映画『めぐり逢えたら』の解説(ネタバレ有)運命の人との出会いは、偶然か必然か
こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『めぐり逢えたら』です。
1993年公開のロマンティックコメディ映画。
監督ノーラ・エフロン、脚本ノーラ・エフロン、デヴィッド・S・ウォード。105分。
1957年公開のレオ・マッケリー監督作『めぐり逢い』からヒントを得て作られ、アカデミー賞脚本賞にもノミネート。
『ユー・ガット・メール』と同じくメグ・ライアンとトム・ハンクスが主演です。
映画『めぐり逢えたら』が観られる配信サービス
この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。
配信状況
サービス | 配信状況 | 配信種別 |
---|---|---|
U-NEXT | ◯ | 定額 ※1 |
Prime Video | ◯ | レンタル ※2 |
NETFLIX | × | ー |
Hulu | ◯ | レンタル ※2 |
Disney+ | × | ー |
TSUTAYA DISCAS ※3 | ◯ | 定額 ※1 |
※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT。
U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。
他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。
映画『めぐり逢えたら』のヒーローズジャーニー
それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。
ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!
日常世界
シカゴ。
妻のマギーを失い、悲しみに暮れるサムと息子のジョナ。サムはシアトルに引っ越すことを決める。
ボルチモアに住むアニーはウォルターと婚約を決め、家族に紹介する。
賢者との出会い
母から運命の人との出会いは「マジック」のようだと言われるアニー。しかしアニーは運命を信じていない。
冒険への誘い/冒険の拒否
悲しみに暮れるサムを心配し、ジョナはラジオ番組に相談する。
仕方なく事情を話すサム。
偶然1人で帰宅することになり、偶然ラジオ番組を聞くアニー。
サムの話に同情し、惹かれる。
DJから新たな恋を薦められるが、マギーのような女性はいないと話すサム。
戸口の通過
ジョナがラジオ局の住所を教えたため、ラジオを聞いた女性から沢山の手紙が届く。相手にしないサム。
試練、仲間、敵
サムのことが頭から離れないアニー。結婚前の不安だと自分に言い聞かせる。
周囲からも新たな恋を薦められ、徐々に考え始めるサム。
ビクトリアを食事に誘うサム。
新聞記者のアニーはラジオ番組の取材をすることのなり、サムへの手紙を書くが出すことを辞める。
最も危険な場所への接近
ビクトリアと会おうとするサム。
上司が勝手に送ったアニーの手紙がサム家に届く。手紙にはバレンタインにNYのエンパイアステートビルで会おうと書いてあり、ジョナはアニーと会うように話すがサムはやはり相手にしない。
アニーがサムの家を突き止め、探偵に身辺調査を依頼する。
最大の試練
ビクトリアを気に入らないジョナ。
ラジオ番組に再び電話し、2人の邪魔をしようと叫ぶ。
ラジオ番組のことをウォルターに隠すアニー。
報酬
ジョナは恋人のジェシカと共にアニーへの手紙を書き、送る。
アニーは出張取材を申し入れ、認めてもらう。
ウォルターも出張であり、NYで再会を約束する2人。
空港でビクトリアを見送るサム。
偶然アニーを見かけ、一目惚れする。しかし見失ってしまう。
アニーもサムに取材しようとするが、サムの妹を恋人と勘違いしてしまい、挨拶だけして帰っていく。
帰路
家に戻り、ジョナの書いた返事を読むアニー。
稚拙な文章にどうかしていたと反省するアニー。
