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映画『アバウト・シュミット』の解説(ネタバレ有)幸せに見えた人生、しかしそれは空虚なものだった

アバウト・シュミット
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『アバウト・シュミット』です。

アバウト・シュミット

2002年公開のドラマ映画。
監督アレクサンダー・ペイン、脚本アレクサンダー・ペイン、ジム・テイラー。125分。

ルイス・ペグリーの同名小説を原作とした本作。
主演のジャック・ニコルソンはゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞しました。

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映画『アバウト・シュミット』のヒーローズジャーニー

それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。

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※この記事の情報は、2023年2月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

日常世界

長く保険会社に勤め、定年退職したシュミット。仕事一筋の人生であった。

冒険への誘い/冒険の拒否

妻・ヘレンが欲しがった巨大なキャンピングカーを買い、自由な老後の生活が始めようとするが乗り気ではないシュミット。一人娘・ジーニーの結婚式も近いが、相手のランドールを認めていない。

賢者との出会い

慈善団体を通じて貧しい子どもに寄付を始めるシュミット。子どもへの手紙で、ヘレンや後輩などの不満をぶちまける。

戸口の通過

ヘレンが急逝してしまう。

試練、仲間、敵

一人の生活が始まるが、家事のできないシュミットの家は荒れていく。
恋しく思っていたヘレンが友人のレイと過去に浮気をしていたことを知り、激怒する。

最も危険な場所への接近

結婚式までジーニーとともに過ごすことも拒否されるシュミット。人生の思い出の場所をめぐる旅を始める。

最大の試練

偶然知り合った女性に深く理解されるシュミットだったが、強引にキスをしてしまい激怒される。

報酬

ヘレンは自分に満足していたのか知りたいと思うシュミット。結婚式直前になり、ジーニーの家に向かう。

帰路

ジーニーに結婚式を止めるように話すが、激怒されるシュミット。

復活

ジーニーの結婚式でランドールやその家族を讃えるスピーチをするシュミット。
自分の人生に何の価値もなかったと悟る。

宝を持って帰還

寄付をしていた子どもが描いた絵を見て号泣するシュミット。

映画『アバウト・シュミット』のテーマ

本作のテーマは

自分の人生の価値とは?

です。

シュミットの人生はレイがスピーチで語るように、仕事につくし家庭を作りジーニーを育て、レイのような友人もできたように豊かなものに見えました。

しかし仕事は自分がいなくても滞りなく進み、ヘレンとレイは浮気をしていた、ジーニーはシュミットと反発。気に入らない結婚式でも体のいいスピーチをし、遠い地に住むこどもまでにも見栄を張るケチな男。

ジーニーの結婚式も止められなかったと後悔し、自分は誰にも影響を与えずに忘れ去られる人間だった悟るシュミットでしたが、ラストシーンで寄付していた子ども・ンドゥグが描いてくれた絵に号泣してしまう。

会ったことも見たこともない子ですが、感謝されることで彼の人生は救われました。

振り返ると定年パーティーでもジーニーの結婚式でも、シュミットに感謝するシーンがなかったのは意図的ですね。

映画『アバウト・シュミット』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーともう一つ大切な要素、『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
静まり返った曇りの街。巨大なビル。片づけられた室内。時計を見つめるシュミット。5時になり、部屋を出ていく。

全体的に色のない街にビル、室内に揃えられており、これはまさにシュミットの人生を表しています。

片づけられた部屋、老いた男が5時ちょうどに部屋の電気を消して帰る。セリフがなくてもこれだけで定年なんだな、と分かりますね。

定年パーティーがあることで会社内でそれなりの実績を残した人物とわかり、スピーチでさらにはっきりさせ、と同時にこの映画のテーマを描いています。

シュミットは豊かさに満ちた男……はたしてそうだろうか?

スピーチ直後に一人でバーに向かうシュミット。無意識のうちに何かを感じ取っているようです。

会社を訪れるシュミット。若手社員の後ろには開かれた窓。シュミットの後ろは壁。シュミットの定年の日には窓際に荷物を置き閉塞感を出していました。

先のある若者と、先の見えないやることのないシュミットの今後。視覚的にも対比を作っています。

ンドゥグへの手紙をかくシーンでシュミットの本性が現れます。

これまで寡黙でありセリフも少なかったですが、ここで大量にセリフが出てくるのは面白いですね。セリフの量で印象的でありテンポを作っています。

今後もンドゥグへ手紙を書くという形で観客にシュミットの心を説明しています。遠い地の子ども宛ということで、赤裸々に一から説明しても違和感を感じない上手いアイディアですね。

ランドールという男、ヘレンのために乾杯するなど本当にいい人なのか胡散臭いヤツなのか最初は曖昧ですが、投資の話を持ちかけることではっきりしますね。絶妙なひげです。

朝食のシーン。
ジーニーもシュミットと仲がいいのかと思いきや、棺のことなどを指摘。2週間に一回電話していると話していたシュミット、一方ジーニーはヘレンと毎日電話していました。

ジーニーはヘレンとシュミットどちらをより信頼していたか。ジーニーとシュミットの関係の危うさが伝わってきます。

空港で見送るシュミット。
ランドールは本を送る、投資の電話をすると言っていましたが、何もしていません。適当な男ですね。飛行機に進む道でも振り返らないジーニー。

シュミット一人の生活が始まる。これが第一ターニングポイントです。

第二幕

ここからシュミットの人生が露呈していきます。

2週間後、散らかりまくった家、だらしない服装で冷凍食品を買い込む。一人では何もできない男です。

続いてヘレンとレイの浮気が発覚。妻と友人も失います。

葬式での値切り、ジーニーへの電話でお釣りの確認、ジョニーを怒らせた時にも上着を忘れない。シーンの終わりにキャラクターを生かした素晴らしいオチをつけています。

生まれた家は取り壊されタイヤ店に変わり、大学では写真一枚。シュミットの人生の痕跡が無くなっていきます。

ジョンとヴィッキーの新たな友人ができそうだったのに、自ら壊してしまいます。

家族の写真を持っていないシュミット。細部にシュミットの本性が現れています。

ランドールの家族たちは過剰なキャラ付けをしている訳ではないのに絶妙な個性を持っていて面白いですね。アレクサンダー・ペインはこういうキャラ作りとキャスティングがとても上手いです。

ジーニーはシュミットが結婚を止めろと言ったことをロバータに話している。

彼女はシュミットよりもロバータと信頼していると分かります。

ジーニーを止めることができず、結婚式の練習に参加するシュミット。これが第二ターニングポイントです。

第三幕

結婚式でスピーチをするシュミット。認めるのか壊すのか。シュミットは本心を隠し、結婚を認めランドールやその家族を讃えるスピーチをします。

素晴らしいことを言っているはずなのにそう聞こえない。観客は全てが上っ面の言葉だとわかっているからです。そしてシュミットは全てを壊すほどの度胸は持ち合わせていません。

敗者と認め、人生の価値などなかったと嘆くシュミット。

しかしラストシーン。
一枚の絵にシュミットは救われて、映画が終わります。

ケチな男を救ったのは、寄付をした自分自身だったのです。

さいごに

絵をもらって号泣した後、ボランティアに励むシュミットなど後日談を描くことなくスパッと終わらせているので、よりラストが印象的ですね。

派手なアクションなどはありませんが、セリフの量で緩急をつけて巨大なキャンピングカーを乗り回す魅力的なキャラクターを作り、ジャック・ニコルソンの見事な演技。素晴らしい映画でしたね!

次回はU-NEXTで配信中、ブルース・ウィリス主演の『16ブロック』を研究します!

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-fin-

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akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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