サスペンス

映画『刑事ジョン・ブック/目撃者』の解説(ネタバレ有)非暴力な生き方をする「アーミッシュ」に、暴力の象徴・殺人事件を掛け合わせた傑作映画

刑事ジョン・ブック/目撃者
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『刑事ジョン・ブック/目撃者』です。

刑事ジョン・ブック

1985年公開のサスペンス映画。112分。
監督ピーター・ウィアー、脚本ウィリアム・ケリー、アール・W・ウォレス。アカデミー賞では5部門ノミネートされ、脚本賞・編集賞を受賞しました。

非暴力で前近代的な生活を営むアーミッシュをモチーフにした映画で最も有名なハリウッド映画と言われています。

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映画『刑事ジョン・ブック/目撃者』が観られる配信サービス

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。

配信状況

サービス配信状況配信種別
U-NEXT定額 ※1
Prime Video定額 ※1
NETFLIX×
Huluレンタル ※2
Disney+×
TSUTAYA DISCAS ※3定額 ※1

※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。

この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT

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映画『刑事ジョン・ブック/目撃者』のヒーローズジャーニー

それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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日常世界

未亡人となったアーミッシュのレイチェル。息子のサミュエルと共に都会に住む姉に会いに行く。

冒険への誘い

その途中、サミュエルが警官殺人事件に遭遇し、2人組の犯人のうちの1人の顔を見る。事件の担当になった刑事ジョン・ブック。

冒険の拒否

レイチェルは捜査から離れようとするが、サミュエルは重要な目撃者のためブックは捜査に協力してもらう。暴力的で差別的、強引な性格のブック。

賢者との出会い

サミュエルが見た犯人は優秀な刑事のマクフィーであった。上司のシェイファーに報告するブック。

戸口の通過

マクフィーに命を狙われるブック。応戦したものの、深い傷を負ってしまう。

試練、仲間、敵

シェイファーが黒幕だと気づき、同僚のカーターに捜査資料の破棄を頼むブック。
レイチェルとサミュエルをアーミッシュの村に送り、そのまま逃げようとしたが、気絶してしまう。

最も危険な場所への接近

アーミッシュの医療では手に負えないブックの傷。しかしブックを狙った犯人はサミュエルも狙っていると言われ、治療を試みる。

最大の試練

レイチェルの懸命な看護もあり、治るブック。

報酬

アーミッシュの仕事の手伝いをさせられるブック。次第にアーミッシュの村人たちにも受け入れられていき、レイチェルともお互いに惹かれあう。

帰路

しかしカーターがシェイファーに殺されたと知り、怒るブック。
感情を抑えられず騒動を起こしてしまい、シェイファーに居場所がバレてしまう。
翌朝村を出る決心をしたブック。レイチェルはブックにキスをする。

復活

翌朝、襲撃してきたシェイファーとマクフィーたち。
ブックは応戦。アーミッシュの村人の協力もあり、シェイファーは観念する。

宝を持っての帰還

レイチェルと別れるブック。村を去っていく。

映画『刑事ジョン・ブック/目撃者』のテーマ

事件の解決が外的なストーリーですが、内的なストーリーはブックとレイチェルの恋物語です。

差別的で傲慢な性格で、暴力の象徴である銃を扱う刑事のブックが、非暴力のアーミッシュ・レイチェルとどうなるのか。アーミッシュはその生活ぶりから世間から好奇な目で見られており、その描写や台詞はいくつもあります。

信念と愛、どちらが大事なのか? 』

刑事は暴力行為からは切っても切れないものですが、人を救う職業であり、アーミッシュも自分だけの問題ではなく、家族の村での立場もあります。

一概に言えず、自分だけが好きに生きればいい、という単純な問題でもない。
自分の生き方を問われるテーマです。

映画『刑事ジョン・ブック/目撃者』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
ある家に集まるアーミッシュの人々。レイチェルの夫の葬式が行われている。
黒服・馬車・草原などを盛り込み、この映画で最も特徴的なモチーフであるアーミッシュを提示しています。多くの人が集まるのもアーミッシュの絆を表していますね。

レイチェルの夫が亡くなった、というのも、後のブックとレイチェルのラブストーリーの前提としてオープニングに描かれています。
アーミッシュの男は下ネタジョークが好き、というのも伏線ですね。

馬車の後ろのトラックや車の列。という対比は現代のアーミッシュを表すとても分かりやすいシーンです。

レイチェルを気遣いサミュエルにプレゼントをすることで、ダニエルを好意的なキャラクターに、そしてレイチェルを意識している、ということを描いています。

駅でのシーン。
サミュエルが銅像を見上げますが、これがなんの銅像なのかわからないのがもどかしいです。銅像と同じ構図がブックを助けるイーライと同じなので、絶対に意味があるシーンだと思います。またサミュエルが好奇心旺盛なところも、殺人シーンを見てしまったり警察署を見回るなど様々なシーンで使われています。

そしてトイレの殺人シーン。
殺される刑事が顔を洗っていますが、映画の中でキャラクターが「水で濡れる」ことがとても多いのも特徴的です。

一つ一つ個室を見ていくマクフィー。
定番ですがやはり緊張感が高まります。
そしてトイレの個室でパニックにならずに冷静に対処するサミュエル。彼の賢さが表れていますね。この賢さが描かれているので、マクフィーを覚えていてもなんら疑問に思いません。

