映画『デーヴ』の解説(ネタバレ有)壮大な嘘の物語も、ディテールが本物へと進化させる。
こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『デーヴ』。
1993年公開のコメディドラマ映画。
監督アイヴァン・ライトマン、脚本ゲイリー・ロス。110分。
アカデミー賞脚本賞、ゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にそれぞれノミネートされました。
監督のアイヴァンは『ゴーストバスターズ』で一躍有名となり、プロデューサーとしても活動。
脚本のゲイリーは他の作品でも脚本賞のノミネートが多いものの、『フリントストーン/モダン石器時代』でゴールデンラズベリー賞の最低脚本賞も受賞したりと面白い経歴の持ち主ですね。
映画『デーヴ』が観られる配信サービス
この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。
配信状況
サービス | 配信状況 | 配信種別 |
---|---|---|
U-NEXT | ◯ | 定額 ※1 |
Prime Video | ◯ | レンタル ※2 |
NETFLIX | × | ー |
Hulu | × | ー |
Disney+ | × | ー |
TSUTAYA DISCAS ※3 | ◯ | 定額 ※1 |
※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
※4 Prime VideoのスターチャンネルEXは、別途月額利用料が発生します。
この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT。
U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。
他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。
映画『デーヴ』のヒーローズジャーニー
それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。
ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!
日常世界
派遣会社で働くデーヴ。
大統領と瓜二つな顔であり、イベントにも呼ばれ会場を盛り上げることも。ユーモアと優しい性格で人望の厚い男だ。
冒険への誘い
大統領の替え玉として政府から依頼されるデーヴ。
大統領本人にも認めてもらい、替え玉としてただ移動するだけの影武者として仕事をする。
冒険の拒否
大統領が脳卒中になり、植物状態になってしまう。
補佐官のボブと広報のアランはデーヴを替え玉にし続けようと企てる。困惑するデーヴだが、口が達者なアランがうまく言いこめる。
賢者との出会い
政治家としての素質が十分にあるデーヴ。
大統領夫人のエレンは大統領が大嫌いで、驚くデーヴ。エレンにも気づかれなかった。
戸口の通過
大統領の仕事を始めるデーヴ。
その性格から、瞬く間に世間の大統領の人気が高まっていく。
試練、仲間、敵
エレンと共にホームレス施設を訪れるデーヴ。
これまで興味を示していなかった大統領の変化に、エレンが見直していく。
最も危険な場所への接近
勝手にボブが福祉法案を拒否してしまい、激怒したエレンがデーヴを罵る。
デーヴはボブとアランを呼ぶが、重要な政治的問題である予算に素人が口を出すなとボブは怒り、自分で予算を作ってみろと言う。
最大の試練
デーブは友人の会計士マーリーをホワイトハウスに呼び、予算案について考える2人。
マスコミや大臣らが集まる会議で予算削減を提案し、見事福祉法案の予算を作ったデーヴ。大臣たちからも称賛される。一方で怒り心頭なボブ。
報酬
ボブはデーヴを切ろうとするが、替え玉がバレればアランが自分達も道連れになると訴える。
エレンはデーヴが替え玉だと気づいており、デーブに真実を求める。ホワイトハウス地下に隠されている植物人間となった大統領と対面するエレン。
帰路
デーヴとエレンはホワイトハウスから出ていく。
しかしまだやるべきことはあると気づくデーヴ、再びホワイトハウスに戻る。ボブをクビにする。
復活
全失業者に仕事を与える政策を発表するデーヴ。
ボブは大統領のスキャンダルを発表し、デーブを大統領から失脚させようとする。
デーヴは議会に出席し、スキャンダルを認める。さらに中心人物はボブだったと証拠を提出。スピーチの最中に倒れる演技をするデーヴ、すぐさま病院に運ばれる。
本物の大統領が病院に入り、一般人に戻ったデーヴが去っていく。
宝を持っての帰還
政治家に立候補したデーヴ。エレンとSPのスティーブンソンも手伝ってくれる。
映画『デーヴ』のテーマ
『大統領のそっくりさんがもし本物の大統領と入れ替わったら?』という大きな嘘の物語である本作。
到底あり得ない話ですが、さまざまな問題を丁寧に証明し続けることでリアリティを持たせていきます。これは奇しくも物語のテーマと重なるもので、
デーヴもスピーチで言っていましたが、
『大きな道も小さな一歩から』。
これがテーマです。
全失業者に仕事を与える、政治家になる。
どんな高い目標も、まず小さいことからでも良いのでとにかく始めることが大事なのです。たとえ映画という嘘の物語でも、小さな本物を重ねれば本物のテーマを観客に伝えることができます。
映画『デーヴ』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。
