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映画『ジミー、野を駆ける伝説』の解説(ネタバレ有)踊る自由を得るために。無名な活動家の静かな闘い

ジミー、野を駆ける伝説
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『ジミー、野を駆ける伝説』です。

2014年公開のヒューマンドラマ。
監督ケン・ローチ。脚本ポール・ラバティ。109分。

1930年代に実在したジミー・グラルトンの半生を描いた物語。

自由を得るための闘いを描いていますが、映画の中で主人公ジミーらが武力で実際に闘うシーンはありません。

頭の中、心の中を巡る闘い。しかしそれは目に見えないものです。
その象徴としてホールをモチーフにして視覚的に表現しています。

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映画『ジミー、野を駆ける伝説』のヒーローズジャーニー

それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。

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※この記事の情報は、2023年1月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

日常世界

1932年のアイルランド。元活動家のジミーがアメリカから帰ってきた。
穏やかに母と暮らすと話すジミー。

冒険への誘い/冒険の拒否

マリーら若者たちからかつてジミー運営していたホール、芸術を学び踊る場所を復活させて欲しいと頼まれるが、断るジミー。

賢者との出会い

当時のホールを思い出すジミー。かつての仲間たちも待っている。

戸口の通過

再びホールを運営し始めるジミーたち。

試練、仲間、敵

ホールで詩や歌、ダンスをしているジミーや村人、マリーら若者たち。
シェリダン神父はホールやジミーの存在を危険視する。

最も危険な場所への接近

ミサにてダンスに参加した者の名前を読み上げるシェリダン神父。仲間たちにも脅しめいたことをしている。話し合うジミーたち。

最大の試練

ジミーはシェリダン神父に会い、ホールの委員に参加して欲しいと話す。シェリダン神父はホールの権利を渡せば受けると言い、断るジミー。

報酬

周囲の信者たちからも対立する様になったジミーたち。IRAに協力して労働者の家を取り戻すことに参加し、ジミーは自由を取り戻そうと演説する。

帰路

ホールが銃撃される。ジミーはシェリダン神父に怒りをぶつけるが、さらにホールは燃やされてしまう。

ジミーは国外追放とされ、警察に追われる。

復活

潜伏を続けていたが、捕まってしまうジミー。

宝を持って帰還

追放されるジミー。マリーら若者たちがジミーを追いかけ、踊り続けることを誓う。

映画『ジミー、野を駆ける伝説』のテーマ

物語の後半、ジミーの演説がまさにテーマを表しています。

ただ生存するためでなく
喜びのために生きよう。
踊って歌うために自由な人間として!
 』

ジミーは10年前にも自由のために戦いましたが、敗れました。
しかし再び闘いを挑むのです。

映画『ジミー、野を駆ける伝説』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーともう一つ大切な要素、『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
ジャズとともに、1920年代のニューヨークの映像。発展し、世界恐慌へと入っていく狂騒の20年代。

アイルランドに戻ってきたジミー。

ジミーの帰還・キャラクターが移動するゆったりした映像・音楽とともに、時代背景をテロップを使ってしっかりと説明しています。

続いてジミーを出迎える村人たち。ジミーが村でどういう存在であったかがわかりますね。

そして直後にウーナとのシーン。二人きりで話すことで、ジミーとウーナが特別な関係であったと対比を使って表しています。

悪役のシェリダン神父がジミーの母に会いに来る。マリーら若者たちがジミーにホールの再開を頼む。

ここまでおよそ17分。すべての主要なキャラクターとホールについての説明が終わりました。

ジミーの10年前の回想で、ジミー自身のやるべきことを思い出し、ホールを再開する。

これが第一ターニングポイントです。

回想自体も今後の展開・神父たちとの対立になっており、あらかじめ視覚的に見せることで展開に混乱することなく観ることができます。

さらにジミーの辛い過去を知ることで、よりジミーに共感しますね。

第二幕

第二幕の前半はホールの発展。踊りや詩など、とても楽しそうで微笑ましいシーンが続きます。

ダンス会が行われ、一番盛り上がったところで、シェリダン神父の説法のシーン。

無音の中で神父の説法が落差を表し、強烈な印象を与えます。

教会とダンス会のシーンが交互に続き最後は重なって、ここからの第二幕後半はホールの崩壊を描きます。

ジミーとシェリダン神父が対面し、話し合います。ここで解決出来ればよかったのですが、二人の意見は対立。そして悪化し、キリスト教信者たちからも罵られるようになります。

そんな中、ウーナとの夜のダンスシーン。

前半ではホールの活動の中、シェリダン神父が危険視するシーン。後半ではこのシーン。

前半・後半とそれぞれ語るべきテーマがありますが、それ一辺倒にならないようにテーマの違うシーンを挟んでいます。

そして再びジミーは労働者の自由を得るために行動を起こします。

これが第二ターニングポイントです。

第三幕

ホールで銃撃され、ジミーは懺悔室でシェリダン神父に怒りをぶつけます。
シェリダン神父は懺悔室では耳を傾けると話していたので、その伏線を回収しています。

そしてジミーの言葉はシェリダン神父の心に影響を与えています。
が、村人たちの暴走は止まりません。ホールは燃やされてしまいます。

ホールは彼らそのもの。それが無くなってしまいました。

ジミーは逮捕され、国外追放になってしまいます。ジミーを追いかけ、マリーら若者たちはジミーに「踊り続ける」と伝えます。

世論にも共感する声が現れている。

たとえホールが無くなったとしても、ジミーの思いは若者たちに引き継がれているのです。

さいごに

頭の中にあることをテーマにしている物語。

主人公は最後に悪役を倒すものですが、第三幕でもジミーは逃げるばかりで、戦うことはしません。

映像的に映える銃撃や火事など派手なシーンは敵が行動しているところが面白いですね。

シンプルなストーリーで、力強い普遍的なメッセージ。

そしてなによりダンスシーンがとても素晴らしい。本当の村人たちが生き生きとしているように感じます。

次回は、『ヒックとドラゴン』を研究します。

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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