コメディ

映画『バックマン家の人々』の解説(ネタバレ有)「素敵な家族」「良い親』その言葉の中には100の苦労とひとつの幸せが詰まっている。

akira
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『バックマン家の人々』。

1989年公開のドラマ映画。
監督ロン・ハワード、脚本ローウェル・ガンツ、ババルー・マルデル。124分。

第62回アカデミー賞助演女優賞にダイアン・ウィーストがノミネート。
第47回ゴールデングローブ賞に主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)、助演女優賞、主題歌賞にノミネートしました。

ロン・ハワードは『バックドラフト』や『アポロ13』など、多くの傑作を作り出した巨匠です。

原題のPARENTHOODは『親であること』という意味。
邦題よりもストレートに映画のテーマを指していますね。

スポンサー

映画『バックマン家の人々』が観られる配信サービス

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。

配信状況

サービス配信状況配信種別
U-NEXT定額 ※1
Prime Videoレンタル ※2
NETFLIX×
Hulu×
Disney+×
TSUTAYA DISCAS ※3定額 ※1

※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
※4 Prime VideoのスターチャンネルEXは、別途月額利用料が発生します。

この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT

U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。

合わせて読みたい
U-NEXTがおすすめな理由を元映画館アルバイターが語る!! 迷ったらU-NEXT
U-NEXTがおすすめな理由を元映画館アルバイターが語る!! 迷ったらU-NEXT

他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。

合わせて読みたい
動画配信(VOD)で映画を観るのにオススメなサービスを選ぶ基準別に紹介
動画配信(VOD)で映画を観るのにオススメなサービスを選ぶ基準別に紹介

映画『バックマン家の人々』のヒーローズジャーニー

それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

合わせて読みたい
『ヒーローズジャーニー』とは。物語の王道法則から読み解く映画研究
『ヒーローズジャーニー』とは。物語の王道法則から読み解く映画研究

日常世界

妻のカレンと、3人の子供を持つギル。
父のフランクから愛をあまり感じなかった幼少期を過ごしたため、子供を大事にすると誓ったパパだ。

冒険への誘い/冒険の拒否

学校から長男のケビンについて話があると言われたギルは憤慨する。

ケビンは少し特殊だが、ゲリーよりはましだ。バックマン家の長女・ヘレンにも二人の子供がいるが、ゲリーはそっけなく、ジュリーはヘレンが嫌いなトッドと付き合っている。

バックマン家の次女スーザンにも娘のパティがいるが、夫ネイサンが小さい頃から英才教育をしている。

賢者との出会い

バックマン家で集まり、夕食をともにする。

バックマン家の次男・ラリーは一攫千金を夢見て親に金をむしるような男だ。いつの間にかクールという息子までできていた。

戸口の通過

ギルは学校に向かう。

ケビンを特別学級に入れるように勧められ、夫婦喧嘩が始まってしまう。ジュリーは家出をし、スーザンはネイサンと育児方針の違いを感じている。

試練、仲間、敵

ギルは昇進の話がなくなりそうで、上司と揉める。

ケビンは精神科医になぜ通うのかと不安がってしまい、ギルは丁寧に説明する。ケビンの誕生日パーティーには人気者のカウボーイを連れてくると約束するギル。

最も危険な場所への接近

トッドが裏切り、ジュリーが泣きながらヘレンの元に帰ってくる。

トッドがやってきて謝り、仲直り。夫婦になったと呆れるヘレン。

少年野球のコーチをしているギルがケビンを試合に出させるが、試合でミスをしてケビンを傷つけてしまう。

スーザンは二人目が欲しいが、理論に合わないと主張するネイサンと喧嘩をしてしまう。

最大の試練

トッドとともに暮らし始めたヘレン。
ゲリーが別れた父親と暮らしたいと話すが、父親が拒絶する。泣いてしまうゲリーにヘレンは元夫に怒りを募らせる。

友人らが大勢集まったケビンの誕生日パーティー。
手違いでカウボーイが来られなくなったが、ギルが奮闘し大成功で終わる。

報酬

ケビンはギルとカレンに感謝する。

ゲリーは自身の性について悩むが、女性のヘレンとはなかなか話せない。
代わりにトッドが話を聞き解決してくれ、ゲリーが笑ったと聞き感謝するヘレン。

帰路

ラリーの大きな借金が判明し、解決させるべきかギルに相談するフランク。
ギルは自分はいい父親ではないと話す。

ギルは昇進がなくなったので仕事をやめてしまったが、カレンが4人目ができたと知りまたも喧嘩してしまう。
ジュリーはトッドが危険なレースの仕事に戻ったことを知り喧嘩。
スーザンはネイサンに別れを切り出す。

