映画『サブウェイ123 激突』の解説(ネタバレ有)挫折した二人の復活劇は、善の道か悪の道か。
こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
今回の深掘り映画は『サブウェイ123 激突』。
2009年公開のアクションスリラー映画。
監督トニー・スコット、脚本ブライアン・ヘルゲランド、デヴィッド・コープ。105分。
ジョン・コーディの小説『サブウェイ・パニック』を原作とし、1974年版、1998年版に続いて三回目の映画化となりました。
監督を務めたトニー・スコットは『トップガン』『デジャブ』、脚本のブライアンは『ミスティック・リバー』『LAコンフィデンシャル』、デヴィッドは『ジュラシック・パーク』『ミッション・インポッシブル』と錚々たるスタッフ陣の顔ぶれですね。
映画『サブウェイ123 激突』が観られる配信サービス
この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。
配信状況
サービス | 配信状況 | 配信種別 |
---|---|---|
U-NEXT | ◯ | 定額 ※1 |
Prime Video | ◯ | レンタル ※2 |
NETFLIX | ◯ | 定額 ※1 |
Hulu | ◯ | レンタル ※2 |
Disney+ | × | ー |
TSUTAYA DISCAS ※3 | ◯ | 定額 ※1 |
※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。
※4 Prime VideoのスターチャンネルEXは、別途月額利用料が発生します。
この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT。
U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。
他にもオススメの動画配信(VOD)サービスを選ぶ基準別に紹介しているので、使うサービスに悩んでいる人や、気になる人はこちらの記事をご覧ください。
映画『サブウェイ123 激突』のヒーローズジャーニー
それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。
ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!
日常世界
NY地下鉄運行室で交信役として働いているガーバー。
様々なトラブルが起きる地下鉄だが、冷静に的確に解決し、こなしていく。
冒険への誘い/賢者との出会い
ライダーらが地下鉄を乗っ取り、乗客を人質にとる。
たまたまその車両の担当だったガーバーが交信役となり、ライダーは1時間以内に身代金1000万ドルを用意しろと要求する。
冒険の拒否
警察が代わりに交信役となり、退勤を命じられるガーバー。
戸口の通過
ライダーはガーバーを出せと警察を脅し、拒まれると運転手を射殺する。
ガーバーが再び交信役となる。
試練、仲間、敵
ガーバーに固執するライダーに、警察はガーバーも共犯ではないかと疑う。
ガーバーは元々管理職だったが、賄賂疑惑がかけられており、今は左遷させられていた。
最も危険な場所への接近
元地下鉄運転手だった仲間から教えてもらい、ライダーもガーバーの賄賂疑惑を知る。
最大の試練
ガーバーに少年の命を脅しに使い賄賂の真相を尋ねるライダー。ガーバーは事実だと告白する。会社に裏切られた、ガーバーも自分と同じだと怒るライダー。
報酬
ライダーの身元が割れる。かつてNY市長に恨みを持った証券マンだった。
事件によって株価は下がり、代わりに暴騰する金の取引を利用した計画だと見抜く。
帰路
時間通りに身代金を用意できず、人質が殺される。
さらに警察のミスで運転手役だったライダーの仲間を射殺してしまう。ガーバーを身代金の運搬役に指名するライダー。身代金を持ってきたガーバーに地下鉄を運転させ、脱出を図るライダー。
復活
隙を見てライダーたちから逃げ出すガーバー。ライダーの仲間は射殺される。単身ライダーを追いかけるガーバー、銃を向けついに追い詰める。
ライダーは自ら撃つように訴るが、拒むガーバー。ライダーは銃を抜き、ガーバーに撃たせる。ガーバーを讃え、死ぬライダー。
宝を持っての帰還
NY市長がガーバーに感謝し、賄賂疑惑をなんとかすると話す。妻が待つ家に帰ってきたガーバー。
映画『サブウェイ123 激突』のテーマ
外的なストーリーは地下鉄ハイジャック事件の攻防を軸にしていますが、内的なドラマではガーバーとライダーに共通したものを持たせています。
