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映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』の解説(ネタバレ有)情けは人のためならず。すべてを与えることで得たものとは

ヴィンセントが教えてくれたこと
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『ヴィンセントが教えてくれたこと』です。

2014年公開のコメディ映画。
監督・脚本セオドア・メルフィ。102分。

本作がメルフィの長編デビュー作。様々な映画祭でノミネート・受賞しました。特にリチャード・ローパーという映画評論家は、主演のビル・マーレイはゴールデングローブを獲ることが出来ると語ったそうです。納得の意見ですね。

また、介護施設の職員を演じたキンバリー・クインはメルフィの妻であり、ヴィンセントはキンバリーの亡き父がモデルだったようです。

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映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』が観られる配信サービス

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。

配信状況

サービス配信状況配信種別
U-NEXT定額 ※1
Prime Videoレンタル ※2
NETFLIX×
Hulu定額 ※1
Disney+×
TSUTAYA DISCAS ※3定額 ※1

※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。

この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT

U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。

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映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』のヒーローズジャーニー

それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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日常世界

皮肉屋で金もなく、孤独に生きている男ヴィンセント。友人は娼婦で妊娠しているダカだけだ。

冒険への誘い/冒険の拒否

隣に母子家庭のマギーとオリヴァーが引っ越してくるが、ヴィンセントは関わろうとはしない。

賢者との出会い

鍵をなくしたオリヴァーに電話を貸すヴィンセント。

戸口の通過

オリヴァーのシッターとしてマギーと契約するヴィンセント。

試練、仲間、敵

ヴィンセントの妻は介護施設にいるが、ヴィンセントのことは忘れてしまっている。
医者のフリをして接し、洗濯などの面倒を見るヴィンセント。

いじめられるオリヴァーを助けるヴィンセント、さらに喧嘩の仕方を教える。

オリヴァーはいじめたロバートを殴り倒す。競馬場にオリヴァーを連れていき、大穴を当てる二人。バーにも連れていく。

最も危険な場所への接近

喧嘩のことを知り、さらに遅い時間までオリヴァーを連れたヴィンセントに怒るマギー。

妻の介護施設の料金は滞納しており、他の施設に移ることを勧められるが、断るヴィンセント。

大穴で当てた金を全額競馬にかけるが、負けてしまう。
さらに金貸しに家まで荒らされる。

最大の試練

倒れるヴィンセント。

報酬

脳卒中だったヴィンセント。
オリヴァーらの協力のもと、リハビリをして元気を取り戻す。

帰路

元夫との裁判で、オリヴァーを競馬場やダカと会わせたことを知るマギー。ヴィンセントにシッター契約を終わらせると話す。

そして、妻の死を知るヴィンセント。オリヴァーにも自分のようになるなと忠告し、別れを告げる。

復活

妻と別れを受け入れ、ダカの出産の準備をするヴィンセント。
聖人の発表会にヴィンセントを選び、発表するオリヴァー。
感謝するヴィンセント。

宝を持っての帰還

ダカは無事に出産。
オリヴァーたちと食事するヴィンセント。

映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』のテーマ

原題のタイトル、そしてクライマックスでも扱われる『聖人』。
自ら犠牲をいとわず、少しでも世界を良くしようと懸命に働く人、と先生は授業で教えます。

そして冒頭、引っ越した夜にオリヴァーがマギーに読み聞かせているシーン。
読んでいる本は、シェル・シルヴァスタイン作の「おおきな木」という作品です。

この本に対して、オリヴァーは次のように感想を話します。

木の幸せは与えることだ。
自分のすべてを与えて最高の人生だよ
 』

これがこの映画のテーマです。

映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
昼間からバーで独り呑んでいるヴィンセント。居合わせた客にジョークを話すが、ウケない。