復活

ケビンが試合で活躍し、勝利する。飛び跳ねて喜ぶギル。

フランクは借金を肩代わりし、自分の会社でラリーを働かせようとする。
が、いつまでも夢を追うラリーに何も言えないフランク。

ネイサンがスーザンに謝り、仲直りする。

トッドのレース会場に来たジュリー。
トッドが事故に遭い逃げようとするが、これが結婚だとヘレンが叱咤する。
子供ができたと知り、トッドとジュリーは絆を深める。

ゲリーはヘレンに新しい恋人を勧め、まんざらでもないヘレン。ギルは復職したものの、4人目がどんな子供か不安だ。

宝を持っての帰還

長女の発表会がめちゃくちゃになってしまうが、楽しむギル。

時が経ちヘレンにも子供が生まれ、スーザンは二人目。カレンには4人目、ジュリーにも子供が生まれた。

映画『バックマン家の人々』のテーマ

オープニングで子供時代に戻ったギルが語っていますが、彼はあまり愛されない子供時代を過ごしたため、自分が親になったら良い親になることを誓います。

そしてそれがこの映画のテーマでもあり、

家族を持つことはとても大変なことだが、幸せだ

これがテーマです。

大人になったギルが育児や会社、夫婦問題などありとあらゆる問題に直面し、そしてそれはギルだけでなく、ギルの兄弟姉妹たち、子供達が大人になったギルの親ですらもいまだに経験することです。

これは映画の中だけの物語ではなく、世の中の親はジェットコースターのように一喜一憂し、苦労しながらもみな大切な『家族』を守っている。親への感謝、そして応援歌的な映画なんですね。

映画『バックマン家の人々』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
野球場に連れてこられた少年時代のギル。父親のフランクはギルを案内人に預けてどこかへ行ってしまう。案内人に自身の人生観を話すギル。子供を大事にする、だ。これまでは彼の妄想で、現実に戻るギル。家族と家に帰る。

よくある少年時代の思い出かと思わせて、子供が大人っぽいことを話すというひねりで観客の心をつかむ。ギルのセリフで映画のテーマを決定づけ、家族の紹介。スタジアムからの帰り道、ただ子供達を車に乗せるだけなのに苦労するギル。オープニングだけでこの映画の全てが凝縮されていますね。

テイラーのゲロを浴びるなど、やっとのことで子供達を寝かせて夫婦の時間かと思いきや、子供のことが頭から離れない。次の展開をあらかじめ説明しながら、夫婦の苦労を見せています。ギルは子供をバカにされたと怒り、カレンは性生活に不満を持っている。それぞれのキャラクターの悩みまで自然と見せています。カレンは表情だけで見せているのがとても上手いですね。最後に次のシーンへとつなぐ『ゲイリーこそ問題児だ』というセリフ。素晴らしいです。

続いてゲイリーの顔のアップ。ゲイリーと言われなくても彼がゲイリーだとわかるのが映画の面白いところです。このシーンでも最初はゲイリーとヘレンのやりとり、ヘレンとジュリーのやりとり、ジュリーとトッドのやりとりと、それぞれのキャラクターを入れ替わりしながらそれぞれの関係や状況、家族が集まるなど次の展開を説明しています。ヘレンの電話で次はスーザン家族へと繋げます。スーザン一家は3人家族で非常にシンプルですね。スーザンは順調に見せるためか、ここでの問題はあえて伏せています。過剰な英才教育はいずれ問題を起こすと予感はさせますが……

家族が集まりラリーとクールも登場させ、全員の紹介が終わります。オチに使われるヘレンのアダルトグッズを使ったユーモアなど、性に関わるシーンも多用しておりよりリアルに、生きている人間っぽさを感じさせていますね。

『ギル夫婦が学校に向かう』これが第一ターニングポイントです。

ジュリーが出ていく、スーザンのサマースクールが反対されるなど、ギルに限らずそれぞれの家族のドラマがスタートします。

第二幕

ジェリーの写真を受け取るシーンでも最後に『誰が?』で終わり、ヘレンのアップ。同じ方法でシーンを繋げていますね。ヘレンが最初ジョークを言ってる所に工夫があって面白いですね。結局喧嘩になってしまうのですが。ゲリーもワンポイントで鮮やかです。

出ていくジュリーですが、一瞬立ち止まる。気づくヘレンが追いかけて戻ってきてもいいと話す。熱くなって喧嘩もするが、根底には家族を愛しているというベースがある。いいシーンですよね。

ネイサンに話がわかってもらえず、スーザンが隠していたお菓子を食べる。これまでに家でお菓子を食べてはいけないというルールを説明していたわけではありませんが、そういうルールがありそうな家であり、食べるシーンだけでわかってしまうのが面白いですね。