『人生のやり直しはできるのか』
これがテーマです。
ガーバーもライダーも会社や世界に尽くして仕事をしていましたが、一度の失敗で会社に裏切られてしまいます。
その後ライダーは犯罪の道に進みますが、ガーバーは自らの罪を認め、命をかけて善に尽くすことで人生をやり直そうと決意する。
ガーバーの場合、どんな時でも信じてくれた妻がいたからこそ悪に堕ちずに全力を尽くせたのかもしれませんね。そしてその結果、NY市長の協力を得ることができ、人生がもう一度始まろうとするラストとなりました。
映画『サブウェイ123 激突』をさらに詳しく
ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。NYの街並み。
ライダーたちがそれぞれ地下鉄の駅に入っていく。
NY地下鉄運行指令室。指令役として仕事をしているガーバー。ライダーたちや乗客が同じ地下鉄に乗っていく。複雑な地下鉄の線路を理解し、急なトラブルも解決するガーバー。
ライダーたちが誰にも気づかれずに地下鉄を乗っ取る。
凶悪な事件をモチーフにした映画というものは、総じて悪役の計画が映画の前から始まっており、この映画でも同様です。ライダーたちが観客を先行して物語を進めていきます。ガーバーの仕事をしているシーンから始めることで職業を説明、仕事ぶりや同僚との会話でガーバーの性格や能力を説明しています。この時点で『今は指令役に甘んじている』とたった一言で説明している点が、早くて切れ味が良くて素晴らしいですね。
ライダーの計画が進んでいき、ガーバーとの交信が始まる。つまり主人公と悪役が交わることでついに映画の物語も走り始めます。
交信という会話だけでキャラクターの動きがなくなる行為ですが、カットの切り返しとカメラの動きで緊張感を持たせています。カメラの動きを固定しているライダーと、終始動きっぱなしのガーバー。両者の心の動きを表しているようですね。単にロケ地の関係でできなかっただけかもしれませんが。ハイジャック犯に物おじしないガーバーの姿で、この二人のやりとりがこれからも面白くなっていくと予感させます。どちらが会話の主導権を握るのかが、会話だけのシーンにドラマを持たせます。
仲間が刑事を殺し、ライダーもたわいない理由であっけなく運転手を殺す。非道さと覚悟を持ったライダー。悪役が強大で魅力的なほど物語も面白くなるものです。殺す相手にもさりげなく話しかける点がライダーの怖さをより引き立てていますね。
『一度は追い払われたガーバーが、再び交渉役となる』、これが第一ターニングポイントです。
第二幕
ライダーは身代金にも制限時間を設けますが、そのほかでも至る所で制限時間・カウントダウンを始めます。
正確で計画的なライダーの性格・証券マンらしさを表すことでもありますが、制限時間は物語の緊張感を高める効果もあるので一石二鳥なアイディアですね。
金が届くまでの間は膠着した状態になりがちですが、その時間をガーバーの内面を描く賄賂の告白に当てて緊張感のあるシーンを作り、ドラマにしています。とても上手いですね。ガーバーだけでなくライダーの内面も見えている点も素晴らしいです。
人質となった乗客には名前もついていないキャラクターもいますが、ちょっとした特徴をつけることで生きてきますね。ジオのドラマもちゃんと作っています。
NY市長もスキャンダル問題やそのリアクション、的確なツッコミで魅力的なキャラクターになっています。
運転手役だったレイモスが死ぬことで、ライダーにもガーバーにも予期せぬ展開へと変化していきます。
『ガーバーが身代金の運搬役になる』これが第二ターニングポイントです。
第三幕
逃げ出すライダーを捕まえることができるか。第三幕はシンプルな目的を持ったアクションパートとなります。この映画のモチーフとなった地下鉄越しにライダーを見つけるシーンは美しさすらあります。
追い詰められたライダーはガーバーに自らを撃つように命じ、撃ったガーバーをヒーローと讃えて死にます。自分と同じ境遇のガーバーを救うためだったのかもしれません。
NY市長がガーバーを讃え、賄賂疑惑をなんとかすると話す。命をかけたガーバーは自らの力で世界を変え、新しいスタートを切ります。生は神への借金。生き続けると同時に神へ借金を返し続ける道を選んだのです。
さいごに
アクションやサスペンスを盛り込みながら、人間ドラマのテーマもしっかりと描いた素晴らしい脚本でしたね。
次回はリドリー・スコット製作、トニー・スコット製作総指揮、リーアム・ニーソン主演の『ザ・グレイ』を研究します!
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