万引きしながら街を歩く。
ダカとセックスと同時に、飾られた妻との写真。

ヴィンセントの話し声から映像、と入っていきます。

ウケないジョーク、万引きやダカとの関係で、不愛想で友人がいなさそうなだらしのない人間と見えてきます。

そしてダカに料金も払えない、銀行から融資が止まる、口座もマイナス、とお金がないと印象付けるシーンが続きます。

口座のシーンのやりとりなどもヴィンセントのキャラクターがよく出ています。

最後に飼い猫を大事にしている。
足を滑らせることで情けなく、少しばかり観客に同情を誘う。

そんなシーンでヴィンセントの説明が終わります。

そしてマギー、オリヴァーが引っ越してきます。
もちろん、隣人との最悪の出会い方ですね。

この流れでオリヴァーのシーンが続き、オリヴァー・マギーのキャラクターや状況を説明していきます。

夜、オリヴァーがマギーに本を読みきかせるシーンでは、テーマ・マギーと夫の関係・次のシーンの説明と短いなかに実は多くの情報が詰め込まれています。

ヴィンセントは第一印象は悪い人ですが、本当はとても人のために尽くす人。外見だけではわからない。

オリヴァーの学校のシーンでも、一見同じような子どもばかりに見えても、様々な考え方の人間がいる、ということを宗教を使って表しています。

競馬場のシーンでは、レース中に「勝て 一度でいい」と叫ぶセリフもヴィンセントを表しています。

金貸しが口を付けた飲み物を捨てる。という行動もさりげないですが良いですね。

ヴィンセントがオリヴァーのシッターになる。これが第一ターニングポイントです。

一度だけの面倒ではなく、これからも二人の関係が続く、ということで物語の方向が変わります。

第二幕

第二幕の前半はヴィンセントとオリヴァーの関係が深まっていきます。老人と子ども、子供らしからぬ場所へ連れて行ってしまう、などのお楽しみの時間です。

先生の授業を通して、観客にも「聖人」の定義をしっかりと説明します。

オリヴァーが殴られた後の車のシーン。
一見するとヴィンセントがオリヴァーに男としての強さや人生訓などを教え、オリヴァーは心を教える。そんな展開になると思わされますが、実はヴィンセントは心の面でも素晴らしいものを持っています。

この直後に、妻の介護施設を訪れるシーンになります。

これまでもシートベルトを付けさせたり喧嘩から助けたりとさりげなく良いことをしていましたが、ここで決定的にヴィンセントの見方が変わり、続いてオリヴァーに喧嘩の仕方を教える。オリヴァーを迎えに来たマギーが泣いていたことにも気づき、笑わせる。ダカにも検査をさせ、お金を払う。と、ヴィンセントの良い面が描かれていきます。

競馬で大勝ち、バーでオリヴァーと踊るヴィンセント。二人の関係は強固なものになりました。

そして第二幕の後半は、二人の関係の破綻へと向かっていきます。

マギーにオリヴァーの喧嘩が発覚。マギーはおおよその人が持つヴィンセントに対する印象を代弁する役目を持っています。

学校での面接シーンは、マギー役メリッサ・マッカーシーの見せ場ですね。

介護施設の支払いのために競馬に全財産をかけ、失う。家には金貸しが押しかけ、ヴィンセントは倒れてしまいます。

マギーを医療関係の仕事にしたことで、病気の説明などもスムーズに進みますね。

みなの協力の元、リハビリを成し遂げ退院するヴィンセント。

ダカはリハビリをまともにうけないヴィンセントを叱ったり、家を掃除・料理をしたりと、娼婦というイメージの悪い仕事でありながら、とてもしっかりした人。これも外見だけではその人はわからない、ということを表しています。

裁判でヴィンセントのしてきたことがマギーにばれ、シッター契約が終わる。

さらに妻の死を知り、オリヴァーとも別れを告げる。

ヴィンセントが倒れる→元気になる→オリヴァーとの別れ、とうねりを作る構成になっています。

オリヴァーが聖人の発表会に向けてヴィンセントの取材を始める。

これが第二ターニングポイントです。

第三幕

ヴィンセントはダカと子どもの生活に向けて準備をはじめ、オリヴァーは聖人としてヴィンセントのことを観客に発表します。

クライマックスで実際に行動しているのはオリヴァーですが、深い感動を与えてくれます。

発表に、観客にも知らされていなかった戦争のエピソードも含まれていることも良いですね。

ラストシーン。
オープニングは孤独に酒を呑む男だったヴィンセント。

今の彼は、たくさんの大切な人とともに食卓を囲みます。

さいごに

外見や第一印象では人の本当の魅力はわからない。そんなことも教えてくれる映画でした。
最後のビル・マーレイのカラオケも素晴らしいですね!

次回はミュージカル映画の『ヘアスプレー』を研究します!

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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