映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の解説(ネタバレ有)タイムマシンを題材にしたSF映画の金字塔

こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『バック トゥ ザ フューチャー』です。

1985年に作られたバック トゥ ザ フューチャーシリーズの第一作目。116分。
監督ロバート・ゼメキス、製作総指揮スティーブン・スピルバーグ、キャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャル。脚本ロバート・ゼメキス、ボブ・ゲイル。アカデミー脚本賞にノミネートしました。
タイムマシンを題材にしたSF映画で、当時も『フューチャー現象』と呼ばれるブームが起きるほど大ヒットしたようです。
当初は過去にタイムトラベルした後に、プルトニウムの代わりに核爆発のエネルギーを利用して現代に戻る。というストーリーだったようですが、製作費の問題で今のストーリーに変更されたようです。
しかしこの変更は結果として映画をとても素晴らしいものに変えました。
この映画の面白さでもあり『テーマ』を描いているのが、過去で展開されるストーリーです。
映画『バック トゥ ザ フューチャー』のヒーローズジャーニー
それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
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※この記事の情報は、2023年1月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
日常/冒険へのいざない
ロックが好きな青年・マーティ。
発明家ドクの家で、深夜に会う約束をする。
マーティの高校生活。
先生にもバカにされ、バンドのオーディションも落選する。
家では父・ジョージが上司のビフに怒鳴られている。兄はガソリンスタンドで働き、妹も奇抜なファッション、母・ロレーンは太っている。
冒険の拒否
マーティは自分に才能がないと言われることを恐れている(未来を恐れ、今何もしない)ドクはいつもマーティに助言している。「なせば成る」と。
賢者との出会い/戸口の通過
深夜、ドクと会うマーティ。
ドクはデロリアンをタイムマシンに改造し、実験を成功させた。今まさにドクがタイムトラベルしようとしたとき、燃料のプルトニウムを得るために騙したリビアの過激派が襲撃してくる。そしてドクはマシンガンに撃たれてしまう。デロリアンに乗って逃げるマーティ、過去にタイムトラベルしてしまう。
試練、仲間、敵
30年前の世界。
高校生のジョージ・ロレーン・ビフ、若いドクと出会う。その中で気づかぬうちにジョージとロレーンの出会いを壊してしまったマーティ。
帰りの燃料のプルトニウムを切らしてしまったが、現代に戻るために必要な電力を稲妻から得る計画を思いつくドク。
しかし、両親の出会いがなくなったために現代ではマーティ自身が産まれず消えかかっていることに気づく。
最も危険な場所への接近
ジョージとロレーンを結ばせようとジョージに手助けし、奔走するマーティ。ダンスパーティでの作戦を思いつき、「なせば成る」と助言する。
最大の試練/報酬
ビフによって作戦がつぶされかけたが、ジョージは自ら勇気を示し、ビフを倒し、ロレーンとキスをする。マーティ消失の危機はなくなった。
帰路
ドクに過激派の襲撃を伝えたいが、ドクは未来を知ってはならないと頑なに拒む。手紙を仕込むもバレて破かれてしまう。
トラブルが度重なるも稲妻の計画は成功し、マーティは現代に戻ってくる。襲撃の少し前に戻り、ドクを助けに向かうマーティ。
復活
しかし間に合わず、ドクは撃たれる。だがドクは防弾チョッキを着ていたので生きていた。ドクは破いた手紙を再びつなげ、読んでいたのだ。
宝を持って帰還
家に戻ると、家族は上流階級の生活をしており、ジョージはビフを従わせていた。憧れの車も手に入れるマーティ。「なせば成る」だ。
恋人のジェニファーをデートに行こうとしたとき、未来からドクがやってくる。そしてマーティとジェニファーを連れ、未来に向かう。

