映画『情婦』の解説(ネタバレ有)愛に生きた女の強さ
こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『情婦』です。
1958年公開のミステリー映画。117分。
監督ビリー・ワイルダー 、脚本ビリー・ワイルダー、ハリー・カーニッツ。
原作はアガサ・クリスティーの短編小説『検察側の証人』。
舞台劇としてブロードウェイやロンドンでロングランだった作品を、ビリー・ワイルダーが映画化しました。
舞台の影響からかシーン数はとても少なく、台詞が多くて早い印象です。
主人公のウィルフリッドを演じたチャールズ・ロートン、看護婦役のプリムソルを演じたエルザ・ランチェスターは実生活のパートナーというのも面白いですね。
映画『情婦』が観られる配信サービス
この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。
配信状況
サービス | 配信状況 | 配信種別 |
---|---|---|
U-NEXT | ◯ | 定額 ※1 |
Prime Video | × | ー |
NETFLIX | × | ー |
Hulu | × | ー |
Disney+ | × | ー |
TSUTAYA DISCAS ※3 | ◯ | 定額 ※1 |
※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT。
U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。
他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。
映画『情婦』のヒーローズジャーニー
それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。
ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!
日常世界
弁護士のウィルフリッドが退院し、仕事に戻る。
冒険への誘い
ウィルフリッドにエミリー・フレンチ殺人事件の弁護を依頼する被告のレナード。状況はレナードにかなり不利であるが、犯行を否定するレナード。
冒険の拒否
しかしまだ病明けのため、断るウィルフリッド。
賢者との出会い/戸口の通過
レナードの妻クリスチーネが会いに来る。レナードのアリバイを証言するが、レナードとは重婚であり妻ではないと話すクリスチーネ。
好奇心が勝り、自分が弁護すると決めるウィルフリッド。
試練、仲間、敵
レナードの裁判が始まる。レナードに不利な証言ばかり出るが、ウィルフリッドも巧みな弁護をする。
最も危険な場所への接近
検察側の証人としてクリスチーネが呼ばれる。
最大の試練
クリスチーネがレナードのアリバイを崩す証言する。
報酬
レナードを証人として呼ぶウィルフリッド。クリスチーネに裏切られて同情を誘うが、アリバイはない。
帰路
クリスチーネに男を奪われた女性から、クリスチーネの直筆の手紙を手に入れるウィルフリッド。その内容は、レナードと別れるために嘘の証言をする、というものだった。
復活
ウィルフリッドはクリスチーネに手紙を突きつけ、認めるクリスチーネ。レナードは無罪判決になる。
宝を持っての帰還
手紙を渡した女性はクリスチーネが変装した人であり、わざと嘘をつくことで陪審員を同情させたと話すクリスチーネ。真実はレナードがエミリーを殺していた。
しかしレナードは別の女性に恋をしており、クリスチーネと別れようとする。
裏切られ、利用されたクリスチーネはレナードを殺す。ウィルフリッドはクリスチーネの弁護をすると決める。
映画『情婦』のテーマ
クリスチーネは愛ゆえに重罪を犯してまで嘘の証言をし、愛ゆえに裏切ったレナードを殺しました。
そもそも結婚していたにも関わらず、レナードを愛した女性です。
『 愛には恐るべき力がある 』のです。
映画『情婦』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。
法廷に裁判官が入廷します。
法廷が舞台の映画なので、あいさつ代わりの提示ですね。
続いてウィルフリッドとプリムソルが登場します。
二人の掛け合いには退院したという説明とともに、常に皮肉のユーモアが入っていてとても面白いです。
家に到着したウィルフリッド。皮肉屋で口の悪いウィルフリッドですが、スタッフの出迎えで、周囲から愛されている、杖に葉巻を隠すように、言うことの聞かないキャラクター、病気明け、そして仕事の虫である弁護士ということがわかります。
一通りの説明が終わると同時に、メイヒューとレナードが尋ねてきて、ストーリーが始まります。
この時点で話を聴くように変化したのは、ただたばこが吸いたかっただけでしょう。
ウィルフリッドに事件を説明する形で観客にも説明されます。
かといって説明だけでなく、たばこのユーモア、レナードの回想、片眼鏡のテストなどを織り交ぜてシーンが進んでいきます。
必然的に会話が多くなりますが、とてもスピーディーに繰り広げられており、一瞬も見逃せません。
さらにブローガンやハーン警部が現れ、展開していきます。
どちらも遺産の情報、レナードの逮捕と状況を変える要素をもたらしています。
そしてブローガン以外が家を出たとき、重要なキャラクターのクリスチーネが登場します。
クリスチーネの謎めいた発言がウィルフリッドの好奇心を駆り立て、事件を担当することを決める。これが第一ターニングポイントです。
序盤隠していた葉巻を見抜いて没収したプリムソルが、最後にはウィルフリッドの葉巻に火を付ける。
シーンの中で立場を逆転させ、本気になったウィルフリッドは誰よりも強いと印象づけています。
しかもここまで30分経ったにも関わらず、回想以外では車内と家だけのシーンしかありません。
同じ場所の中ですが、キャラクターを出入りさせながら話を展開させ、事件の中で説明すべきことはすべて提示する。凄いです。
第二幕
レナードの裁判が始まります。ウィルフリッドが法廷に入るなり的確な異議を続けて行うことで、弁護士としての能力の高さを表しています。
様々な証拠や証言が出てきますが、ことごとく論破するウィルフリッド。
時間経過を説明する方法は、時計や日の傾きなどいろいろありますが、錠剤を使っているのが面白いですね。同時にウィルフリッドの余裕も感じさせます。
一度使用人のジャネットに論破されるのも面白いです。
しかしクリスチーネの決定的な証言が出てしまう。さらにレナードの海外旅行の証言まで出てしまい、窮地に立たされてしまいます。
が、謎の女性からクリスチーネの嘘を暴く手紙を入手する。これが第二ターニングポイントです。
第三幕
そして怒涛のラストへ。
最後の数分ですべてが逆転し、真実が暴かれる展開はさすがアガサ・クリスティーであり、脚色も鮮やかです。
裏切られたクリスチーネはレナードを殺します。
オープニングで「女王陛下、万歳」とあり、裁判所には「正義の女神」の像が建てられています。
しかしこの映画において最も強い「女性」はクリスチーネだったのです。
さいごに
60年以上前に公開された、モノクロの映画。なのに抜群に面白い。
結末がわかった上でもう一度観ても面白い。
そしてクリスチーネを演じたマレーネ・デートリッヒの変装・演技には、本当に驚かされました。
これぞ傑作映画ですね!
次回の深掘りは深田恭子・土屋アンナ主演の『下妻物語』を研究します!
映画を家で楽しみたい人は、ぜひコチラの記事も読んでみてください。
家映画がもっと楽しくなるアイテムと工夫を紹介しています。
-fin-