映画『インビクタス 負けざる者たち』の解説(ネタバレ有)演説・歌・詩……「言葉」が与えた大きな力
こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『インビクタス 負けざる者たち』です。
2009年公開のスポーツ映画。
監督クリント・イーストウッド、脚本アンソニー・ペッカム。
ペッカムは南アフリカ出身で、アパルトヘイトに反感を持った彼はアメリカに渡り、映画を学んだそうです。
今なお終わらない人種差別問題ですが、それを乗り越える人々を本作は描いています。
映画『インビクタス 負けざる者たち』が観られる配信サービス
この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。
配信状況
サービス | 配信状況 | 配信種別 |
---|---|---|
U-NEXT | ◯ | 定額 ※1 |
Prime Video | ◯ | 定額 ※1 |
NETFLIX | × | ー |
Hulu | ◯ | レンタル ※2 |
Disney+ | × | ー |
TSUTAYA DISCAS ※3 | ◯ | 定額 ※1 |
※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
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どちらもトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。
他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。
映画『インビクタス 負けざる者たち』のヒーローズジャーニー
それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。
ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!
日常世界
アパルトヘイトが行われていた南アフリカ。
27年間獄中生活をしていたネルソンマンデラが釈放される。
冒険への誘い
その後アパルトヘイトは撤廃。
南アフリカ初の全人種選挙が行われ、マンデラが大統領に就任する。
冒険の拒否
大統領就任翌日の新聞の一面には、マンデラを疑問視する記事。国民の不安も理解するマンデラ。
賢者との出会い
大統領官邸に入るマンデラ。白人という理由でクビを恐れていた職員らに協力を求める。
戸口の通過
来年にラグビーワールドカップが行われるが、代表チームは弱体化している。
スポーツ議会ではラグビー代表のユニフォーム・カラー・エンブレムの変更が決めるが、マンデラは撤回を求め、僅差で存続が決まる。
試練、仲間、敵
アフリカの犯罪率が上がっている報道。
主将のフランソワ率いるラグビー代表は結果を出せずに苦しむ。
最も危険な場所への接近
フランソワがマンデラにお茶に誘われる。
最大の試練
マンデラに会うフランソワ。指導者としての哲学を語るマンデラ。
報酬
ワールドカップ優勝を求められていると感じるフランソワ。
アパルトヘイトの象徴とされ、黒人から人気のないラグビー。フランソワら代表はPRも兼ねて黒人の子供たちにラグビーを教える。
帰路
ワールドカップが開幕。
下馬評を覆し決勝へ駒を進める代表チーム。代表らはマンデラの収容されていた刑務所を訪れ、フランソワはマンデラの赦しの心を考える。決勝の相手は世界最強のオールブラックスに決まる。
復活
決勝戦。
一進一退の試合。国中が試合を見守る。そして勝利するフランソワたち。
宝を持っての帰還
マンデラが会場から帰っていく。人種を超え、国中が勝利に喜んでいる。
映画『インビクタス 負けざる者たち』のテーマ
マンデラは劇中とラストシーンで「インビクタス」という詩の一節を読み上げます。
「我が運命を決めるのは我なり、我が魂を制するのは我なり」
つまり、
『 どんな困難があろうとも
それに負けない心があれば乗り越えられる。 』
マンデラはそれを信念に人種差別へと挑み、フランソワは世界最強のオールブラックスと闘います。
映画『インビクタス 負けざる者たち』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。
南アフリカの応援歌とともに、芝生で練習するフランソワらスプリングボグス。柵と道の向こうでは、貧しい黒人の子供たちがサッカーをしている。
その間の道を進む釈放されたネルソンマンデラ。
喜ぶ子供たちと、見つめるフランソワたち。白人のコーチは国の終わりだと嘆く。
黒人と白人、整備されていない土と芝生、サッカーとラグビーと対比するように配置され、同時にこの映画は人種差別とラグビーを扱った物語だと提示しています。
その中央にマンデラが進むことで、マンデラは2つを繋ぐ存在だと表しています。
マンデラが官邸職員に語るシーン。
大統領は国民をより良い未来に導く存在。
そして最も必要な力は、人の心を動かす「演説」です。
このシーンはマンデラの最も強い武器と、周囲の人々の信頼を得る主人公を表しています。
警護班リーダーのジェイソンが白人の配属に怒りますが、マンデラの意見を聞き受け入れる。
このシーンも同様に、マンデラへの信頼を描いています。
そしてそれらのシーンは、同時に観客からの信頼を得る効果ももたらしています。
黒人と白人が混在する警護班は人種差別を象徴するグループ。その関係の変化を描くことで問題の解消を説明しています。
マンデラの訴えにより、スプリングボクスのカラーなどが存続する。
これが第1ターニングポイントです。
第二幕
マンデラとフランソワのお茶会のシーン。
マンデラは直接的にラグビーの話題は出さず、指導者としての哲学、マンデラの過去を話します。
刑務所の中では「インビクタス」の「詩」と出会い、バルセロナオリンピックに招待されたマンデラは、「国歌」を聴いて国に尽くすことを決めました。
フランソワはお茶会直後からワールドカップ優勝とともに、スプリングボクスにも変化を促していきます。
マンデラは妻と娘と離れて暮らし、妻からは拒絶されているようです。
そしてそれが解決されることはありません。
彼の負の面でもあり、しかしそれを捨ててまでもマンデラは国を導こうとしています。
スプリングボクスは決勝へと進む。これが第2ターニングポイントです。
第三幕
30分の時間を使ってたっぷりと決勝を描きます。
逆にいえば、まともにプレーするシーンはここしかなく、フォーメーションや戦術などの説明はありません。
スポーツ映画において、求められるものはプレーではなくドラマ。
専門的な技術や作戦などは不要なのです。キックで何点入る、どちらがリードしている、キックが入れば勝てる。これだけで良いのです。
冒頭の新聞配達の車、マンデラが倒れる、飛行機の応援など、サスペンスのあるシーンを要所要所に織り交ぜて、飽きないようにさせています。
そしてスプリングボクスは勝利。
マンデラが変えた国がフランソワに力を与え、フランソワは優勝し国に誇りをもたらしました。
さいごに
ラストシーン、マンデラのナレーションでインビクタスの一文が読まれます。
マンデラは刑務所でインビクタスという「詩」と出会い、バルセロナオリンピックで「国歌」を聴いて国に尽くすと決め、大統領になって「演説」をして国を導きます。
スプリングボクスと国民は「国歌」を歌い、優勝しました。
「言葉」が人種の壁を超え、実力以上の力を引き出したのです。
次回はコメディ映画の『キューティ・ブロンド』を研究します!
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