映画『バック トゥ ザ フューチャー』のテーマ
セリフにも登場しますが、この映画のテーマは
『 なせば成る 』
「今」頑張れば「未来」で夢は実現できる、ということです。
ドクがマーティに言っていたこと、そしてマーティがジョージに言ったことでもあります。
映画『バック トゥ ザ フューチャー』をさらに詳しく
今回は『三幕構成』だけでなく、メインストーリーとサブストーリーについても注目していこうと思います。
第一幕
オープニング。
多くの時計が映ります。映画『タイム・マシン 80万年後の世界へ』のオマージュのようですが、この映画が「時」を扱った映画だと刷り込まれていきます。
テレビのニュースではトヨタとリビア過激派がプルトニウムを盗んだニュース。
そしてゆっくりと発明品を見た後に、マーティの足元(スケボー)からの登場。
ニュースにあったプルトニウム。
最後はアンプを破壊して、マーティ「ロックだ」。
この後に使う大事なものがワンシーンの中にたくさん紹介されています。
最後にドクの電話があることで、この先の予定がわかり、遅刻のトラブルでマーティがすぐに学校に行くことがわかります。
シーンの終わりに次のシーンを予感させることで、次のシーン次のシーンへと流れるように見ることができます。これも重要なテクニックです。
学校での、先生とのストリックランド先生との会話のシーン。
ドクを危険人物だと話し、マクフライ家の人間は代々落ちこぼれだ、と話します。
キャラクターが実際に出る前に、周りの評価をきかせることでそのキャラをすでに描いてます。
周囲からどのように思われているか、社会的な立場もキャラ造形の一つです。
そして暗にジョージのダメさ加減も説明しています。
ここでも、「今日はバンドのオーディションだな」とこの後のシーンをあらかじめ提示しています。
そして最後に「僕が変えてみせます」。映画の結末を暗示していますね。
ストリックランド先生がただの怒るシーンでは、ただマーティがだらしない生徒、先生は厳しい人、だけで終わってしまいます。
ストリックランド先生が父・ジョージの高校生時代から教員であり、それも織り交ぜた会話なので、いろいろな工夫ができるのです。
サブキャラクターでも一工夫で面白みが全く変わってきます。
ジェニファーとの会話のシーン。
ウィルソンの市長選のフリ。マーティは才能がないといわれることを恐れている。マーティとジェニファーの関係。テーマでもある「なせば成る」の提示。トヨタの車にあこがれている。ロレーンの現在の性格。時計台の印象付け。時計台に30年前稲妻が落ちたこと。チラシの入手。
2分半のシーンの中にたくさんの情報が凝縮されています。
そしてマーティは、「未来」を恐れて「今」努力や挑戦することを放棄しています。
マーティ家のシーン。
まずシーン全体の家族の状態・ビフとの関係がラストの伏線となっています。
ビフとジョージのやりとりも過去でのジョージとビフの会話に反復で使われたりと抜け目がありません。
そして夕食シーンでジョージとロレーンの出会い方、ダンスパーティでのキスが決定的な瞬間だったことが説明されます。
ドクと深夜に出会うシーン。
実験と題してアインシュタインをタイムトラベルさせますが、このように主要キャラが行う前にあらかじめどのようなことが起きるか、を見せています。
これのおかげで直後のマーティのタイムトラベルシーンも、デロリアンで逃げてしまい何が起きるのか、何が起きてしまったかを疑問に思うことなく観ることができます。
この手法は、稲妻計画の模型を使ったシーンも同様です。
あらかじめ説明することで、アクションやハラハラ感を最大限に楽しませることができるのです。
マーティが記録としてビデオカメラを持っていますが、カメラがなければなぜドクはマーティに説明するのか疑問に思ってしまいます。しかしカメラに向かって記録として説明しているとわかれば、デロリアンやタイムトラベルの説明をたくさんしますが違和感なく見ることができます。と同時に、マーティがデロリアンを使えるようになってもおかしくありません。しかもこのカメラの映像は過去に戻った先のドクへの説明でも使われています。
ビデオカメラという小道具一つでたくさんの段取りを違和感なく解決しています。
第一ターニングポイントはデロリアンに乗り、過去にタイムスリップしてしまうことです。31分ごろ。
このように第一のターニングポイントは「周りのせいで主人公の物語が変わってしまう」ことが良いといわれます。
序盤は主人公をいじめてあげることが大事なのです。
第2幕
そして過去にやってきたマーティは、それぞれの過去のキャラたちと出会い、気づかぬうちにジョージとロレーンの出会いを壊してしまいます。これが「サブストーリーの第一ターニングポイント」です。