その後ブックが黒人を強引に捕まえサミュエルに見せつけます。ブックの持つ暴力的で差別的な面を動きで表現しています。
姉・エレーンの家にいきなり泊めさせるのもブックの性格が出ていますね。またエレーンの反応で一般人のアーミッシュの印象も見せています。使われたキャラクターは無駄にしません。

昼食のシーンでは、レイチェルにブックの性格を言わせていて面白いですね。第一印象は悪いところから恋が始まる。定番です。

表彰されたマクフィーの記事を指さすことで、犯人を見つけると同時に彼の実力と評価も同時に説明しています。

その直後にシェイファーに相談するブック。的確なアドバイスをして頼れる味方であると示したと思いきや、マクフィーに襲撃されるブック。
マクフィーに指示するシェイファーのシーンをカットすることで、より裏切られた絶望が強く感じさせます。なぜマクフィーが襲ってきたのかも、観客が簡単にわかるからこそ省略できるのです。それも前のシーンでシェイファーしか知らないと念を押しているからですね。
そして深い傷まで負わせることで予期せぬ展開(アーミッシュの村にとどまる)へと自然に持っていきます。
今のシーンが次のシーン、次のシーンへとどんどん繋がっていきます。

犯人であるシェイファーたちに狙われる。
これが第一ターニングポイントです。

第二幕

シェイファーの代わりにカーターが頼れる唯一の仲間として活躍します。
警察の権力を悪に利用するシェイファー。これもエレーンがいたからこそ描けた内容です。

ブックを助ける義理のないアーミッシュですが、サミュエルも狙われていると知ると守らなければならない。納得出来る理屈になっています。

レイチェルたちを探すシェイファーがアーミッシュならではの特徴で苦戦する、というのも面白いです。

サミュエルが銃を見つけるシーン。刑事といえば、そして暴力を表す小道具・銃をしっかりと使い、レイチェルに非暴力について教えます。
ここでもサミュエルの好奇心が使われていますね。

弾を抜いたら触らせるブックと目の色を変え、つまむように触るレイチェル、そして教えるイーライ、事件を目撃し初めて暴力に触れるサミュエル。
それぞれのキャラクターが表現されています。

ブックのアーミッシュへの変化はまず衣装。夫の服を着ることから徐々にアーミッシュらしくなっていきます。

銃の隠し場所もキッチンの棚の中、とラストのために印象付けています。
サミュエルと遊ぶ中でとうもろこしの倉庫、後のシーンで朝食を知らせる鐘、と生活をしながらラストの伏線を張っています。

衣装の次は行動。
ブックはアーミッシュの仕事を手伝うようになります。下ネタジョークでイーライの笑いをとっていますね。

ダニエルとレイチェルがレモネードを飲んでいるシーン。無言の2人。少し離れた場所を歩くブック。ちらりと見るレイチェル。
セリフはなくともそれぞれの心のうちが伝わってきます。

続けてレイチェルがブックにレモネードを持っていきます。汗だくで一気飲みし、口を拭うブック。ここでも濡れている演出があります。

さらに続けて、車が直ると同時に音楽が流れだし、踊る2人。関係が明らかに近づいていますね。
しかしイーライの登場で分断。2人が近づくことが周囲から許されない行為だと印象付けています。
車の修理、納屋作り、関係の接近、代償。1シーンの中で一連のことが説明されています。

ブックがアーミッシュとしての最後のシーンは、大勢が集まって共同作業する納屋作りで締めます。人間の力だけで組み上がっていく様子は見ているだけで面白いですね。ブックもアーミッシュの一員として十分に仕事をしました。

その夜。身体を洗っているレイチェルを見つめるブック。やはりここでも水で濡れています。
妖艶で色気を醸し出す演出ですね。

カーターの死を知り、怒りの中感情を抑えられず観光客を殴ってしまうブック。
ブックの最初から持っていた欠点の暴力性が状況を悪化させてしまいました。
これまでのアーミッシュへの変化が振り出しに戻ってしまいます。

シェイファーがブックの居場所を知る。
これが第二ターニングポイントです。

第三幕

小鳥小屋を直すことでブックとの別れを感じとるレイチェル。
ボンネットを置き、ブックのもとへ駆け寄るレイチェル。アーミッシュとの決別を衣装を使って表しています。

クライマックス。
シェイファーたちとの闘い。

キッチンにシェイファーたちがいることで銃は使えなくさせています。
ブックとサミュエル、大事なものを同じ場所に居させることでスムーズに状況を作っていますね。

とうもろこし倉庫、サミュエルの勇気、鐘などの伏線を回収しながらシェイファーたちを倒します。

異変を察知し集まってきた大勢のアーミッシュたちの前で、観念するシェイファー。非暴力の絆が暴力に勝ったのです。

ラストシーン。
ブックと別れるレイチェル。
背を向け、しかしもう一度顔を向ける。
感情はブックと行きたいが、家族の立場を守るために残る。
無言のシーンですが身体の動きでレイチェルの気持ちが伝わってきます。
「イギリス人に気をつけろよ」の反復台詞もお見事ですね。

去っていくブック、入れ違いにこちらへ歩いてくるダニエル。
レイチェルはおそらくダニエルと結ばれるだろうと暗示して、終わります。

さいごに

サスペンスと思えない神秘的な音楽、大人の許されない恋愛、しかし冒頭と終盤のアクションシーンの緊迫感はたまらない。

シンプルなシーンを重ねつつ、独特な雰囲気を持つオンリーワンな映画でした。

次回はジム・ジャームッシュ監督作の『パターソン』を研究します。

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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