンの計画に乗ってあげているという理由がディグナンとの関係性やアンソニーの優しさを表しています。
ディグナンの合図の仕方や、医師を仲間にしたと解釈することなど、ユーモアを持たせつつディグナンのキャラクターを描いていますね。爽やかな音楽で映画のトーンを示し、双眼鏡からの視点、アンソニーの手首に巻いた病院のバンドを見せるなど、ウェスの感性を節々に感じます。
続くバス車内のシーン、ディグナンが計画を描いたノートの見せ方もウェスらしいですね。ディグナンの『もう過去のことだ。未来に目を向けろ』、この映画のテーマを表すセリフです。
盗んではいけないものを盗んでしまい、アンソニーに怒られるディグナン。しかし家のことを言われ逆ギレする。このやりとりでディグナンが好きになりますね。
アンソニーはグレイスに対しては入院理由を極度の疲労と嘘をつき、ステイシーにはカッコつけ、本命のイネスには積極的にアプローチする。女性に対するさまざまな態度でアンソニーのキャラクターに深みが出ます。
ボブの耳の怪我、盗みに入る時の鼻につけるテープ。またもウェスが出ています。
盗みが成功し、逃亡するアンソニーたち。これが第一ターニングポイントです。
第二幕
モーテルに泊まり始めるアンソニーたち。アンソニーはイネスと出会い一目惚れ、ボブの兄が逮捕されるなど、アンソニー・ディグナン・ボブとそれぞれのストーリーへと分離し、物語が複雑化していきます。ストーリーは3本ありますが、それぞれのシーンでやっていることはシンプルで分かりやすいですね。
イネスに一緒に街を出て欲しいと頼むアンソニー。真剣な話に通訳・ロッキーが間に入るというユーモアと、別れ際ロッキーを利用してディグナンに勘違いさせるための伏線。いいアイディアですね。
ディグナンと別れ、ボブと様々な仕事をするアンソニー。短くていろいろなことをしているモンタージュはウェスの他の映画でもよくみる特徴ですね。
ヘンリーからアンソニーと別れた直後のディグナンのことを教えてもらうアンソニー。アンソニーへの説得とともにヘンリーがいい人のように見える伏線ですね。
ディグナンの計画に再び乗ると決めるアンソニー。
第三幕
ボブすらあっという間に信頼を得るヘンリー。ボブの家に遊びに行っているのも伏線です。
イネスと話すための電話リレー。これもウェスの映画でよくみる特徴ですね。
強盗に入るアンソニーたち。案の定、ポンコツと偶然が重なり作戦失敗。ディグナンが捕まってしまいます。
ディグナンに会いにきたアンソニーとボブ。アンソニーはイネスと結ばれ、ボブは兄との関係が修復、ディグナンはヘンリーに裏切られましたが独り立ちできるようになりました。
それぞれの物語が完結し、これから新たな人生がまた始まります。

さいごに
ウェス・アンダーソンのデビュー作。
その才能の片鱗が見えるとともに、しっかりした物語を描ける実力を示した映画でした。
ウェスといえば『美しいシンメトリー』というイメージを持ちがちですが、そこから映画を始めているわけではなさそうですね。
次回はU-NEXTで配信中のクリント・イーストウッド主演、ドン・シーゲル監督の『ダーティハリー』を研究します!

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