ギルの会社には子育ての苦労など全く通用しない。ギルの悩みがまた増えます。

車から落とされたラリーを追いかけるクール。子供はどんな親でも親が好き。さりげないシーンにテーマを感じさせます。

ジェリーが帰ってきてヘレンと仲直りするかと思いきや、トッドが乱入して結婚した事実を知る。そんな謝り方でなんで許しちゃうんだよと突っ込みたくなるバカなジェリーですが、まあ面白いですね。ヘレンの悩みもどんどん膨らんでいきます。

ケビンの将来を妄想するギル。野球の出来不出来でいろいろなパターンを想像してしまうのが心配性のギルらしいですね。

ゲイリーが父のもとで住みたいと話すシーン。ゲイリーとヘレンの立ち位置やゲイリー目線のカットなど、ゲイリーの心を表現していて面白いです。断れられてゲイリーはショックを受けますが、ヘレンがゲイリーに自然と振る舞うようになっているのが光明ですね。

ケビンの誕生日に奮闘するギル。父親は大変ですが、その愛はしっかりとケビンに伝わっています。女性陣は皆カレンに話を聞いてもらいます。カレンが愛されているキャラクターとわかりますね。ジャスティンもとても可愛いです。

一方のヘレン家ではゲリーの性に関する問題が分かり、トッドのおかげで解決。ヘレンのドラマはひどい状態だった始まりから、徐々に徐々に好転していきますね。トッドという問題児が実はいい人で必要な存在だった。シンプルでよくあるキャラクターですが、それぞれのドラマを描かなければならない群像劇という時間が限られている場合にはとても効果的なキャラクターです。

ギルの車が事故るジョークは最高ですね。

ラリーの大きな借金が発覚。スーザンが別れを切り出す。トッドが危険なレースの仕事に復帰すると決め、ジェリーと大喧嘩。会社を辞め、4人目の妊娠が発覚するギル。それぞれの家庭に大きな問題が浮上します。

『ケビンが野球でアウトをとり、勝利する』これが第二ターニングポイントです。

このシーンが具体的に何かを変えるわけではありませんが、このシーンをきっかけに映画全体の方向が変わっていきます。野球のアウトを取っただけ。たったそれだけなのに、ギルは勢いで仕事に復職し、4人目を産むと決める。人生とはそんなものでも大きく変わるかもしれないのです。

第三幕

ラリーの借金を返すフランク。それでも一攫千金思考が変わらないラリーの話を聞いて受け入れるフランク。諦めたような表情がたまらなくいいですね。映画は変わる人を描くものですが、この世には変わらない人もいるのです。クールにラリーはもう戻らないと言うフランク。子を捨てた瞬間です。

スーザンにネイサンが歌を歌って謝るシーン。育児に熱心だったネイサンに、教育の場の象徴である学校の授業を遮ってまで謝らせる。ネイサンの考えが変わったことをシーンの設定でも描いていますね。言葉ではなく歌で謝らせるアイディアも面白いです。

ヘレン家のドラマは、レースのシーンを使ってジュリーにどんな困難でも逃げずに受け止めることが結婚ということをヘレンが教え、トッドがジュリーの妊娠を知り覚悟を決める。ゲリーがヘレンに恋人を薦める(親子の絆の復活)などを描き、結末を迎えます。

ギルは復職したものの、4人目がどんな子供になるか心配する。そんなギルにジェットコースターの方が面白いというおばあちゃん。ピンとこないギルでしたが、発表会をめちゃくちゃにしたところでギルは気づきます。人生なんとかなるものだ、と。

ラストシーン。
誰の赤ちゃんか少し焦らしたところで、大穴のヘレンの子どもでした。この音楽と流れるようなシーンがとても美しいですね。しみじみと深い感動を呼びます。これからもどの家庭でもたくさんのことが起きるでしょうが、家族のために皆頑張って生きていくでしょう。

さいごに

ギル夫婦を中心としたバックマン一家の群像劇。それぞれのパートでドラマを作り上げながら、家族・親のテーマを描いた素晴らしい映画でしたね。

次回もロン・ハワード特集。
バックドラフト』を研究します!

合わせて読みたい
映画『バックドラフト』の解説(ネタバレ有)壮絶な火災現場を舞台にした兄弟ドラマの傑作エンタメ映画
映画『バックドラフト』の解説(ネタバレ有)壮絶な火災現場を舞台にした兄弟ドラマの傑作エンタメ映画

映画を家で楽しみたい人は、ぜひコチラの記事も読んでみてください。
家映画がもっと楽しくなるアイテムと工夫を紹介しています。

合わせて読みたい
映画を家で見る!!家映画を楽しくするアイテムと工夫を紹介
映画を家で見る!!家映画を楽しくするアイテムと工夫を紹介

-fin-

スポンサー
ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
記事URLをコピーしました