ジェシカの協力もあり、NY行きの飛行機を予約するジョナ。
バレンタインの日にビクトリアと泊まろうとするサムに怒るジョナ。
大喧嘩してしまう。
バレンタインにウォルターと会い、婚約指輪をもらうアニー。
復活
ジョナがいなくなったことに気づくサム。
ジェシカに聞き、NYへ向かう。
NYに着いたジョナ。
エンパイアステートビルの展望台でアニーを待つジョナ。
アニーはウォルターにこれまでの経緯を話し、結婚できないと伝える。受け入れるウォルター。アニーはビルへ向かう。
ジョナを見つけるサム。仲直りし、帰っていく。
宝を持っての帰還
閉館間際。
入れ違いでアニーが到着するが、誰もいない。忘れ物のリュックを見つけるアニー。
サムとジョナがリュックを探しに戻ってくる。
再会する2人。
サムがアニーを誘い、手を繋いで歩いていく。
映画『めぐり逢えたら』のテーマ
アニーの母は夫との出会いを運命と話しますが、アニーはただの偶然と信じません。
『 愛する人との出会いはまるで
奇跡のようだ 』
本当に映画のような出会いが描かれ、観客はこんな恋がしたいと思ってしまいます。
もう一つ特徴的なのは、ジャンルは恋愛映画となっていますが、サムとアニーが出逢うのははラストだけで2人の間に恋の駆け引きや対立がありません。
その代わりにストーリー上の葛藤は、サムは亡き妻の悲しみを乗り越えて新しい恋愛へ。
アニーは自分の本心に正直に生きること、となっています。
根底には恋愛がありますが、人間ドラマに近いですね。
映画『めぐり逢えたら』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
シカゴ。墓地でマギーの死を息子のジョナに説明するサム。
ジョナに話す形で観客に説明。短い言葉ですがなぜマギーが亡くなったのか、サムの心情も伝わってきます。埋葬の場面なので亡くなった直後ということも分かります。
映画の前に最愛の妻の死があり、大きな不幸を背負ったサムに観客は同情します。
『ユー・ガット・メール』では秘密、『めぐり逢えたら』では予期せぬ不幸で観客から共感を得ています。
墓地のあと、ビル群が映される。ラストシーンのビルとの繋がりを示していますね。
スージーが気遣ったり同僚が精神科医を紹介するなど、周囲から心配されていることがわかります。これもまたサムに共感する要素です。
しかしサムのマギーへの愛が深いが故に、簡単には立ち直れそうにありません。
マギーとの一瞬の回想。
のちに幻として登場するのでここで顔を見せています。
サムの状況を説明し終えたところで、アニーが登場。
サムとは違って婚約したばかりの幸せいっぱいの状態からアニーは始まります。
アニーもウォルターも周囲から好かれていることが分かります。初対面の家族に説明する形でウォルターは多くのアレルギー持ちである男と分かります。悪い男ではないのですが、少しすべっているところが今後を予感させますね。
映画が始まって10分。
アニーと母との会話で、この映画のテーマである「運命と偶然」が提示されます。
体の相性も心配するところもさすが母です。シーンの最後はドレスが破れ、運命を信じないアニーが「不吉」と言ってしまうオチ。
忘れ物という偶然で一人で帰ることになり、たまたまラジオを聞いてしまうアニー。
サムとアニーを結ぶ存在としてジョナがいます。アニーの手紙で直感し、エンパイアステートビルに向かうのもジョナであり、最初のきっかけであるラジオ番組に電話をしたのもジョナです。
おせっかいな精神科医DJのおかげで、より深くサムの心情が分かってきます。
セリフのシンクロ、そしてアニーがサムの気持ちを完璧に理解しているところも、今後の二人の関係を予感させてくれます。
新聞記者のアニーがラジオ番組の取材をすることになる。
これが第一ターニングポイントです。
第二幕
見知らぬサムに好意的に思っているアニーに恋を指摘する上司のベッキーですが、ウォルターを愛していると否定するアニー。しかしウォルターのエピソードが出てこない。直後のカウントダウンパーティーでも、表情の固いアニー。