ホワイトハウスやオベリスクの全景。ホワイトハウス前にヘリが到着し、出迎えや報道陣にアピールする大統領と大統領夫人のエレン。ホワイトハウスに入るなり二人は無言で別れていく。
まずは舞台となるホワイトハウスを登場させ、大統領の表の顔と裏の顔を明確に説明します。
ホワイトハウスの真実、という知らない世界の姿は観客を惹きつけるものであり、この映画の最も魅力的なモチーフである国民に対する嘘の物語ともリンクするような表と裏の対比を使った展開ですね。
主人公のデーヴがイベントに登場。
大統領にそっくりなのと、ユーモアを持ったスピーチが上手いという特徴を見せた良い登場シーンです。直後に大統領の会議のシーン。ここでも大統領とデーヴの現状の対比となっていますね。
自身が務める会社に戻ってきたデーヴ。
デーヴが心の底で求めているテーマ『仕事のない人を救う』を見せ、のちのマーリーの伏線まで張っています。
デーヴのキャラクターや人生のテーマなどを10分でスピーディーに見せた素晴らしいオープニングですね。
ここまで説明が終わり、スティーブンソンがデーヴの家を訪れることでストーリーが始まります。
大統領と会うデーヴ。
二人が一緒に映るシーンは全編を通じてここだけです。まだCGもそこまで発達していない時代、同じ人を同じ枠に入れるのはやはり大変、でもないとリアリティがなくなる……なので頑張ってこのワンシーンを作ったのかな、なんて思います。
大統領はその直後に退場してもらってます。セックス中に脳卒中で倒れる、なかなかのブラックジョークです。
『ボブとアランの策略で、大統領の代わりにさせられるデーヴ』
これが第一ターニングポイントです。
二人が説得するシーンでは、デーヴが至極真っ当な疑問を問いかけますがアランにうまく言いくるめられるので、なんとなく観客も受け入れてしまいますね。国のため、と言われるとやってしまうアメリカ人の愛国心の強さも感じてしまいます。
第二幕
政治や人間関係を覚え、身近な人へのアリバイ工作も終え、大統領の仕事を始めるデーヴ。
なりすましに関わるリアルな問題を丁寧に見せるて解決することで、嘘がバレない土壌が出来上がっていきます。その中でデーヴの政治家としての能力の高さや恋愛とは無縁な男ということも同時に説明しています。
エレンが大統領を嫌っている設定ですが、自分は最初すごく勿体無いなと思いました。
大統領になりすます最も大きな障害が大統領を愛している妻な方が面白いと思ったからです。
しかし、その後の展開を見てこの設定に納得しました。
いろいろな物語のパターンがある中で制作陣はラブストーリーも入れたかったのですね。大統領として様々な仕事がある中で、エレンと関わる仕事を物語の中心に置くことで自然とサブのラブストーリーも進行させていきます。
スティーブンソンは物語に関わることのないキャラクターですが、スティーブンソンとの対応の変化でデーヴへの評価の変化を描いています。
そして最後にはとても良いセリフが用意されていて、美味しいキャラクターですね。
50分が過ぎた頃、真の悪役であるボブとの対立が始まります。
予算問題を使ってここまで対立していたエレンとは味方となり、今度は味方だったボブと対立するように関係を変化させていますね。悪役の存在は常に必要です。
デーヴが閣議で予算を作るシーン。
上機嫌なボブがデーヴの行動で一気に不機嫌に。新聞の小道具で副大統領のサブストーリーを進めながら、ボブ視点でシーンを始めているのがうまくて面白いですね。
時には視点を変えることで、このシーンでやりたいことをより強く伝えることができるのです。
デーヴが正しいことをしているので誰も何も言い返せないのが痛快ですね。拍手が起きる中、一人だけ怒っているボブ。大勢の中で違う反応を見せる一人ということで、これから何かが起きる予感を感じさせるテクニックです。ボブとアランが対立することで、ボブだけを悪役にしています。
『エレンと共にもう一度大統領としてホワイトハウスに戻る』これが第二ターニングポイントです。
第一ターニングポイントのようにやらされるわけでなく、自ら決断して進むことが第二ターニングポイントでは重要です。
第三幕
第三幕はボブとの対決をメインに進めていきます。
政策を発表するデーヴ。他人が描いた文章ではなく、自分の言葉で人々の心を打つ。本当の意味での大統領となったデーヴの姿を見事に表しています。
汚職を発表するボブ、さらに本物の大統領が汚職を本当にやっていたというおまけ付き。どんどんデーヴを追い詰めます。
クライマックスである議会のシーン。
ここでもこの映画を表す『嘘』を使った展開は、全ての問題を一気に解決させるとても良いアイディアですね。ボブの敗北をワンカットで見せているのもとても上手いです。そしてオチのスティーブンソンのセリフは感動しますね。
ラストシーン。エレンとスティーブンソンという仲間を迎え、政治家という新たな仕事に向かってデーヴは小さな一歩から進み始めます。
さいごに
ユーモアも交え、ウェルメイドによくできた物語。
肩肘張らずに見ることができる良作な映画でした。映画とは関係ありませんが、最後は政治家に立候補したデーヴ。亡くなった大統領と瓜二つで、さらにその夫人がサポート。
何か問題が起きそうな気がしますが、果たして世間はどんなリアクションを見せたのか気になりますね。
次回からはロン・ハワード監督特集。まずは『バックマン家の人々』を研究します!
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-fin-