ほとんどの映画にはメインストーリーとサブストーリーがあります。
この映画のメインストーリーは「現代に戻ること」、サブストーリーは「両親を再び結ばせること」です。
そしてサブストーリーの中にもヒーローズジャーニーや三幕構成が存在します。
ドクの実験室でテスト録画を見るシーン。メインストーリーの解決(現代に戻るための電力を得る方法)は、チラシという小道具一つで簡単に解決してしまいます。このチラシもジェニファーの電話番号が書いてあるので、持っていても全く不自然ではありません。
さらにサブストーリーを解決させないとメインストーリーを解決できないとはっきりさせます。
すでに現代に戻る手段は分かっている(あとは成功するかどうかのみ)なので、この後の展開をサブストーリーのジョージとロレーンをどう結ばせるか、ということに集中させることができます。
このシーンの終わりが56分。映画全体の半分であり、サブストーリーの半分の時間でもあります。
写真を使い、消えていくことを視覚的に見せることも、映画的なテクニックです。『語るより、見せろ』です。
失敗すれば自分が消えてしまう命の代償、ダンスパーティでキスができなければ失敗、という制限時間。
障害の大きさをより高める要素が含まれています。
おもしろいことに、マーティはサブストーリーのなかではジョージの「賢者」として機能しています。マーティの助言でジョージは変わっていき、ジョージは勇気を出してビフを倒します。
これが「サブストーリーの第二ターニングポイント」。
その後、自信をつけたジョージは、クライマックスにロレーンとキスします。最初のジョージとは別人に変化しました。
このサブストーリーを解決することで、マーティは現代に戻ることができるようになりました。これが「メインストーリーの第二ターニングポイント」です(86分)。
第三幕
稲妻計画のシーン。
前述したとおりあらかじめ模型を使って説明しているので、アクションに集中して観ることができます。
最後の最後までハラハラさせて、無事に成功させます。
現代に戻ったマーティ。
ドクへの手紙も伝わり、ドクは助かります。
ドクはこっそり自分のテストの録画を見ていたので、やはり自分の未来が気になっていたのでしょう。
そしてラストシーン。
マーティのいた世界は一変しています。
兄や妹は立派な仕事や着こなしをして、ロレーンはスリムで、ジョージはかっこよく、ビフを使っています。そして憧れのトヨタの車も手に入れます。
マーティが過去に頑張った(ジョージを助け、変えさせた)ことで、未来が変わっています。
まさに「なせば成る」。マーティが理想としていた世界になったのです。
もし当初の企画通りに核爆発を利用するストーリーだとしたら、過去の世界の説明を多くしなければならなかったと思います。
新しい登場人物が出て、核実験場はどこで、いつ実験が起きて、それをどのように利用するか……などなど。
しかし過去の世界の同じ場所を舞台にすることで、余計な説明を最小限にし、「過去の両親に出会ったら?」というストーリーにつながったと思います。
メインストーリーとサブストーリーの理想の関係は、『メインストーリーがあることでサブストーリーが発生し、サブストーリーを解決させてからメインストーリーを解決する』という形ですが、この映画はまさにそうなっています。
マーティが過去に来てしまったので、ジョージとロレーンの出会いが無くなってしまったのですから。
さらにいえばもう一つ、ドクの生死という軸もあります。
その始まりのドクの死は、マーティがタイムトラベルする前に起き、ドクが助かるのはマーティが現代に戻ってきてからになっています。
さらにさらにいえば、マーティの内的な欲求である「理想な世界を手に入れる」という軸もあります。
これは序盤とラストで描いています。
ストーリーの解決・伏線などは、始まった・張られた順番と逆の順番に解決していくと効果的だそうです。
A→B→Cと提示したら、C→B→Aと解決・回収するということです。
この映画は………
残念な家族・世界
↓
ドクの死
↓
過去にタイムトラベル
↓
ジョージとロレーンの出会いを壊す
と始まり、
ジョージとロレーンが結びつく
↓
現代に戻ってくる
↓
ドクが助かる
↓
理想の世界になっている
と解決していく構造になっているのです。

さいごに
序盤の説明の仕方、ロック・スケボー・チラシ・ビデオカメラ・防護服・カセットテープなどの小道具の使い方、ストーリー・伏線の構成・シンプルさ、ユーモアを交えたセリフ・ジョークの数々。本当に素晴らしく、恐ろしい映画でした。
次回はクリスマスにちなんで、『ホーム・アローン』を研究します。
それではまた次回。

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-fin-