本作中、このように所々の細かいところでアニーとサム、アニーとウォルターの関係の今後を予感させてくれます。
ジョナがセックスについてサムに尋ね、その直後にアニーとウォルターの寝室でのやりとりのシーンになります。セリフを使わず、シーンの組み合わせでアニーとウォルターには体の関係がそこまでないことが分かります。もちろん無いことはないと思いますが、わざわざそれを描かないということはそういう印象を与えたいということです。
ジェシカの登場シーン。一言のセリフですが特徴的で覚えやすく、かつチャーミングで面白いですね。あっさりと恋人を見つけるジョナはやはりサムより上位の存在です。
ビクトリアを電話で誘うサム。前のシーンでジョナに説明していた「最初のデートで食事はしない」の伏線を回収します。
映画のちょうど半分の時間で、サムは妻を想いながら、アニーもまたサムを想いながら海沿いにいます。
新聞記者という能力を使ってサムの居場所を突き止めるアニー。
徐々にサムに近づいていきます。
ビクトリアとのデートに向かうサムに合わせ、アニーの手紙を読み「合図だ」とジョナは会うことを勧めます。
それぞれでシーンを作るのではなく、同じシーンに入れてシーンを省略しています。
ビクトリアとの食事も、シーンの最後に探偵を入れてアニーのストーリーも進めます。
笑い声ひとつでビクトリアは「無い」と分ってしまうのが面白いですね。
ジョナがアニーの手紙を読んでから「アニーとサムをくっつける」ことがジョナのストーリーとなり、ビクトリアはジョナにとって障害の立ち位置になります。
ビクトリアが登場するシーンではジョナ目線で描かれ、どうやって障害を取り除き達成するのかも観客の興味を引きます。叫んだり勝手に飛行機で飛んだりとやはり子供なので少し力不足になってしまいますが…結果的にうまく行きますね。
ジョナがビクトリアのことを電話しているシーンで、ドクターマーシャの「心の中にしまわないで」というアドバイスは、ジョナと共にラジオを聴いているアニーへの言葉という二つの意味が含まれています。
取材に向かったアニーですが、偶然にもスージーを恋人と勘違いしてしまい、観客を焦らします。
追い討ちをかけるようにジョナとジェシカのひどい手紙。新聞記者には致命的なところも、良い職業の設定ですね。
恋敵のはずのスージーを悪く言わないところもアニーの素敵なところです。
アニーが取材をやめると決め、ウォルターに会いにNYへ向かう。
これが第二ターニングポイントです。
第三幕
第三幕の舞台はニューヨーク。それぞれのキャラクターが集まってきます。
ジョナを追いかけることとエンパイアステートビルの閉館時間を設けることで少しスピーディーな展開を作っていますね。
飛行機の中でジョナがリュックを渡さない。それに触れることができるのは…と細かいところでも意識して作られています。リュックだけでなくすでに紹介されたハワードも中にあることでジョナのものだ、ととても分かりやすいですね。
ウォルターに別れを告げるアニー。最後までウォルターはとても良いキャラクターに描かれています。
ウォルターが良いキャラクターだからこそ、この気持ちは正しいのか?というドラマがアニーの中に生まれていました。
もしウォルターが嫌われるようなキャラクターならば、観客は早く別れてサムに行きなさいと思ってしまいますからね。
そしてラストの展望台。ジョナがやはり偶然を作り、二人を会わせます。
ずっと見つめ合う二人。サムとアニーは少ないやりとりですが、お互いに運命の人なのだと分かりますね。ジョナも満面の笑みです。
さいごに
サム・アニー・ジョナの三角関係で作られ、実際にサムとアニーが話すのは最後だけ
さらに最後のセリフはアニーの「ナイス・トゥー・ミート・ユー」という、とても面白い構造をした恋愛映画でした。
次回は最後のノーラ・エフロン特集・第三弾。
監督ロブ・ライナー、脚本ノーラ・エフロンの『恋人たちの予感』を研究します。
映画を家で楽しみたい人は、ぜひコチラの記事も読んでみてください。
家映画がもっと楽しくなるアイテムと工夫を紹介しています。
-fin-