映画『用心棒』の解説(ネタバレ有)欲に溺れた愚か者たちの末路。

こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『用心棒』です。

1961年公開の時代劇アクション映画。監督黒澤明、脚本黒澤明、菊島隆三。110分。
主演の三船敏郎は第22回ヴェネツィア国際映画祭の男優賞を受賞。
巨匠フレンシス・フォード・コッポラは、2012年の『史上最高の映画ベストテン』という企画に本作を投票するほどの評価をしています。
本作が大ヒットしたために続編の『椿三十郎』が作られ、海外ではセルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』としてリメイクされました。

映画『用心棒』が観られる配信サービス
この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。
配信状況
サービス | 配信状況 | 配信種別 |
---|---|---|
U-NEXT | ◯ | 定額 ※1 |
Prime Video | ◯ | レンタル ※2 |
NETFLIX | × | ー |
Hulu | × | ー |
Disney+ | × | ー |
TSUTAYA DISCAS ※3 | ◯ | 定額 ※1 |
※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT。
U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。

他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。

映画『用心棒』のヒーローズジャーニー
それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!

日常世界
風来坊の三船がある宿場町に辿り着く。
冒険への誘い/冒険の拒否
飯屋の権爺がこの宿場町では清兵衛一家と丑寅一家の縄張り争いで荒廃していると話し、すぐに出て行けと忠告する。
賢者との出会い
この宿場町を気に入る三船。ここを平和にすると意気込む。
戸口の通過
丑寅一家を3人斬って見せ、清兵衛の用心棒として雇われる三船。
試練、仲間、敵
しかし清兵衛一家は抗争が終わると三船を殺すつもりだと考え、それに気づく三船。
清兵衛一家は丑寅一家に総力戦を挑むが、三船は清兵衛一家から抜ける。さらに八州廻りがやってきたために抗争が中断される。
最も危険な場所への接近
八州廻りが去り、抗争が再び始まるかと思いきや、手打ちになると聞く三船。丑寅一家の卯之助の計画だ。
最大の試練
清兵衛一家と丑寅一家はお互いに人質を取り、人質交換を行う。
報酬
人質となった丑寅のバックにつく徳右衛門の愛人おぬいと、その夫と子どもの存在を知った三船は、丑寅の用心棒となり、機転をきかしておぬい達を逃す。
帰路
卯之助におぬいを逃がしたことがバレてしまう三船。監禁されリンチされる。
復活
逃げ出した三船、権爺に助けられる。清兵衛一家は丑寅一家に全滅させられる。
権爺が牛虎に捕まったと聞いた三船、丑寅一家に挑み、全滅させる。
宝を持っての帰還
悪人がいなくなった宿場町、三船は去っていく。
映画『用心棒』のテーマ
『過ぎた欲は身を滅ぼす』
これがテーマです。
宿場の縄張り争いという欲にまみれた清兵衛一家と丑寅一家はお互いに全滅。うの吉も死の間際に『お題目なんかいらねえ』と呟きます。彼らは平穏を求めず、最後まで自分たちの欲望のまま死んでいきました。名手の多坐衛門は気が狂い、酒蔵の徳右衛門も殺されます。
桑畑三十郎もまた危険な匂いのするこの宿場を気に入り、宿場の悪人を一掃しようと考えます。彼もまた危険な場所でしか生きられない男なのでしょう。
今回は運よく生き残りましたが、平和になった宿場に残ることなく去っていきます。そうやって危険な場所を渡り歩くことでしか生きられない男なのです。
映画『用心棒』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。
適当に道を決めて進む三船。活劇らしい音楽で映画の世界に一気に引き込ませています。後ろ姿、足元、最後に顔。と焦らして盛り上げながら主演の三船を見せます。
セリフはありませんが、適当に木の枝を投げて進むだけで三船がどういう侍なのか伝わってきますね。
宿場町の近くにすむ百姓の家でのシーン。宿場町の様子を予感させるだけで、本編に直接関係するわけではありませんが百姓の視点を見せるのは黒澤明らしいですね。一番苦労するのはどの時代でも弱者です。
宿場町にやってきた三船。手を加えた野良犬はインパクトがありますね。飯屋に入り、権爺から宿場町の事情を聞きます。言葉だけで説明するのは複雑で印象が薄くなりがちなので、店から見える街並みと同時にすることで丁寧に説明しています。とはいえ、説明が長すぎるかもしれませんが。両陣営の配置や飯屋の位置など、宿場町も地理的にわかりやすく作られています。金のない三船に気づきながらも飯を奢る権爺、それだけでいい人だとわかりますね。いの吉のキャラクターも初登場から分かりやすくてとても良いです。
桶屋の音、お題目の音。音を聞くだけで、音の向こうにキャラクターが生きていると映像を使わなくても伝わってきますね。さらに風の音、落ち葉の音などたくさんの音が使われている映画です。
清兵衛一家に用心棒として雇われる三船。これが第一ターニングポイントです。
第二幕
清兵衛一家が三船の仲間になりましたが、かといって味方ではないところが本作の面白いところ。いきなり三船を裏切って殺す話をしています。同時に清兵衛の妻と息子の紹介もできていますね。『一人斬ろうが百人斬ろうが、縛首になるのはいっぺんだけだよ!』、素晴らしいセリフです。
いざ戦いが始まると思いきや、情けない両陣営。舞台を大きく使ったコントで滑稽ですね。
八州廻りがいることで抗争が一旦止まり、映画の展開も落ち着きます。今度は三船をめぐっての清兵衛と丑寅の駆け引き。殺陣の動きだけではない心の押し引きもまた、この映画の面白いところです。
ここまでトラブルがあったものの三船の描いた通りの展開が進んできましたが、物語の中盤で卯之助が入ってくることで三船も観客も先が読めない展開になってきます。
卯之助の初登場シーン。風が強く吹き、銃を持っている。ただものではないキャラクターだと印象付けています。
丑寅が八州廻りを追い出すために役人を殺させた男達を使って一悶着起こさせようとする三船。これがさらに清兵衛の息子との人質交換、おぬいとの人質交換、と次々に繋がり話が展開されていくので、自然と観客は理解して見ることができますね。全てが予定通りだと面白くありませんが、その中で卯之助の行動や清兵衛がおぬいを奪うなど、三船や観客も予期せぬ展開なので意外性もあり面白さが持続されています。おぬい一家と清兵衛一家の対比が面白いですね。
三船もまた、反吐がでると豪語していたおぬい一家を救うためにリスクを冒してまで行動します。矛盾している行動ですが、矛盾を抱えているキャラクターはとても魅力的なのです。
おぬい一家もすぐに逃げればいいものの、土下座して感謝する。こういう細かいシーンに凡作との差が生まれます。
監禁された三船が、命からがら脱出する。これが第二ターニングポイントです。
第三幕
清兵衛一家を全滅させる丑寅一家。悪役とはいえ、あっけなくやられる清兵衛一家はかわいそうにも思えてしまいます。この終盤でも亥の吉のユーモアが生きていて素晴らしいですね。
権爺が捕まってると知り、丑寅一家に向かう三船。全滅させます。最後に逃した青年は冒頭の百姓の息子ですね。徳右衛門も殺され、全てが解決した宿場。『あばよ』の決めゼリフとともに三船は去っていきます。
さいごに
ややメッセージ性に欠けるものの、娯楽作に割り切った活劇でとても面白い作品でしたね。
次回は『プリティ・リーグ』を研究します!

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